バネの力/2人の個体:1
それは違った。
バヴンズは自ら腕を引きちぎった。
颯花にもう片方の腕が接近する。
「もらった!」
「・・・」
腕と腕が衝突した。
颯花の腕の内部骨格にヒビが入る音が、
森林に響き渡る。
「腕を潰した・・・このまま殺す!」
「・・・そうかな」
瞬間、バヴンズの腕が粉々になった。
バヴンズの両腕が潰された。
「なっ・・・!」
「所詮量産型の体のお前に、
耐久性なんか・・・あるわけないだろ」
「お前だって量産型だろ!」
「・・・確かに量産型でもあり、耐久性もない。
けどな・・・私には自己回復能力を備わっている。
『贔屓されてる』んだよ」
「殴った直後に回復したのか・・・?!」
「・・・さあな。これも性能差だ。私の嫌いな奴さ」
「まだだ・・・脚がある・・・!」
バヴンズは飛び上がった。
「・・・?空に上がったら蹴る物がないぞ」
「馬鹿め・・・こう使うんだよ!」
バヴンズの脚が切り離され、
胴体を踏み台にして高速で向かってきた。
「この速度・・・耐えられるかな!?」
「・・・耐えるまでもないよ」
「なっ・・・そんな筈はない!」
まっすぐ向かって来る両足は、
かなりの速度があり、防御は不可能だった。
「・・・ゲームやアニメみたいに、
わざわざ当たりに来る敵がいるとでも・・・?」
「・・・な・・・!」
颯花は横に回避した。
両足は颯花の隣を通っていく。
バヴンズの胴体が地面へ落下した。
「・・・相変わらず単純で馬鹿な奴だ」
「・・・ちっ・・・」
「お前から聞き出す事は無い。
その自爆装置を破壊させてもらう」
「・・・最後の希望が!」
颯花はハート型の飾りを取り出し、
それを刺剣に変化させた。
その刺剣が脳天を貫く。
バヴンズの機能が停止した。
「これがレミリアの思いか・・・
確かに、自分の紛い物は気持ち悪いな」
颯花はバヴンズの頭部を軽く蹴り、
道の端に寄せた。
紅魔館へ急ぐ。
「咲夜・・・大丈夫だろうな。
自爆装置の事も言っていれば・・・」
霊夢形態へ移行し、飛行しつつ向かった。
空が曇り始めていた。
「・・・ッ・・・この殺気は・・・」
彼女の真下に1人立っていた人物が居た。
その人物は颯花を見上げている。
「・・・ジーグ・・・我が未来の結末・・・か」
「おはよう・・・いや、こんにちは。
お久しぶりだねぇ・・・ゼィル」
「・・・ゼィルは過去の私だ。
今は桐初 颯花だ」
「そっかー、ま、どうでもいいや。
君も道具になる準備は出来たかい?」
「・・・洗脳されても私は惑わされんぞ」
「洗脳なんてチャチなもんじゃない。
記憶と意識はそのままに、
君をただの殺戮機械にする」
「ほぅ・・・それを私に出来ると?」
「・・・出来るさ、未来は決まっている」
「パラレルワールドってご存知?」
「そんなものなどない」
2人は構える。
8人よりもそっくりな2人は、
まるで双子のようだった。