更なる犠牲者
「私は・・・何を・・・」
落下していく彼女。銃を握りしめた私。
彼女は、散りゆく花の様に落ちていく。
私はそれを見つめることしか出来なかった。
地面へ衝突する寸前に、大妖精が受け止めた。
「(殺す事は、こんなにも軽く出来てしまうのか。
他人に殺されるのではなく、
私自身が殺したのか・・・)」
「チルノちゃん!チルノちゃん!」
泣いて抱き寄せる大妖精。
それを見つめている私。
相変わらず、悲しむことが出来ない。
「・・・」
「・・・颯花。私達は・・・
・・・戦う事しか出来ないのか・・・?
お前は何も思わないのか・・・?」
「・・・私はこの通り、悲しめない。
・・・何故かを教える」
「・・・」
「実は・・・な。
この歴史をやり直す方法があるのさ。
レミィも、チルノも生き返れる。
そのせいで、何も思えなくなっているのさ」
「生き返れる・・・?」
「そう。だから今死んでようが問題は無いんだよ。
私の思った通りになれば・・・な」
「まだ生き返れるって、
決まった訳じゃないんだろ?」
「・・・そうさ」
「お前・・・。でも、全てが元に戻せるのなら、
私も賭ける価値はあると思った。
死んでしまった者に、助ける事は出来ないからな」
「私は・・・。後悔をしていないと言えば、
嘘になる・・・。・・・けど、
これからもまた人殺しになるかもしれない・・・
それでも、一緒に戦ってくれるか・・・?」
「・・・殺すかもしれない・・・か。
それでまた歴史をやり直せるのならば、
私は共に戦うよ・・・けど・・・、
自らの手を汚すまで戦うのは間違ってる。
どうか、皆を悲しませないで」
「私は・・・それが出来るかな・・・。
何度も死んだ私に」
「出来るさ・・・きっと。
急ごう・・・時間は無いよ」
2人は再び向かう。
滅入っているが、それでも進む。
信じる未来の為に、過去の為に。
しかし、彼女は耳にした。
いや、それは単なる想像上の音だった。
大妖精は一言も言っていない。
しかし、彼女は言った。
「・・・この・・・人殺し・・・」
「・・・」
言い返す言葉もない。
謝罪をして許してもらえる罪ではない。
「颯花・・・?」
「・・・」
「すまない・・・大妖精・・・」
彼女は相変わらず泣けない。
悲しいから、涙を流すという事は、
単純に罪逃れの為にすることなのだろう。
そう思ってしまっていた。
初めて自らが犯した罪の重さに押し潰されていく。
歴史を書き換える事が可能とはいえ、
人が死ぬ事への悲しみは消える事は無かった。
僅かに感じた悲しみが、
颯花の精神を、少しずつ壊していく。
私達は、更に進む。
「霧雨・・・魔理沙・・・か」
「魔理沙相手に2人で倒しきれるとは思えない。
ここは私に任せて先へ行ってくれないか?」
「勝算は?」
「・・・ないな。けど、魔理沙と霊夢を同時に
相手をしないのが幸運さ」
「・・・私もここで時間をかけている暇はないな」
「おーい、そこの颯花って奴、
お前はこの先に向かっていいってよ」
「・・・何故だ?」
「罠かもしれないぞ・・・どうする?」
「罠だとしても、それを突破してみせる。
私は先に行く・・・死ぬなよ」
「ああ、敵の戦力を減らしてみせるさ」
魔理沙の横を通った。
彼女は何もしてこない。
颯花は、その先へ進んだ。
「あいつは何を考えてるんだろうな。
お前もさ、にとり。なぜ協力するんだ?」
「言ってもわからないさ・・・きっとな」
「きっと・・・か・・・」