向かう先へ/仮面の下の偽善:1
「・・・この地図、ざっくりだわ。
方向しか分からないじゃない・・・」
「・・・ですね・・・」
「ここらへんらしいけど・・・」
「手分けして探しましょうか?」
「効率はいいけど、相手2人だと・・・ねぇ」
「下に単独行動が多い・・・と書いてありますが」
「おおっ・・・じゃあ心配ないわね。
私は向こうへ行ってみるわ」
「では私は向こうへ」
「んじゃあまた」
2人はそれぞれの道へ進む。
「・・・相変わらず・・・暗いわ・・・」
咲夜が森を進む。
時刻は昼、木々から差し込む光が、
時々程度に明るく照らすだけで、
夜の様に暗かった。
その森を突き進む。
その先に、少し広い草原があった。
そこのど真ん中に居座るのは。
彼女、十六夜 咲夜と同一の体型、服装。
人形に同じ服装を着せたよりも、
それ以上に似過ぎていた。
「人を真似るなんて、能力コピーよりも
嫌われる事をするわね」
「・・・」
唯一本人と違う所といえば、
傷が入った仮面を付けていた。
「あら?流石に顔は違うのね。
だから隠してる、と」
「・・・」
「なにか話しなさいな。会話が進まないわ」
「・・・」
「・・・なら、無理矢理にでも正体を明かさせる」
互いに構えた。
ポーズが似過ぎている。
構えているナイフの本数も同一であった。
「褒めてあげるわ、この私を、
完璧に真似た事を・・・!」
「・・・」
咲夜は時止めを使用した。
周囲の音が消える。
仮面も止まった。
「やはり能力は同じではないようね・・・!」
手持ちだけのナイフを投げた。
時止めが出来なければ、
防ぎようがないと判断したからであった。
投げた8本は、動けば全て頭部に命中する。
「当たれば顔は確認出来なくなるけど・・・
私には正体などどうでも良いわ」
時は動きだそうとしていた。その時だった。
「・・・うっ・・・動けない・・・!?」
あの時と同じだった。
全く動けない。
仮面は仮面の下で笑っているように、
咲夜は感じた。
「・・・」
「まずいわ・・・どうしましょう・・・」
3秒経過、何もしてこない。
場所を移動してナイフを避けただけであった。
「・・・何故何もしてこない・・・?」
「・・・」
時は動き出す。
ナイフは明後日の方向へ向かう。
「・・・考えている事がさっぱりだわ・・・」
「・・・」
仮面は無言のままである。
どういう人物なのか、
何を考えているのか、
全く分からないでいた。
「・・・ (不思議だわ、自分と戦ってるみたい)」
2人の戦いは続く。