切り裂き魔と十六夜:1
紅魔館へ戻る最中の事である。
最短距離にある道を歩んでいた。
「急がなくて良いのですか?」
「どうせあいつらなら大丈夫でしょ」
「・・・巫女ならそう言うと思ったわ」
左右に広がる森林が、
終わりが見えないほど続いていた。
道は綺麗に整理されていた。
神社が近いので、巫女がしたのだろう。
「・・・一人目ね」
「・・・そうね」
「・・・リッパー・・・か」
道の端に、一人の人物が居た。
外見は颯花に非常に似ていたが、
近寄ればうっすらと別人物と認識出来る程度
であった。
「・・・我はリッパー。
私はただ命令に従うのみ」
「・・・リッパー・・・ね。
ジャック・ザ・リッパー・・・って事かしら?
同じナイフ使いとしていい戦いが出来そうね」
「急いでないし、
3人で戦ってもいいんじゃない?」
「巫女と同意だ。
無理にリスクを上げない方がいい」
黒いコートを羽織った颯花に似た人物、
リッパーの前で3人が話す。
「・・・なら、いい情報を教えようか 」
その言葉に霊夢が言い返す。
「・・・私達にとって悪い情報でしょ」
「まぁそうなるな。
紅魔館に5人が向かっている。
そこにいる人物の数では不利だろう」
「・・・咲夜。こいつを頼む」
「・・・分かったわ、お願い颯花、霊夢」
「・・・ああ」
「・・・任せなさいな」
2人はリッパーを通り過ぎ、
更に進んでいく。
リッパーは何もしなかった。
「あら、行かせるのね」
「この先に2人いる。
私はただ1人の足止め」
「・・・そう」
リッパーは道の中央へ移動した。
「・・・始めようか」
「私に勝てるとでも?」
咲夜は能力を発動した。
咲夜の時間は、咲夜以外の者を止める。
「・・・やはり、この能力はずるいわね」
咲夜は八本ナイフを構え、
それらを投げていく。
リッパーは動かない。
「・・・その程度か」
「・・・ッ!?」
リッパーは動かない。
しかし、それはただ動かないだけであった。
つま先立ちで微塵とも動かないでいた。
「ナイフはこう使う物だ」
リッパーが投げたナイフは、
2人の間に木の枝を落下させた。
多量の木の葉が降り落ちていく。
その木の葉全てに、ナイフが刺さる。
木の葉で視界が遮られていた。
「・・・けど、距離があるなら・・・! 」
咲夜は、横に回避する。
しかし、リッパーは隙を見逃さなかった。
リッパーは咲夜の足にアンカーを引っ掛け、
体勢を崩させた。
すかさず高く飛び上がり、
高所から落下しつつ攻撃する。
「戦闘方法がまるで似ている・・・」
リッパーは黒いコートを咲夜へ投げた。
2人の状況は互いに確認出来ない。
黒いコートから多数のナイフが刺さり、
その姿を見せた。
咲夜はそれを回避する。
しかし、回避した方向に木が倒れて来た。
その木は咲夜を上から押さえた。
「・・・」
「どうした?コピー程度に負けるのか?」
咲夜は動けない。
そこにナイフが投げられていく。
一つずつ的確に弾いていく。
「このまま持久戦だと負けるぞ?」
「・・・」
「・・・後ろからなら弾けないだろう」
「・・・ッ!」
咲夜の後方へ回り込んだリッパーは、
再びナイフを構えた。
しかし、彼女は投げなかった。
「その綺麗な脚を切り落としてコレクション
にでもしようかしら」
「・・・嫌な趣味ね」
「人は多種多様だよ。
文句を言われる筋合いはないよ」
歩き寄る。
咲夜の足下まで近付いた。
「さあて、どんな声をだすのかなぁ?」
「・・・」
瞬間、咲夜の上の木が綺麗に2つに切れ、
咲夜の脚はリッパーの腹部に入った。
しかし、浅く入りダメージにはならなかった。
咲夜はリッパーから距離を取る。
「やっぱり戦闘は駆け引きだよな。
騙し合いとか色々さ」
「・・・余裕ね」
「余裕よ」
「・・・」
2人は再びナイフを構えた。
しかし、リッパーのナイフは彼女の周囲に
取り付くように空を舞った。
「ナイフビットだ。
これは君にはないだろう?」
「・・・厄介ね」
ナイフビットが順序よく咲夜へ向かっていく。
普通に投げては絶対に出来ない軌道を
していた。
「・・・厄介だけど、そんな三流みたいな技に、
容易く負ける私じゃないわ」
「強がりも今の内だよ」