2人の個体:2
颯花は霊夢状態へ変化した。
霊符を飛ばしつつ、突撃する。
霊符はジーグへ当たりもせず、
ジーグは颯花へ歩みだす。
「・・・調子に乗ると・・・!」
颯花はレミリア状態へ変化する。
背中の黒い翼で進む速度が増す。
「貰った・・・!」
颯花は右腕でジーグを殴りかかった。
しかし、それ以上の速度で仮面に拳が入った。
反動で後方へ吹き飛ぶほどであった。
「なっ・・・何故・・・素の状態でそんな力が・・・」
「昔では考える事が出来なかったことをしたんだ」
「・・・大量虐殺による、他力吸収・・・か」
「はは、凄いなぁ流石僕だ」
「私は私だ・・・!一緒に・・・するなッ!」
「どうせお前もこうなるのなら、
みんな死んでルートを正せばいいのさッ!」
「みんなを死なさせずに正す方法も・・・
あったはずだ・・・!私はお前なら、
先に考える筈だ・・・!」
「考えた・・・しかしなぁ・・・
そんなもの・・・ある筈ねぇんだよぉ!」
ジーグの姿が変化した。
その姿は、前回の惨劇の、破壊神を想像させた。
「この姿、見覚えがあるだろぉ?」
「・・・ッ・・・!」
「この姿の力はレミリアとフランドールの、
身体能力を取り込み、
それが自らの潜在能力の吸血鬼の力が合わさり、
成し遂げられた業なんだよぉ!」
「・・・吸血鬼・・・3体分だと・・・!?」
「この姿でも暴走しているんだ・・・が、
もう何も惑わされるものはない!
暴走は暴れる必要性が無くなった為!
変化のみが適用されているのさッ!
これが超完璧生物の吸血鬼・・・!
フハハ・・・怖いだろう・・・?
己の末路がさァ!」
「・・・怖いな・・・けど、怖いのはそれじゃない。
自分がそうなってしまうのに、
恐怖と絶望に恐れているだけだ・・・!
この世に便利に創られている生物なんて、
存在しない・・・!私達はただの人形なんだ!」
「人形が力を持てば指導者にも神にもなれる!
僕は選ばれた姫・・・全てを統べし神だァ!」
「力に惑わされた哀れな幻想を・・・
今ここで終わらせる・・・!」
「自分自身を殺せるかァ?」
「己を捨てる事は何度もしてきた・・・
私達はこの世界に居てはいけないと、
悟った時から決意はある・・・!」
「ならば・・・やってみろ!」
颯花は変異する。
自ら破壊神へと。
おぞましいオーラが包み込む。
颯花は苦しみの表情をしていた。
「おっ・・・?自らに取り込まれるか?」
「・・・くっ・・・こんな筈は・・・!」
背中から翼が生えてきた。
前回の惨劇やジーグと
ほぼ同じ形や構造を成していた。
仮面が割れ、髑髏のような顔があらわになった。
表情が苦しみから憎しみへ変化した。
「ざまあないな・・・自らに取り込まれている!」
「ウ・・・ォオオオオ・・・!」
破壊神と統べし神が対を成した。
「同じ神でも・・・格が違っていてはなぁ・・・!」
破壊神は目視出来ない速度で突撃した。
しかし、それ以上の速度でジーグは
破壊神を叩き潰した。
威力は凄まじく、
暴走状態が解除される程であった。
「弱いなぁ・・・いや、
私が強過ぎるんだろうな・・・
フ・・・ハ・・・ハ・・・フハハ・・・!
我は救世主なり・・・!
この世界を導く者であると!」
「・・・惑わされた哀れな子羊め・・・」
「おお・・・まだ生きていたんだな」
「この程度でやられて・・・たまるかよ・・・!」
「その勢いだ、そのまま現実に絶望していけ」
「絶望なんか・・・しない」
「やかましいな、失せろ」
ジーグは颯花を蹴り飛ばした。
しかし、途中で突然と視界から消失した。
「・・・十六夜 咲夜か・・・まあいい」
「・・・・・・咲夜・・・すまん・・・」
「いいのよ・・・けど、1人で無茶は駄目よ 」
「でも・・・己は己で止める・・・どんな事をしても」
「貴方・・・」
かなり遠くまで来た。
咲夜が颯花を降ろした。
互いはボロボロであった。
「・・・すまん・・・自爆の件」
「大丈夫、直撃は避けられたわ」
「・・・そう・・・ごめんな」
「・・・」
咲夜は立ち上がる。
「・・・紅魔館へ行くのか・・・?」
「貴方はここで休んで・・・それでは危険よ」
「・・・足でまとい・・・なんだろ・・・
ハッキリ言っていい。置いていけ」
「・・・見つからないようにね」
「・・・ああ」
咲夜は紅魔館へ向かった。
「では、終わりだよ、過去の自分クン」
「・・・ちっ・・・やはりか・・・」
ジーグは聞いていた。
姿は通常であった。
「脳天を貫けば、チップが破壊出来る。
人間にとっての死であり、
生物にとって不可避で馴染みのあるもの」
「・・・まずい」
「なんてな・・・あの頃の様に血塗れにして、
腕と脚を切り取ってあげよう」
「 (・・・痛いのはどうでもいい・・・チャンスが
あるのなら・・・!) 」
周囲が血に染まると同時に、
森林に1つの叫び声が響いた。
「・・・ゼィル・・・ごめんなさい・・・
私は・・・前へ行く・・・!」