仮面の下の偽善:2
「全く・・・何を考えてるのかしら・・・?」
「・・・」
状況は、同じ能力使いである事以外、
何も変わらない。
「能力を先に使えば負ける。
素の状態で戦わないといけないのね・・・」
「・・・」
「・・・反応無し・・・か・・・」
「・・・」
再度互いが構える。
ナイフの数も同じである。
他人が見れば、パフォーマンスと
思ってしまう程である。
互いに駆け寄り、接近する。
ナイフを投げず、切り付ける様に使った。
その動作も、同じであった。
「・・・力量も同じ・・・ね・・・」
「・・・」
互いが後方へ距離を取る。
その距離も同じである。
「・・・漫才やってるんじゃないのよ?」
「・・・」
「無言のまま・・・ね」
彼女は答えない。
しかし、動きから見れば、
漫才でも遊びでもなく、
そのまま自分のスタイルが咲夜と
同じのように感じ取れた。
「(全く同じなら、いつもと違う事をすれば・・・)」
「・・・」
咲夜は、多量のナイフを投げた。
仮面は時を止めず避ける。
「(このまま避けさせれば・・・!)」
「・・・」
地道に避けていく仮面。
彼女は勝算を実行していた、その時、
「ッ・・・!・・・後ろッ!?」
後ろから多量のナイフが向かってきた。
いや、仮面へ戻っていく。
柄に細い糸が付いていた。
咄嗟に回避した彼女は態勢を崩した。
「(危なかったわ・・・私がやろうとした事を、
先にやっていたなんて・・・)」
仮面は位置を動かない。
咲夜の背後のナイフは全て無くなっている。
「(・・・彼女に通用する事・・・ね・・・)」
咲夜は再び多量のナイフを投げる。
先程と同じように、仮面が回避していく。
その時が来るまで、投げ続けた。
「(・・・まずい・・・体力が・・・)」
投げる速度が落ちていく。
遂には止まってしまった。
「・・・全部避けるなんて・・・」
「・・・」
仮面は何もしない。
相変わらずである。
「・・・もう一回・・・!」
「・・・」
咲夜は再度多量のナイフを投げる。
投げ続ける。
飛んでいく方向が安定せず、
仮面が避けずとも、当たらない状態だった。
「(・・・その時はいつ来るか・・・?
分からないわ・・・けど、これしか思いつかない)」
「・・・」
避けられている。
ずっとその状態だった。
しかし、その時、
木々の間から僅かに差し込む光が、
仮面の瞳へ集中的に反射した。
僅かながらも閃光弾の様になった。
「(来た・・・!)」
仮面の体勢が崩れる。
そこを全力で向かう咲夜。
咲夜がナイフを一本手に取り、
仮面へ叩きつけた。
しかし、仮面はヒビが入るのみであった。
仮面はその手を掴みかかる。
「これで・・・どう!」
もう一つの手で、二つ目のナイフを
仮面に叩きつけた。
多量のヒビが更に入る。
仮面の動きが止まった。
「・・・終わった・・・のかしら?」
彼女は一旦距離を取ったが、
何も動きは無かった。
彼女は再度近寄る。
そっと仮面を外す。
よく見れば肌色が悪かった。
仮面の下にあったそれは、
咲夜を驚愕させた。
「・・・一体・・・どうして・・・?
この人物は・・・どう見ても・・・!?」
彼女は驚き続ける。
自分の予想を上回る出来事に、
混乱を隠せないでいた。