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幼馴染の恋愛便り  作者: 世嘆者
3/12

私の学校生活?

家に備蓄しているドリップコーヒーの賞味期限が一年前だった。

…………粉末だし、まだ飲めるよね? 


飲める、よな。

小学校の頃は楽しかった。

なんだかんだ時間は掛かったけど、彼女と仲良くなって、いろんなところに遊びに出かけた。

海へ行って蟹や貝を捕った。

山に行ってカブトムシやクワガタをカゴいっぱいにした。

ラジオ体操に二人で言って、恋ちゃんがトイレを我慢しすぎて漏らしてしまったこともあったっけ。

いやぁたのしかったなぁ。(ゲス顔)

まあ、冗談はともかく、僕は初めての友人を手に入れた。

手をつないで小学校の門をくぐった春。

春風に散っていく桜の花びらをみるたびに恋ちゃんとの出会いがなんどでも鮮明に思い出された。

二人で過ごす初めての夏。

縁側からみた入道雲は、二人でめいっぱい背伸びしても届かないくらい大きかった。

山に行って満天の星空を見上げた秋。

また何度でもこの景色を見ようと約束した。

手を繋ぎあって暖め合った冬。

一人じゃないといことの暖かさを知った雪だるま作り。寒くて寒くてたまらなかったはずなのに、思い出すと胸がいつも暖かかった。

僕達はそんなこんな、10年以上も一緒に過ごした。


何度も何度も繰り返される四季。

毎日同じようで、少しずつ変わっていく日常を二人で謳歌した。


大きな夢とか、将来に対する不安とか、このときは全然なくて、ただ僕達は二人、ずっと一緒にいられるような気がしていた。

こうしてこんな風に、二人で仲良くこの先十年も、二十年も過ごしていくんだろうなと思った。


根拠なんてどこにもなかった。自信なんてどこからわき上がってくるか分からなかった。


だけど。

僕達はきっとずっと一緒にいられる。

この先何があっても。

なくても。


それだけは迷いなく信じられた。

__________________________________________________


side恋


久しぶりのたった一人での登校。

前にもこんなことはあった、こんな風に一人で登校したことは。

だけど、いつになってもこの奇妙な感覚にはなれそうになかった。いつもつけているキーホルダーをなくしてしまった時のような、毎夜を供にする抱き枕を洗濯してしまい、それなしで寝るときのような感覚。


何かあるべきはずの物が、そこにない。

いつもある物が存在しない。


そのふわっとしたなんともいえない喪失感。


そんな物を感じて目を伏せながら、私は教室に向かった。

クラスについて、その教室のドアを開けると、はっとしたように皆が私の方に振り向いた。

だけど、数秒後にはすぐに仲間内での談笑に戻ってしまっていた。

きっと、数秒前にみた私のことなんてもう頭の中からすっぽり抜け落ちてしまっていると思う。


「はぁ・・・・・・」


誰にも気づかれないように小さくため息をつきながら自分の席に着くと、私の目の前の席が空いていることに気づく。


そこは彼の席のはずだ。


彼は休みなのかな?

朝も一緒にこれなかったし。

それともただ単に何か用事があって今はいないだけ?


どっちでもいい。どっちでも良いことだけど・・・・・・早く来ないかなぁ。

須島君。


私が何を考えていようとも、あるいは何も考えていなくとも、周りの人たちは気にもせず雑談に興じている。

私は机に突っ伏して彼が来るのをじっと待つ。


その姿はまるで忠犬ハチ公。

あ、でも。

やっぱりいつも家の前で待ってくれる彼の方が忠犬っぽいかな。何か犬っぽいし。


彼に犬の耳としっぽがついていて、私にお手をする姿を想像すると、なんだかとたんに笑えてきた。

彼はいたずらっ子だから、犬になったらティッシュの箱から中身全部だしちゃったり、ドックフードを床にばらまいたりして、「僕は別に何も・・・・・・何も知りませんよ?」みたいな顔でそっぽを向く姿が目に浮かぶ。


ちょっと困ってしまう、だけどほっこり胸のあたりが暖かい。


そうやってちょっと意地悪でいたずらっ子だけど、彼はいつも私に笑顔を向けてくれる。

そしてそれだけで私も笑顔になる。


「ご主人様は待ってるよ・・・・・・須島君」


小さな声でそうつぶやいた。

だけど。


「ふえぇえ!!? そういうプレイ!?」


そんなことを考えている間にも、きんこんかんこんとチャイムが鳴り、扉を開けて担任の先生が入ってきてしまっていた。


新任の気弱そうな若い女の先生。

リクルートスーツがよく似合うその先生は先ほどの私のつぶやきを聞いていたみたいで、素っ頓狂なことを言った。


「う、うん。別にね。須島君と木下さんは仲がすごく良いみたいだし。そういうことをするなとは言わないけれど。さすがに校内でその、SMとかそういうことを言うのはね・・・・・・?」

「え、な、ち、ちちちちがいま___」


何言ってるのこの先生。

SM?

服のサイズじゃないよね? 何と勘違いしてるのこの人!!?


「べ、別うらやましいとかじゃなくてね、倫理的にって言うのかなぁ・・・・・・・その、ね?」

「ち、違いますから、本当に!!」


自分でも驚くほど大きな声が出て、周りが一瞬静かになる。

それによって必然的に視線が私たちに集まる。

とんださらし者だった。


「あ、えーと、そ、そんなことよりも出席、出席をとならなくちゃねっ!」


先生も朝っぱらからSとかMとかのたまった上に注目されて恥ずかしいのか顔を赤くしながら急に話を逸らし、出席を取り始めた。


「じゃ、じゃあ出席取りますね~」

「赤石くん」

「はい!」

「石田さん」

「はい」


なんか、とんだとばっちりだった。

私もいたたまれなくなって自分の席に沈んだ。


私は未だ空席の彼の席を眺めながら、先ほどの胸の暖かさがきえて不安にかき乱される胸中を隠すかのように下を向いて待った。

ただじっと。

出席が取り終わるのを、では無く。

彼がやってくるのを。


出席を取るぎりぎりに教室に飛び込んできて、「おそくなっちった。めんごっ」とかそんな風に教室に笑いを振りまきながら入ってくるその時を。


「斉藤さん」

「はい」

「鈴木くん」

「うーい」

「鈴原くん」

「・・・・・・う、うす」


あ、つぎだ。

いつもだったらこの次に____。


「瀬藤さん」

「はぁ~い」


だけど。その時はこなかった。

魔法の呪文かお経のように読み上げられるいくつもの名前の中。

その中で彼の名前が出席で呼ばれることはなかったから。

まるで意図的に避けられているように。

初めから名簿に名前なんて無かったかのように。


さらっと、彼の名前を呼ばずに出席を呼ぶ順番は通り過ぎてしまった。


でも、どうして?

なんで彼の名前だけ呼ばなかったの?

元々休む理由を聞いてたから?


それとも彼は本当はこのクラスにいない存在で・・・・・・いや、これはゲームのやりすぎだ。ここはリアル。

クラスにいないはずの存在が一人増えていて、そいつを殺すまでクラスメイトが死に続けるとか、誰か一人をいないものとして扱えばそれを避けられるとか、そんな設定はない。

彼はいる。

絶対に。

それに、絶対に彼は私をおいていなくなったりなんてしない。

それだけは絶対に、何が何でも、あり得ない。


「じゃ、じゃあ出席も取り終わったし、授業の用意してねー」


そんな声にはっとして周りを見回すと、もう出席は取り終わって担任は出席簿を教卓の上でとんとんと整えていた。


そもそも私の名前も呼ばれてない気が。

私が先生にじっと視線を送るも、先生は目を合わせない。

それでも私はじーっと目をそらさないでいると先生は額からだらだらと冷や汗を量産していた。

・・・・・・絶対わざとだよね。

でも、なんか可哀想なので追求はしないでおいた。なんか先生には私と同じオーラというか、シンパシーを感じるんだよね。


それにいつも私出席取るときに返事してないし。

いつもは須島君が勝手に返事をしてしまうから。それでもちゃんと出席つけられてるから平気だよね。


「そっか、授業・・・・・・」


彼はいない。

前の席は抜け殻のように空いていて、教室の背景の中に静かにとけ込んでいた。


でも、不思議なもので・・・・・・いや、不思議でもないんだけど、彼がいなくても授業は進む。時も進む。

時間は止まらない。

誰かのために時間は動かず、世界は回らず、ただただ、規則的に。普遍的に過ぎ去っていく。

彼がいない学校。

彼のいない日常。

誰も話す人のいない孤独。


いつもすぐ近くに彼がいて、困ったら助けてくれてた。いや、困らなくったってそばにいてくれた。いままで私は全然そんなことには気づいていなかったけど。

今彼がいなくなるとはっきり分かるなぁ。

一人は寂しい。

一人は悲しい。


やっぱり私には、彼が言うように友達が必要なのかも知れないなあ。

なんて。

でも、やっぱり私なんかが友達なんて作れるわけ無いけど。


だって私だよ。

見た目が特別可愛いわけでもない。須籐君のように優しくもないし、顔も整ってない。それに胸だって・・・・・・。

にもかかわらず当然のように、幼なじみって言う立場なだけで、人気者の彼の隣に平然と居座っている。きっと私はクラスのかなりの女子を敵に回してると思う。


そういう意味じゃ、やっぱり佐藤さんのような人が、彼の隣にいるのはふさわしいなあなんて思う。

見た目もきれい、明るくて友達も多くて、それでいて頭もいい。


ああいう娘が、彼にはふさわしいし、釣り合ってると思う。

だけど、彼の隣で笑っている佐藤さんの姿を思い描くと、知らずに目に涙がたまってくる。

どうして?

私はただの幼なじみで・・・・・・。


「木下・・・・・・さん? 大丈夫? どこか痛い?」

「ぁ、え・・・・・・!?」


顔を上げると、目の前には新任の若い女教師の顔があった。

私の顔を心配そうにのぞき込んでいた。


「あ、あああ、あの、私、その・・・・・・私、あんでもなくて、あの」


とっさに言葉が出ない。

ゴシゴシと目元を袖でこすり、涙を拭う。


だけど。


「あ、れ・・・・・・?」


おかしいな。

涙は止めどなく目から流れ出る。枯れることのない泉のように、降り出した小雨のように、ぽろぽろと。

わたし、そんなにショックだったのかな?

ただの幼なじみなのに?

いつも辛く当たってたのに。私、こんなに泣き虫じゃないはずなのに。彼がほかの誰かと一緒に笑っている姿を想像しただけで?


その時。


「先生!」

「ッ・・・・・・佐藤、さん?」


突如泣きだした私を見ておどおどする目の前の新任教師に助け船でも出すように佐藤さんが声をかける。


「恋さんは・・・・・・うち、私が保健室に連れて行きます」

「佐藤さんが、ですか? でも佐藤さんは・・・・・・」

「私では何か問題でも? どっちにしろこのままじゃ授業は続けられないですし、知っていると思いますけど私成績いいので、先生の授業くらい受けなくても大丈夫ですけど?」

「ハウッ・・・・・・!!? うう、は、はい、そういうことなら佐藤さん。お願いします。恋さんを保健室に連れて行ってあげてください」(震え声)


女教師涙目。

未だ泣き続ける私と佐藤さんの言葉にショックを受けプルプルと目に涙をためて震えている先生を尻目に、佐藤さんに向かって周りは「やっさしぃ」だとか「さっすが~」といった、からかい混じりの言葉をかけていた。


「佐藤、さん・・・・・・?」

「はぁ・・・・・・いいからさっさと行くわよ」


彼女。佐藤さんはため息をつきながらも私に話しかけてきて、保健室に向かうことを勧めてくれる。


「え、ええと。でも」

「そんなぐちゃぐちゃの顔で教室にいられても迷惑なのよ! さっさと来なさい!」


そういって佐藤さんは私の服の袖からちょこんと出ている手を強く握って教室を飛び出した。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


佐藤さんは私のペースなんてお構いなしにぐんぐん廊下を進んでいく。私は半ば引きづられるような格好で彼女について行く。


やっぱり、佐藤さんはきれいだなぁ。

髪もさらさらで長く、手もすべすべで柔らかい。

それになんだか、すごくいい匂いがする。


私とはなにもかもが大違いで、おんなじ女として恥ずかしかった。


「失礼しますね!」

「・・・・・・ぁ」


彼女と自分を比べて勝手に落ち込んでいる内に、もう保健室の前についてしまった。

その間、やっぱり佐藤さんが何か話しかけてくることも、視線を合わせることもなかったけれど。


「保健室、誰もいないみたいね」

「・・・・・・ぁ、は、はい、そう、ですね、はい」

「・・・・・・」


佐藤さんは眉の会いだに深いしわを刻み込んで、不機嫌そうな顔で私の顔を見る。


「まあいいわ。アンタさ、先生の方にはアタシから言っておくから、ここのベットで休んでなさい」

「え、で、でも」

「いいから、お昼の時間までは一人にしてあげるから、それまでに泣きやんでおきなさいよ」


佐藤さんは有無を言わせない感じで仁王立ちをして腕を組んでいた。

仕方ないので私は保健室のベットで休んでおくことにした。


なんだかな~なんて思いながら。

けれど、ベットに入って目をつぶると、すぐに睡魔がおそってきて、意識が遠のいていくのが分かった。


「はぁ・・・・・・。気持ち・・・・・・のよ」


ゆっくりと闇の中へ沈んでいき、鈍くなっていく感覚の中で、佐藤さんが私に向かって何かを言っているのが聞こえた気がした。

だけど、私は睡魔にはあらがうこともできず、そのまま意識を手放してしまった。

最近になってようやくテラフォー〇ーズなる作品を読んでみました。

いやぁ、絵がうまくって面白いですねぇ。

なんかすっごい気持ち悪かったですわ(褒め言葉)。ゴキブリとか。

でも、BorCと結構内容かぶってるんですよね。

いや、本当にテラフォーマーズ読んだの最近なんです。嘘じゃないんですよぅ。

は!?……パクりちゃうわ!!


まあそれはそうと、今回初登場(?)の担任の女の先生。

「がっこうぐ〇し」のめぐねぇみたいなイメージで書いています。不遇な扱いで涙目になる系の女教師っていいですよねぇ。


ではまた明日。

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