2人の召使い:1
「・・・これは予想外だったな。
君にも、邪魔をされるとは」
「・・・」
颯花はしばらく歩いて、そこには、
十六夜 咲夜が居た。
彼女の両腕は既に治っていた。
颯花も少し驚く治癒力だった。
「・・・お嬢様の借りを返させてもらうわ」
「・・・」
「あら、何も言わないのね。
貴方なら反論するかと思ってたけど」
「反論するだけ無駄だろ?
今までもそうだった。無駄な事は二度としない」
「・・・別にいいけど」
咲夜は瞬時に颯花の背後へ移動した。
「貴方に何が出来るの。
結局、何も出来なかった貴方に」
「似たような台詞を聞いたな。
返答は同じ、私は私の道を行く」
颯花は、咲夜の形態へ変化した。
彼女の時止め前と後の呼吸のリズム等から、
止められる時の時間を把握した。
8秒前後だろうか、少し伸びていた。
「(という事は、私は4秒か)」
「・・・相変わらず、薄気味悪いわね」
「・・・私にとっては褒め言葉だ」
同時に、身体が動かなくなった。
咲夜の時間停止が発動された。
「(何をしてくるか・・・?
近接なら私も発動して自衛、
遠距離なら時間停止終了直前に発動して、
あいつの動けないうちに無力化か)」
咲夜は、遠距離攻撃はせず、接近した。
「(今使わせて、次動けなくなった時に止めを)」
咲夜は右手の3本のナイフを、
鉤爪のように切り裂いてきた。
颯花は能力を使い、刺剣を取り出し、
それをナイフと鍔迫り合わせた。
「互いに既に戦ったことのある身、
手の内はお互いに知っている・・・
だが、私はあの頃とかなり変わった。
身体も、武装も、何よりも精神がな」
「私にとって、貴方は相変わらずの屑。
大人しく殺されればまだ可愛げがあったものを」
「また可愛いとか・・・私を、
見た目で判断しないで欲しいな・・・!」
颯花はナイフを弾き、刺剣を横に振り払う。
咲夜はそれを後ろへ下がり、
ナイフを投げつつ距離を取った。
「(そういえば、この刺剣には防御形態があったな)」
颯花の刺剣が変化した。
剣先が鉄板の様に薄く広がり、
ハートの形に変化した。
強度は咲夜のナイフを傷付けず弾き返すくらいだ。
「それはまだ3本だけの結果・・・!
奇術『エターナルミーク』ッ!」
咲夜は前方に無数のナイフを飛ばした。
「当たりに行く馬鹿が戦場にいると思うか!
幻符『殺人ドール』!」
颯花は横へ回避しつつ、数本を周囲にバラ撒いた。
それらは咲夜へと飛んでいく。
「人の技を使って・・・!」
「人の技を使えるのが私の存在意義!
どう思われても気にはしない・・・!」
咲夜は向かって来たナイフを移動しつつ回避、
しかし、
気を取られて颯花の接近を許してしまった 。
「貰った・・・!」
「もうそこに・・・!?
はっ離れて・・・!銀符『シルバーバウンド』!」
咲夜は、全方向にナイフを飛ばした。
颯花はそれを左腕の機械で弾き、
刺剣を構えたが、
「(しまった・・・もう4秒か・・・!)」
「(今の状況では急所を狙えない・・・
一旦距離を・・・!)」
咲夜は攻撃をせず、距離を取った。
再びナイフを構えるなどの準備をし、
残りの時止めの時間が終了した。
「(今能力の掛け合わせをして押すのもいいが、
後々の戦闘が厳しくなるか・・・)」
「パラレルブレーン・・・!」
全方120°に、ナイフが投げられた。
「(金属なら、風圧結界と同じ使い方も出来るな)」
颯花は左腕に磁界を発生させ、ナイフを弾く。
その後、右手の刺剣が咲夜へと向かう。
「罠にかかったわね・・・!
パーフェクトメイド・・・!」
「何・・・ッ!?」
いつの間にか設置されていたナイフに、
颯花は周囲を包まれた。
しかし、再び磁界を発生させ、それらを受け流す。
が、左腕に少し回していたせいで磁界が弱く、
数本が本人に当たり、切り傷を付けた。
「物をパクっても真似出来なければ、
ただの別物ね。
貴方、随分弱点があるじゃない」
「・・・そう思うだろうな・・・けど、
こいつはハンデだ・・・!」