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宝石姫  作者: 留萌みずの
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序章

序章


この世界には三つの国がある。水の王国・レスター、土の帝国・オレガノ。そして、風の皇国・グラシエール。三つの国は互いに抑制し、時に国交を交え、均衡を保っていた。



人でありながら、ヒトとは異なる存在。

神に選ばれたその存在は風を操る力を持ち、風そのものであった。

その存在は風となり、この国を護っている。

風はこの国の宝であり。この国そのものであった。


目を開けると石灰質の白い石畳が目に映った。ぼんやりと焦点が合わない瞳で辺りを見渡すと、白い石で作られた柱の回廊が続いている。ひんやりとした床から、身体を起こす。

ー唄?

回廊の先から響いてくるのは知らない言葉の歌声だ。高く澄んだ声に誘われるように立ち上がると、声のする方へ足を運ぶ。後ろからふわりと風が吹いてくる。風が髪を揺らし、回廊の奥へとー歌声の聴こえる方へと促す。行き止まりの扉の前で足を止める。白く重そうな石で出来た扉。声は扉の向こうから聴こえてくる。

ー開イテハダメ。

声と一緒に鈍い痛みが頭の中に響く。しかし、自分の意思とは反対に手は扉へと伸びていく。白い手。細い指に力が込められると扉の見た目によらず簡単に扉が開いていく。回廊で留まっていた風が一気に室内へと吹き込み、激しく髪を揺らす。視界いっぱいに広がる淡い緑の長い髪。思わず、ぎゅっときつく目を瞑る。

しばらくすると、強い風はおさまった。そよ風のような柔らかな風が室内に吹き込んでいく。そっと目を開けると室内を見渡す。白い石畳の壁に囲まれた円型の部屋。部屋の中央の石畳は途切れ、円型の泉がある。周りには等間隔に白い石灰質の柱が並んでおり、見上げると雲のない碧い空が広がっている。視線を戻し、部屋の中央へと歩を進める。石畳の縁に腰を下ろす。

ーマダ、見テハダメ!

また頭の中で強い声がする。鈍く大きな痛みが頭に響くが、また身体は意思とは関係なく動く。白い手を白い石畳の縁にかけ泉をのぞき込むー。

ぎゅっと瞑っていた目を開くと零れ落ちた涙が水面を揺らしていた。揺らされた水面に映る人影。長い髪、白い肌、碧い瞳ー。ぼんやりとした人影は泉の中でいっぱいに腕を伸ばしていたー。

ズキンと大きい痛みが頭に響き、視界は黒く反転した。

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