頭部と十六夜/高機動戦闘:1
咲夜はその頭部へ歩いていった。
「もしあなたがゼィルと同じなら、
首だけでも生きれるんじゃない?」
「・・・そうさ、その通りさ」
リッパーは顔を咲夜へ向けた。
咲夜の手元にナイフが一本、
握られていた。
「ん?どうした?殺らないのか?」
「怖くないの?」
「私達は所詮道具、感情はあるが
ほぼ必要最低限に抑えてある」
「・・・そう。残りの5人を話す気はある?」
「ないね」
「では、さようなら」
「おっと、ゼィルの実の姉妹を殺す気かい?」
「実の姉妹・・・?」
「私達はクローンの姉妹だ。
殺したら彼女は悲しむかもよ?」
「ゼィルは貴方を姉妹とは一言も言ってないし、
殺さないでとも言ってない」
「言ってないだけかもよ?」
「彼女は私に隠し事はしない。
貴方達はただのそっくりさん程度よ」
咲夜はナイフを右脳から刺した。
血は出なかった。
「お互い、あの世で楽しくやろうじゃないか」
「お互い・・・!?」
直後、頭部からアラーム音が流れた。
「自爆なんて・・・!」
「言ったろ?私達はただの『道具』って」
森林に大きな爆音が響いた。
「・・・巫女、今・・・音が」
「・・・大丈夫よ。きっと」
「・・・そうか。私達は彼女を信じて向かうだけか」
「そうなるわね・・・」
瞬間、彼女らの間を、
物体が高速で通り抜けた。
「・・・バヴンズか?」
「・・・おみごと〜」
再びゼィル似の人物が現れた。
手足にバネのようなものが巻かれている。
いや、内蔵してあるのが露出していた。
「それは義手かしら?」
「せーかーい。合ってるよ」
「・・・巫女、行け」
「今度は貴方ね」
「この先にもう一人居たとしても、
紅魔館に近い方がいいはずだよ。
私よりも巫女が先に着いた方がいい」
「・・・分かったわ。貴方も急いで」
「・・・ああ」
巫女は更に進んだ。
バヴンズは追いかけない。
「お久しぶり〜お姉ちゃん」
「・・・お姉ちゃん・・・か。
違うな。ただの姉妹個体だ」
「相変わらず固いね〜
そんなとこもお姉ちゃんらしいわ」
「そんなとこも・・・嫌い・・・何だろ?
お前はそんな奴だ」
「そういうとこも嫌いだよ。
でも、殺す相手に感情なんか要らないわ」
「へぇ・・・あんな能天気だったお前が、
感情をなくせるとは思わんな」
「・・・は?黙れよ」
笑顔で満ち溢れていた彼女の顔は、
みるみる悪魔へ変わっていった。
「感情が顔に出てるぞ。
昔と変わらんな」
「消えろ、マザータイプ」
「・・・消えるのは・・・お前の方だ・・・!」