巫女の理想の善意
「颯花!」
魔理沙は地下で倒れている颯花を発見した。
「・・・」
「何ボサっとしてんだよ!霊夢達が危ないんだよ!
早く助けに行かないと!」
「・・・すまない・・・私は・・・」
「早く立て!これ以上死人を出す気か!」
「・・・皆死ねば・・・死人じゃなくなるだろ?」
「なっ・・・あいつの話を信じるのか!?」
「死んだ者はもう会えない・・・!
だったら皆で行けばいいじゃないか・・・」
「馬鹿!奴が嘘を言ってたら無駄死になんだぞ!
せめて今生きている私達だけでも!」
「・・・あいつは私なんだろ・・・?なら、
いくら絶望的でも善意さが消えるとは
思えないんだ・・・!私はあいつがただ殺すだけの
殺戮機械だとは思えない・・・!」
「それはお前があいつと!
同じ人物と思っているからだよ!
あいつはお前だが!お前はあいつじゃない!
まだ絶望していないだろ!」
「正直あいつに勝てるのかよ!?
暴走状態でも太刀打ち出来ないんだぞ!
私なんか参戦しても無駄だ!
あんな私以上の化け物に勝てるなんて
想像出来ない!」
「確かにあいつは化け物だ!けどな!
私達と同じ一つの生物なんだよ!
あっちも生物、こっちも生物なんだ!
チャンスはあるはずなんだよ!」
「チャンスがあればなんて・・・!
そんな可能性なんか希望にすらならない!」
「希望の為だけに私達が戦ってると思うなよ!
私達は私達なりで生きていく為に戦う!
訳の分からない理屈で操り人形にされるより!
戦って勝つ!それだけだ!」
「私だってもうこれ以上死んで欲しくない・・・!
けど・・・もう駄目なんだよ!」
颯花は魔理沙の手を取った。
魔理沙が直後に感じたのは、
もう寿命の老人の様な握力であった。
「お前・・・なんだよこれ!」
「この身体にガタが来てるんだよ!
こんなんじゃもう戦えない・・・!」
「・・・でも、なにか出来るはずだ!
諦めるな・・・!」
「だったら・・・私のこのコアをこの先の下にある、
なんでもいい・・・クローンが残っていれば・・・
その心臓部に埋め込んでくれ・・・!
その身体はこれよりも脆くて・・・
私の記憶も亡くなってしまうかもしれない・・・」
「そんときはどんなことしても叩き直してやる!
時間を掛けている暇は無い!
私は可能性を信じる・・・!」
「ああ・・・私は魔理沙を信じる!」
そういうと同時に、
心臓部から紅いコアが飛び出す。
直後に颯花は空の器の様になった。
「行くぞ・・・!時間が無い!」
「私はお嬢様の為にも!未来の為にも戦う!」
「未来が無いから救う為に殺すんだよ!」
「そんな事に信じれる私達じゃないわ!
咲夜!時間をなるべく掛けるのよ!」
「持久戦・・・やるしかないですね!」
「もう時間が無いんだぁ!
さっさと死んでくれよッ!」
ジーグは高速で咲夜へ突撃する。
咲夜は空に無数のナイフを投げた。
それらはジーグの進む道へ降り注ぐ。
「切り傷程度を気にする場合ではないッ!!
どうせ再生する身体なんだ!
多少の無理は押し通すッ!」
「なっ・・・!」
それらはジーグへ命中した。
無数のナイフが刺さったが、
ジーグは動きを止めない。
「まるで痛覚のない破壊神・・・!」
「痛いさ・・・!けどな!
私の見た結末よりも全くマシだぁッ!!」
ジーグは咲夜へ殴り掛かった。
寸前の所で、小さな結界が生成され、
ジーグの拳は止まった。
「私もいるわよ・・・!もう待てない!
畳み掛ける!霊符『夢想封印』ッ!!」
「クソォ!その前にお前を始末するッ!」
「なっ!・・・グッ・・・!」
止まった右腕を無理矢理に結界をぶち破り、
咲夜の額へ拳が命中した。
辺りに大きな鈍い音が響き、咲夜は吹き飛ぶ。
瞬時に腕で防御は出来たが、
両腕は骨折以上の重体を負った。
「咲夜ッ!チッ・・・!こいつをくらいなさいッ!!」
7つの光がジーグへ突撃する。
「こんな光なんぞにッ!!」
ジーグはナイフにより、
全身が血塗れになりつつも立ち向かっていく。
一つ目を左腕で殴り消した。
二つ目を右脚で、三つ目を再度左腕で殴り消した。
その時、左腕は爆散した。
重度の負荷により、内部から破損したのだった。
「まだだ…まだ終わらんぞッ・・・!」
「諦めの悪いやつ!もう身体はボロボロよ!」
「この程度など・・・時間があれば治る・・・!」
「颯花なら治らなかったわよ・・・!」
「・・・チッ・・・!己の事などどうでもいいッ!
僕は・・・私は・・・みんなの未来の為に・・・!」
「貴方・・・!」
四つ目を右腕で殴り消す。
五つ目は左脚で蹴り飛ばした。
「貴方・・・やっぱりわざと性格を改変して!
自ら悪人を演じて・・・!何故そんな事を!」
「違う・・・ッ!これはわた・・・しの意志だッ!
こうするしか未来は変えられないんだよッ!」
六つ目、頭部で叩き消した。
フェイスにヒビが入った。
「・・・もう、いい・・・
私はあなたを許した訳でもないけど・・・!
痛みなく終わらせる・・・ッ!」
「・・・終・・・わらせ・・・ない・・・!」
「・・・無想転生・・・!」
「うおおおおォォォォォオオオオ!!!!」
霊夢の構えに、左腕が命中する。
とても重い一撃であったが、受け止めた。
ジーグの動きが止まり、霊夢は背後に回った。
「・・・さようなら・・・!」