壊れていく紛い物
「お前は …!」
「こんにちは、紛い物」
颯花の背後に居た人物、
颯花それは颯花であり、颯花ではない者。
桐初 颯花の前の姿の人物が居た。
「咲夜…咲夜ぁ!」
彼女は意識が遠のいていた。
颯花の言葉が聞こえない程だったが、
咲夜は何を言っているかは分かっていた。
「…敵の…慈悲など…!
…いら…ない…ッ!!」
咲夜は颯花を押し離した。
咲夜の身体から刺剣が抜け、
その傷から大量に出血していた。
「貴方に心配されるより…
死んだ方がマシよ…!」
咲夜はナイフを取り出した。
「やっ…やめろ…やめろッ!!」
「お嬢様の所へ行けるのなら…
何も怖くは…ない…!」
そして自らの喉を切り裂いた。
そこから同じ様に、大量に出血した。
「…なんて馬鹿な事を…!
死ぬ事をも怖くないというのか!」
颯花は自身に刺さった刺剣を抜いた。
数秒後、その傷穴が塞がれた。
咲夜は、倒れたまま少しも動かない。
「あれ?そこにコアがあった筈だよなぁ?」
「お前は…咲夜の事も忘れてしまったのか!」
「お前だって何度も殺す気でやってきただろう?」
「だからって自分から殺した覚えはない!」
「だが…殺したのはお前だ!」
颯花は咲夜を抱えた。
相変わらず少しも動かず、
彼女の全身が血に染まり、紅色に染まっていた。
「…嘘だろ…
また目の前で人が死んで…
それがまさか…咲夜だなんて…」
「相変わらず泣けないな?
可哀想な奴じゃないか」
「…」
咲夜を道の端へ寝かした。
颯花も、その血で紅く染まっていた。
付近に紅い水溜りが出来ていた。
「お?それは善意を思っての行動かい?」
「…」
身体中の血の温度が上昇していく。
颯花は怒りと復讐で身体が動いた。
旧颯花へ重く歩み寄る。
その後、機械の様に言葉を発した。
「やはりお前は私ではない」
「当たり前さ。お前はお前だよ。クズ野郎君」
「お前にクズ呼ばわりされるほど、
私は落ちこぼれていない」
「そうかな?お前はお前さ。
だが、お前は私でもある」
「違うね、私がお前なんじゃない。
お前が私であるだけだ。
私が元の身体に残した憎悪で出来た存在。
それが貴様なだけだ」
「ほう?
貴様にもまだ憎悪が残っているじゃないか」
「これは…貴様が残した憎悪。
貴様のせいで再び生み出された不要なものだ」
「不要…?
お前がまだその必要性に気付いてないだけさ」
「貴様がまだ不要性に気付いてないだけだ」
「憎悪は…不要となることは…無いな!」