いつもと少しだけ違う朝
今日の分投下~
(-ω-)/ポイー
木下恋それが彼女の名前だった。
初対面でいきなり告白、どころか結婚を申し込むような幼稚園児なんて、今思えば、すごくおかしな子供な気がする。
だけど、僕には彼女のことが気になった。
気になって仕方がなかったんだ。
なんていうか、出会いを考えれば当然のことだけど。
でも、彼女を見ていると、いろいろなことが見えてきた。
彼女はなんと、引っ込み思案だった。最初は向うから話しかけてきたのに、今度はこっちから話しかけたらテンパって泣き出してしまうくらい。
自分から話しかけておいてこっちから近づくと避けられる。変な奴だなぁって思った。
だけど、最初の時の言葉の本当の意味を知りたくて、僕は彼女に何度も何度も話しかけていった。
でも、彼女と本格的に仲良くなれたのは、小学校にはいるくらいになってしまった。長かった。本当に長い道のりだった。
幼稚園児のくせに人見知り拗らせすぎだろうと思う。
でも、きっとその時間だって、僕たちの中では大切な物だったんだと今なら思う。
笑って思い出すことができる。
きっと無駄な物なんてない。
よけいな物なんて無かった。
それは僕がそう思いたいだけなのかもしれないけれど、それでも、そんな風に思えるくらい、彼女の存在が僕の中で大きな物となっていった。
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side 恋
じりりりりりりりりりりり!!
「ああ、もううるさっ」
朝の気持ちの良い微睡みを耳元で邪魔する、電子音をけたたましく発する目覚まし時計に、八つ当たり気味に右拳をたたき込んだ。
そうすると耳元で騒音を響かせていたそれは、がんっと言う音とともにとたんに音を出すのを止めた。
「・・・・・・いたい」
手が痛かった。目覚まし時計には勝ったけど、名誉の負傷をした。
めーでーめーでー。
「起きた?」
「ッ・・・・・・!!?」
「あ、今ビクッてした」
何故か彼がいた。
ベットのすぐ脇に。朝日が射し込む窓を背にしてにこにこと微笑みを浮かべながら。
「・・・・・・・・・・・・何でいるの?」
「坊やだからさ」
「坊やじゃないし。・・・・・・言い直すね。何で私の部屋にいるのって聞いてるの。それもこんな朝早くから」
さっき目覚ましが鳴ったってことは、今はまだ七時くらいのはず。
太陽さんもやっと地平線からこんにちわしたくらいの時間。
「さ、さあ、そんなことより起きたなら友達を作ろう」
「何でいるのかと聞いているんだけど?」
「あれ? 何か怒ってる?」
「・・・・・・怒ってないと思う?」
「あー・・・・・・あはははは、は?」
彼は笑ってごまかす。
いや、ごまかされないけど。
乙女の部屋に無断で入り、あまつさえ寝顔をのぞき込むとは何事だろうか?
「・・・・・・はぁ。また窓から入ってきたの?」
「まあ、そんなところ」
はあ、またか。
彼は幼なじみで、私の隣の家に住んでいる。
だから昨日も手をつないで一緒に帰ってきたんだけど、都心で家と家の間が近いからって窓伝いに部屋に上がり込むのはどうなんだろう。
幼なじみとはいえ、一応乙女の部屋なんだけど。
「幼なじみにだってプライベートはあるんだけど」
「僕達の間にはないけどね?」
「あるの! とにかく、次からはちゃんと玄関から入ってきて」
「ええ~」
「じゃないと警察に通報するよ」
「ぶーぶー」
「今すぐ通報してもいいんだよ? 子豚さん?」
がらがらっと彼の部屋の窓とほぼつながっていると言っても良いくらい近い窓を開けて早く出て行けオーラを出す。
「しょうがないなぁ・・・・・・じゃあ、今日もがんばって友達作るんだぞっ☆」
「むかっ・・・・・・いいから早く出てけ」
「おぉ~こわこわ」
私はカーテンを引いて着替え始めると、窓の外から彼が自分の部屋に帰っていったらしい音が聞こえた。
なんとなく振り返るとすでにそこに彼はいなかった。
ただ、春先の朝の冷え切った風になびくカーテンがあるだけだった。
「って、また窓開けっ放し・・・・・・さむっ」
全く、意外とおっちょこちょいなところがあるから、須島君は。
仕方ないので窓は私が閉めてあげる。こうやって窓を開けっ放しにしていくことも今回が初めてじゃないし。
でも、後で何かおごらせてやるから。
絶対だから。
その後すぐ、窓の反対側にある、部屋のドアの向こう側から誰かが階段を上がってくる音がした。
そしてその音の主は、少しした後私の部屋の扉を開け、中をのぞき込みながら心配そうに声をかけた。
「恋? 起きてる? と言うか、起きられる? 無理だったら今日は学校休んでも・・・・・・」
声の主。というかお母さんは部屋に入るなり、何故か掛け布団にくるまれている抱き枕に話しかけていた。
違う。そっちじゃないよ。
「お母さん・・・・・・私ならもう起きてるよ。そっちは抱き枕」
「ああ!! 恋がもう起きてる!!?」
そんな驚くようなことかな?
「恋、大丈夫なの? 今日も学校いける? 無理なら休んでもいいのよ?」
「私が朝弱いからって心配しすぎだよお母さん」
「でも、ほら、あんなことがあったばかりだし」
あんなこと、か。
確かについ最近、貧血を起こして倒れたことがあったっけ。元々朝弱かったし。
でも、その時は彼がすぐに保健室まで運んでくれたし、また同じようなことがあってもきっと・・・・・・。
そう思うと、不安なんて微塵も感じず。
私は自分の口元が自然とにやけてしまうのを押さえることが出来なかった。
「とにかく、大丈夫だよ。大丈夫だからっ!」
「そ、そう。ならいいのだけれど」
そういってお母さんは心配そうな顔で下へと降りていった。
お母さんが過保護すぎるから私が人見知りを拗らせたんじゃないだろうか。
そう思うとなんだか無性にむかむかしてきた。
そのせいで彼からは友達を作ろうなんて言われるし。
はぁ・・・・・・。
仕方ないのですぐに着替えて下におり、顔を洗って頭を冷やした。
そして、鏡を見て落ち込む。
だって。
鏡に映るその顔は、私の顔は、お世辞にも彼が言ってくれるような可愛らしいものじゃなかったから。
目は奥二重だし、眉も太い。頬にはそばかすがあって、唇は薄く小さい。髪は癖だらけで、とかすのは一苦労だし、目を隠すくらいに前髪は長く、牛乳瓶の底みたいな厚いレンズのメガネは、よけいに私の可愛くなさを助長する。
はぁ・・・・・・。
鏡を見てると、意味もなくため息が出る。
でも、考えてしまう。
もし私が、彼と釣り合うくらい可愛かったら、彼の可愛いという言葉を素直に喜べるし、きっと彼とお似合いのカップルだって噂されて・・・・・・なんて。
鏡に映った自分の顔は恐ろしく真っ赤だった。
恥ずかしい。
「わ、私ももしかして・・・・・・須島、君のことを・・・・・・?」
まままま、まさかね・・・・・・?
ただでさえ真っ赤だった顔がそれを言葉にしたことでさらに茹でた蟹のように赤くなった。
ちなみにあの蟹のオレンジ色っぽい色はゆでたからあの色になるだけで、最初は茶色っぽい色なんだとか。須島君が言っていた。
ってまた須島君だよ。
私はそれしかないの!!?
と、とにかく。
言いながらもっと恥ずかしくなったので冷水で顔を引き締めた。
冷たい。
でも、ちょっと落ち着いた。
そこへお母さんから声をかけられる。
「恋~もうご飯できてるわよ! 早く食べないと遅刻しちゃうわよ~」
「は~い」
早くご飯食べよう。
顔をタオルで拭いてからメガネを掛け、リビングに行くと、お母さん特性の朝食が並んでいた。お母さんはすでに席について食べ始めていた。
でも、そこにお父さんの姿はない。
「あれ? お父さんは?」
「もう先に仕事行ったわよ」
「そうなんだ」
だけど、ご飯は今出来立てだよっ! っていう感じに湯気を上げている。お父さんは何を食べたのだろうか。
「ちなみにお父さんの朝食は三分ラーメンよ!」
「三分・・・・・・? カップラーメンのこと? 最近は5分のとか1分のとかもあるけどね」
「そうなの? 私は食べないから知らないわ」
「そう」
それはそうと、母よ。ちゃんと朝御飯くらいつくってあげてよ。
朝からカップラーメンだなんてお父さん可哀想だよ。
「ああ、お父さん朝からテンション高かったわ~娘の寝顔を見てうはうはだからって朝からなんて~ポッ///」
前言撤回。
娘の寝顔をのぞき見るようなお父さんは一生朝ご飯食べなくて言いと思う。
ホカホカで湯気がでているのはご飯だけじゃなくて夫婦仲もだった。
「朝からねちょねちょのぬるぬるよ! おかげでまたお風呂に入り直さなくちゃいけなく____」
「やめて」
「・・・・・・でもでも~」
「やめて」
私はそういう話はあんまり好きじゃないし。
親の情事なんて聞きたくもない。
っていうか、そんなことだから朝ご飯間に合わなかったんじゃ・・・・・・いや、何か無性に疲れるからこれ以上考えるのはよそう。
とか言っている間にご飯食べ終わっちゃったし。
「ごちそうさま」
「あら? もういいの?」
「うん。朝はそんなに食べられないし。それに、もう行かないと遅れちゃうから」
「そう、じゃあそこにお弁当あるから持って行きなさい」
「ありがとう」
私は急いで歯磨きをして、お弁当と学校に持って行く鞄をもって家を飛び出した。
扉を開けると同時に、まだ冷たい朝の空気が頬をなでる。そして、そこにはいつも通り、家の前で「遅かったね」と言う言葉とともに、彼の困ったようなうれしいような笑顔が飛び込んで・・・・・・こなかった。
そこに彼はいなかった。
朝、いつも私のことを玄関の前で待ってくれている彼は、何故かそこにいなかった。
「あ、れ?」
どうして、いないんだろう。
なんで・・・・・・?
乾いた布地にしみこんでいく水のように。
透明な水の中に落とされた一滴の色水のように。
私の心に、じんわりと失望感が広がった。
あるいは喪失感。悲壮感・・・・・・と言うほどでもないのかも知れないけど。
理由も分からず、いつもある物がそこにない、たったそれだけのことのはずなのにたまらなく悲しくなった。
なってしまった。
朝私を起こしに来たのに、どうしたんだろう。
彼のことだから春先とはいえ、二度寝と言うことはないだろうけど・・・・・・。
ぐるぐると思考は堂々を巡る。
私自身も玄関先でぐるぐると回る。
理由もなくそわそわしてじっとしていられず、彼の家、つまり私の隣の家の玄関のチャイムを鳴らした。
きっと彼は珍しくも用意に手間取っているだけで、私の鳴らしたこのチャイムの音を聞いて、玄関から飛び出てくるはずだ。
「なになに? 寂しかったのかな? ちょっと僕が遅かっただけで? それだけで?」なんてにやにやしながら。
・・・・・・なんだかそう思ったらイライラしてきた。
別に須島君のことなんか・・・・・・。
その、別に、寂しくなんてないし。
・・・・・・
っていうか出てこないし。
「・・・・・・早く出てきてよ」
また少しだけ不安になりながらもう玄関の一度チャイムを鳴らす。
たったこれだけのことで声が弱々しく震えているのが自分でも分かる。情けないなぁ私は。
早く出てきてよ。
須島君が出てきて、笑ってくれれば、きっとこんな不安すぐになくなるから。
でも、そんな私の願いとは裏腹に、彼の家の中からは誰も出てくることはなかった。
「もしかして、先に行っちゃったのかな・・・・・・?」
言葉に出してみると、それはすんなり胸の中に収まった。
なんだか、急にそんな気がしてきた。
そうだよ。どうせ彼のことだから、今日日直だったのを急に思い出したとか、何か急用があったとか、そんなところ、だよね。
そうだ。きっとそのはず。
そうに、きまってる。
「でも、何も言わないで先に行くなんて・・・・・・はぁ」
朝から重たくなってしまった足を引き吊りながら、とぼとぼと一人学校への通学路を歩み始めた。
彼がいれば、あんなにも楽しくて、あんなにも足は軽くて、世界は明るくて。
彼の手の温もりは心を温めてくれて、彼との話は、今日もがんばろうという意欲を与えてくれて。彼と一緒に歩んだ道は、大切な思い出の一ページで。
「・・・・・・すとう、くん」
彼のことを考えていたら、思わず彼の名前が口をついて出た。
そこまできてやっと気づく。
ああ、私、すごく彼に依存してるなぁ。
頼りきってるなぁ。
そんな事実を、再認識した。
だからこそ彼は・・・・・・友達を作ろう、なんて言ったのかも知れない。
「・・・・・・ともだち、か」
私のその小さなつぶやきは、吐くたびに白くなる息とともに朝の冷たい空気の中に溶けていった。
なんか最近。設定被りするアニメをちらほら見かける気がしますなぁ。
まあ面白ければ何でもいいんですがね。
落第騎士とかアスタリスクとかね。もっというと六畳間と七々々もなんかなぁ。
あ、話は変わるんですけど、紅ってマンガかったんですけど、あれ面白いですねぇ。セラフ? 何それ、おいしいの? 状態ですた。
まあ無駄話はさておき、本日はここまで。
ほんじゃ、あでゅー。