彼女達が望むこと
「お前が皆の為に死ねば!
お前以外全員ハッピーエンドなんだよォ!!」
「そんなこと信じれる相手でも!私でもないッ!」
「再成した幻想郷にッ!
紛い物が存在出来ると思うなよッ!!」
「そんなでっち上げな世界でッ!
存在したいなんて・・・誰も思わないッ!!」
「向こうの世界ではきっとそんな事忘れるさッ!
この哀れな世界もッ!僕もッ!貴様もッ!!」
「いつまで己のしている事に気付かないんだよッ!
お前が私なら・・・慈悲の気持ちは残っている筈だ!」
「残っているから正しき世界へ導いてんだよォ!
自らを捨ててまでさあッ!!」
「自分だけの理想だけでッ!
他人を殺してたまるかよッ!!」
「理想だけで現実は変えられんよォ!!」
颯花はジーグの左脚で蹴り飛ばされ、
かなりの距離を吹き飛んだ。
1人すっ飛ばして向かったので、
霊夢達が到着するにはまだ時間が掛かる。
しかし、結局間に合わなかった事で颯花は
精神が不安定になっていた。
痛みさえ分からないほど怒りに満ちていた。
それはジーグへ向けられているのと同時に、
いずれ自分もこうなってしまう事への、
己の弱さを悲観していた。
「ふざけるな・・・他人の意見には
どうでもいいのかよ・・・!
レミィも・・・咲夜もッ!」
颯花はレミリア状態へ変化。
高速で接近する。
「彼らが望んでいなくとも!
あるべき姿に戻さなければならないんだよォ!」
2人の拳が衝突する。
颯花の腕が弾かれたが、
その反動を利用し蹴りかかる。
「これがあるべき姿だと受け止める事も!
絶対に出来たはずなんだッ!」
「出来なかったからこうして未来から来たんだよ!」
蹴りは軽く蹴り飛ばされ、千切れ飛んだ。
その脚から血が噴き出る。
しかし、彼女に痛みを感じさせる暇も与えず、
ジーグは颯花へ手の平を向け、
連続で閃光をぶつけた。
颯花は煙を纏いつつ落下していった。
「過去が未来に勝てると思うな」
「勝てなくとも出来る事はやる・・・!」
「どうせ僕達はこっちの幻想郷でしか生きられない。
彼女らがいない世界でこの世界が残っていれば、
2人で暮らそうじゃないか・・・なぁ?」
「誰がお前と・・・ッ!」
「彼女らがいない世界はおそらく崩壊する。
もって数時間だろうなぁ」
「彼女達が居ない世界で、私の生きる意味は無い!」
「その勢いだ。しかし現実はそんなに甘くはない」
ジーグの周囲から謎の隙間が現れ、
そこから多量のナイフが降り注ぐ。
颯花は磁界を作り、受け流した。
全身に浅く切り傷が出来たが、
数秒後に回復した。
「私が勝てるとするれば暴走を利用出来るのが
必要最低限・・・けど・・・どうすれば・・・」
「どうせ皆生き返るんだ、そう怖い事じゃない」
「お前に操られるのに恐れているんだよ・・・!」
「私が?お前らをそこまで器用に利用出来ると?
出来たら自殺させている。
我が身を汚さなくともなぁ!」
「自分の事だけ考えて・・・!」
「彼女らの為の最善の手が自分だけの事だと?
確かにこれは自分の意志だ。理想だ。信念だ。
けど・・・やがてお前も気付くさ・・・
どうしようもないことへの絶望になぁ!?」
「私は・・・私は、惑わされない・・・!」
「惑わされないさ、それもこれも己の意志だから」
「・・・どこへ行く・・・!」
「お前にはまだ死なせん。
仲間の悲鳴を聞いてから死んでもらいたいものだ」
「・・・貴様・・・!」
「無理をするな。その身体もガタが来ているだろ?
そろそろこの時期が身体の交換時期さ。
そんなに荒く使っているからな 」
「ガタは・・・まだ来ていない・・・!」
「嘘を付け、首の動きが遅くなっているだろ?
僕もそうだったさ。早めに直しておけよ?
まぁ・・・意味は無いけどなぁ?ハハハハッ!」
「・・・お・・・前・・・はッ!」
ジーグは颯花を後にし、霊夢達の下へ向かった。
全ての結末から来ている彼女にとって、
知らない事は無かった。