巫女と歩む死神:2
「なんなのよ喋れるじゃない!
さっさと返事を返しなさいよ!」
「…返事〜?…わー」
「わー…って…全く…」
颯花の背中から翼が生え、
そして、颯花は自身の腕を、
霊夢の顔に向けた。
そして、頭頂部に手を乗せた。
霊夢は戸惑って動けない。
「なっ…何を…!」
「んー?…ナデナデ〜♪」
「ちょっ…はぁ!?」
彼女は何故か、その全身紅く染まった状態で、
霊夢を撫で始めた。
霊夢は更にこの謎の状況に戸惑っていた。
「何なのよこいつ…
前の賢い感じのアンタは何処へ行ったのよ…」
「んっんー♪」
だんだんと撫でる力が強くなってきた。
少し痛い程度だったが、
別に殺す気でやってるようでもなく、
摩擦で擦り殺せる程の力も出していなかった。
「いつまでやってんのよ…」
「んー…」
その後、彼女は撫でるのを辞めた。
そして再び顔に手を向けた。
「…なんなのよ…!」
「んー!…」
「なっ…っうわっ!!」
彼女は、霊夢を恐ろしい程の力で、
デコピンのみで吹き飛ばした。
霊夢は大きく後方へ飛ばされた。
「痛った…よくもやったわね…!」
「油断するのが…悪いの〜ふふっ」
「だんだん喋れる様になってきたのね…」
デコピンされた場所から、少し血が出ていた。
彼女はこれでも本気を出していないと、
霊夢は予想した。
「(これが本気だったら首が吹っ飛んでたわね…)」
「んーんー」
「本当、面倒な奴が更に面倒になって…」
霊夢は立ち上がる。
頭部へ打撃を受けたせいか、少しばかりめまいが
しており足元がよろついている。
血が視界の邪魔にならない様に、
その流れる血を拭いた。
「…ってあれ…?
なんで動けない下半身とまたくっつくの…?」
「…んー?」
「聞いても無駄か…はぁ…霊符『夢想妙珠』…!」
颯花の方向へ、5つの輝弾が放たれた。
またも颯花は避ける事も無く、
その状態のまま、それらは直撃する。
しかし、ダメージを与える事は出来ない。
「そんなに血塗れでボロボロのくせに…
なんでそんないきなり頑丈になるのよ…
原理が分からないわ…」
「んー…なんでだろねーぇ…」
「こっちが聞いてるのよ…全く…」
足場の結界の設置時間が終了し、
颯花は自由に動けるようになった。
そして、再び奇妙な行動を始めた。
「…逆立ち…」
「いーち…にぃーい…」
「戦う気がないならお互い楽でいいわね。
私は戻るからそこで逆立ちしてるのよ」
「さん!」
直後に、両脚を霊夢に向け、
その両脚から閃光が放たれた。
後ろを向いていた霊夢は間一髪で回避した。
「ひ…人をコケにして…!」
「ふふ…!うっ…!」
笑って腕の力が抜け、
颯花の顔面は思いきり地面と接触した。
辺りに鈍い音が響いた。
「痛そー…大丈夫ー?」
「…」
「…正気に戻ったわね」
「…まさかこんな単純な衝撃で…
意識を戻せたなんてな…」
「私にしてはどっちでもいいわよ」
「…今だけかもしれん…出来れば…
君を殺したくはない…退け」
「私はまだ負けた訳でもないし、
負ける訳でもないわ。
退くのはあんたのほうよ」
「あっそ…そこを2歩前に歩いてみろ。
その時…君は死ぬ」
「死ぬ事が怖かったらまともに生きていけないわ。
上等ね、進んであげる」
霊夢は1歩歩んだ。
同時に、霊夢と颯花の互いの距離は0になった。
霊夢の首筋に、震えている右腕が、
寸止めで止まっていた。
「意識が戻っただけで、身体はもう駄目みたいね」
「動くは動くが…例の奴の憎悪に動かされている…
私も…弱くなったものだ」
「初めから弱いくせに…」
「弱いからこそ強くなりたいと目標が出来る…
初めからの強者に苦労などほぼ…皆無」
「強者にだって苦労くらいありますぅ」
「自らを強者と…自覚するか…!」
「少なくとも…あんたよりはね!」