巫女と歩む死神:3
「とりあえず…離れなさい!警醒陣!」
「…」
霊夢の前方に結界が生成され、
それに触れた颯花は数秒動きを固定され、
そして大きく吹き飛ばされた。
「無駄なんだ…これじゃ…」
「こんぐらいで倒れるあんたじゃないものね」
「Exactly(その通りでございます)」
「聞き覚えのある台詞ね…亜空穴…!」
霊夢の姿は突如として消えた。
颯花は辺りを見回す。しかし何処にもいない。
「ここよっ!」
「…。しかし無駄だ…!」
背後の何も無い空間から、再び霊夢は姿を現した。
颯花の背中に飛び蹴りが命中するが、
颯花は微動だにしない。
「やめておけ…また暴走したら今度こそ死ぬぞ」
「なら大人しくやられればいいじゃない!」
「…君では私を倒せない…!」
「その根拠はどこにあるのよ!」
「なら…私はここで立ち止まっていよう…
君の最大限の実力を…私にぶつけてみろ…!」
「自殺行為ね…死んで後悔して恨まないでよ」
「死ぬ…か…死んだ後は…私は何処へ行くのだろう」
「地獄でしょうね…あんたは」
「…ならこの私を…地獄へ送ってみろ…!」
「元からそのつもり…!」
霊夢は構える。颯花はその場から動かない。
霊夢の周囲に7つの陰陽玉が展開。
かなりの間隔を開けてそれらが光っていく。
「…」
「いくわよ…『夢想天生』…ッ!」
陰陽玉の全てが光った。
そして、颯花が次に意識があったのは、
既にその攻撃が終わっていた時だった。
一瞬の雪崩の様に、何が起こったのかを、
全く理解出来なかった。颯花は宙を舞っていた。
翼はへし折れ、ひし形の飾は粉々になっていた。
全身にかなりの激痛と打撃痕があった。
そして、颯花は地面へ落下した。
「なっ…何が起こった……!?」
「し…死んで…ない…なんで!?」
「かなりのダメージだ…これが巫女の本気…!」
元々全身が紅く染まっていた颯花は、
自らの血で更に染まっていく。
相変わらず、颯花は理解出来なかった。
「ふっ…やっとこの翼を使わないで…
良くなったな…
何故か翼をしまうが出来なかったが…
それが壊れた事であの吸血鬼5人分と…
自分の吸血鬼の力とも…オサラバだ」
「あんた…それじゃあこれから私と対等に戦えな」
「戦える。模倣能力だけでも充分さ…
まだ使えないけどな…」
「何故それを言ったのか分からないけど…
今の貴方に勝てる方法なんてないわ。
このまま逃げるか死ぬか…」
「死んでも勝つよ、私は」
「…。へぇ…」
颯花は最初の状態へ戻った。
しかし、蓄積していくダメージは回復をしない。
内部にも負担がかかっており、吐血している。
常人や人間であるならば、
出血多量で既に亡き者と化している程だった。
「全く…まだ動けるのね…」
「安心しろ…こっからが王道の…
1対1の正々堂々なる勝負…!
もうあんな禍々しいものを…使う必要は無い!」
「勝負にもならなそうだけど…
その不屈の根性だけは認めてあげる…!」
颯花は両手に刺剣を構える。
霊夢はそこらの木の棒を拾い、
お祓い棒の代わりとして使った。
そして、互いに踏み込み、接近する。
「妖怪バスターッ!」
「紙切れ数枚で人を倒せるものか!」
颯花はそれらを微塵に斬り裂いた。
しかし、飛び上がった霊夢に、
隙が生まれた颯花の額を飛び蹴りで蹴り飛ばした。
颯花の手元から刺剣が離れた。
「やっぱり貴方1人では何も出来ないわね」
「…」
「何も言い返さないってことは、
認めたってことになるわよ」
「…。認めている…それもかなり前…から…!」
頭部の攻撃による脳震盪で、
颯花は立ち上がる事が出来なかった。
膝立ちで額を抑えている。
「じゃあ…
今までのはただの強がりだったってこと?」
「そうかもしれないな…私がただクールぶっていた
ただそれだけなのかもしれない…」
左腕のヒビが更に大きくなり、
遂には外側の皮と肉と呼ばれる外部装甲が、
砕け落ち、内部の骨組のみとなった。
「他人が怖いから自分を偽っていただけかも…
けど…私は…これが…!…私だ…!
私は私なりでしか生きていくしかないんだ…」
颯花から再び紅い光が放たれる。
しかし、その紅は不気味さを表すことも無く、
透き通った信念の様な深紅だった。
「…」
「人の大切なものを盗み…雑に扱い…
嫌われ…妬まれ…苦しみ…!
けど…私以外の誰かが泣いているのなら…
私は自分を捨てて戦うだけさ…!」
霊夢は歩み出した。
霊夢は、光り輝く白い光を纏った。
その白い光は、希望の象徴の様に輝いていた。
「…あんたのした事は忘れない…
けど…許すわけにもいかない…私は…貴方を、
何故か尊敬してしまっているかもしれない…
けど…私にも戦う理由があるの…!
それは貴方にも負けられないこと…!
それは…私は仲間を守ること…!
私は自分の、いや…皆の為にも…戦う!」