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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
〜紅霧異変編〜
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巫女〜その後〜

「あーもう!」


少女のある原因からの怒りは依然とし収まらずにいた。

あいつを蹴り飛ばさないで修復させればよかったと、

いろいろな意味で自分がやった事に後悔をしていた。

とりあえず倉庫に予備に作っていた賽銭箱があったので、

木片を片付け、とりあえず程度の出来の箱を設置した。

あくまで予備用の為出来前は相当良くない方だったが、

そんな事を言っていれば収入源がなくなってしまうわと、

彼女は嫌々その賽銭箱を同じ場所に設置し直していた。


「あいつ、次会ったら吊し上げてやるわ」


赤髪が先ほどの奇妙な独り言を始めたのとほぼ同時に、

彼女もまた、ぶつぶつと不満そうに独り言を始めた。


いかにも巫女らしいような巫女の色の名前は博麗 霊夢。

色と限定しているのはまあ色々あるが今回は割愛する。

大きな結界に囲まれたこの幻想郷の主人公であるはず。

いつも暇そうだが本当は全く暇ではないと思われる、

存在自体が不思議に思えて奇妙に感じる人物である。


「奇妙な人物で悪かったわね」


…。

彼女は次に自身の空腹を満たそうと間食をした。

せんべい2枚とお茶一杯といういかにも普通な食事だ。

彼女のお腹が空いたのは久しぶりに怒ったせいなのか、

いつも横になっていた身体をいきなり動かしたせいか、

それ以外なのか検討もつかないし全く分からないが、

彼女にとって、空腹は意外と久しぶりなのだそうだ。


「は?」


次に睡眠を取った。いつもの暇な時間がやってきたのだ。

しかしこの彼女の暇そうな姿がこの幻想郷の平和と、

イコールしているというのは誰が言ったか分からないが、

おそらくそれは正解だし、彼女はそういう立場の人だ。

異変やトラブルに駆けつけるヒーローのような人物だが、

こんな怠けた姿を見たらそんな事到底思えそうにない。

特にすることもない彼女はただ時間を潰す為寝始める。

しかし彼女の睡眠は何故かいつも浅く目覚めが早い。

そんな余計で必要のなさそうな謎の特性があった。

彼女の友人が言うには即座に異変に対応できるように、

そういう訓練が身体に施されてるとかされてないとか。

これは曖昧だが、彼女の正体は推測でしか分からない。

何故なら幼少期辺りから記憶が曖昧になっているのだ。

そんな大事な事を彼女はあまり他人には話さない。

昔なんてどうでもいいし、私の事で騒がれたくない、

彼女はそう友人に話し、伝えていたのだった。


しばらく時間が経ち、そして彼女は目を覚ました。

しかし、一面に広がる赤い空、禍々しいほどの満月。

それを見て彼女は…再度睡眠を取ろうとした。

恐らく夢だと思っているのだが、しかしそれだとしても、

夢の中まで寝ようとしているのは流石というべきか。

だが現実である。

自由気ままな巫女の雰囲気を更に醸し出す行動だった。

しかし、それ以上に夢であって欲しい事が現実で起こり、

それによって再び彼女は睡眠を妨害された。


ドン。


聞き覚えのある音だ。彼女の全身に悪寒を感じている。

その音に妙に拒絶感があるが、行かなければならない。

寝起きのせいか嫌々のせいか鋭い目つきで現場へ向かう。


やはりであった。思っていたことは的中していた。


「なっ…なんなのよ…!?

今日って厄年なの!?厄日なの!?

どうして嫌な事が2度も起こるのよ!最っ悪だわ」


彼女の視界に広がっていたのは同じような木箱の木片。

その中央に位置するのは短い金髪の幼い姿の少女だ。

そう、先程の颯花の戦闘で颯花が彼女を吹き飛ばして、

そしてこの神社まで吹き飛んできてしまったのだった。


「うーん…」

「…ねぇ」

「ぬゃっ!?」


霊夢の聞きなれない黒い声がルーミアの目を覚まさせる。

ルーミアは霊夢を前にして大量の冷や汗をかいている。

霊夢の目は殺気を放ちつつどこか可哀想に相手を見て、

そしてこれからルーミアの事をぶちのめそうとしている。

これも推測ではあるものの彼女はそんな目をしていた。

初対面の人ならば恐怖し過ぎで気絶していただろう。


「…」

「ご…」

「…?」

「…ごめんちゃい!」


恐怖であまりにも頭が働かず考えられなかった彼女は、

半ばやけくそで許してもらおうと可愛さをアピールした。

そんな事で状況が変わるとは到底思えるはずもない。

しかし彼女には他に手がなかった。一か八かでも、

やらないよりやった方がまだマシだとそう思っていた。


「…」

「…(半泣き)」

「…(笑顔)」

「…♪」


霊夢は許してくれたように優しそうな笑顔を見せた。

まさかこれで許してもらえるとは思っも見なかったが、

その彼女の顔を見て安息をするルーミアだった。が…


「覚悟は…出来ているわよね…!」

「ちょっ…ぇぇ…」


重く強烈な鈍い音と同時にルーミアの声が響いた。

彼女は空高く蹴り上げられ、星となっていった。

数分愚痴を吐き終わった後散らばる木片の掃除をした。

しかし、せっせと散らかる現場を掃除している最中、

まるでそれが当然かのように彼女を更に災難が襲った。


ドン。


「……!?」


再び鳴り響いたその大きな音で驚いた顔で固まる巫女。

そして数秒後やっと動いた巫女は音がした方を向いた。

その彼女が見つめる先は、

見事にも真ん中が真っ二つに折れていた大きな鳥居と、

地面に箒と共に横たわっている謎の黒白魔法使いがいた。

駆け寄る足音、それに気付き即座に顔を上げる魔法使い。

両者の目線が合う。魔法使いの顔が青ざめていた。

そして巫女は無言のまま、真顔のまま、何も言わず、

ただひとつ、聞くべき言葉を聞くために待っていた。


「まっ待て、早まるな」

「…」

「なんか言えよ…」

「…。そっちがまず言う事…あるでしょ?」

「ん…?なんだそれ」

「…」

「…」

「…お前を殺す」


ドゴッ。


巫女が殴り飛ばした黒白魔法使いが空を翔る中、

それに追い討ちをするかのように彼女は大きく叫んだ。


「『ごめんなさい』だろおおおがあああああ!!」


彼女のその怒り狂ったような魂の叫びは、

不気味な紅い空に虚しく響いた。

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