赤と黒:1
「あらあら?退場したのかしら?」
「私が居るわ。彼女には休んでいてもらう」
「あなたじゃあ……ねぇ……?」
「…」
その後、2人の会話が進んでいく。
彼女達はその間、1度も目を離すことはなかった。
その2人がいる場所へ、1つの足音が響く。
「おい!霊夢!」
「魔理沙!遅いわよ!」
「うっさい!こっちだって大変だったんだよ!」
「そんなんこと知らない!早く手伝いなさい!」
「後で覚えてろよ!……ったく」
魔理沙がその場に駆けつけたおかげで、
少しずつ勝ち目が見えるようになった。
しかし、2人に人数が戻っただけであり、
戦力になるのかと疑問にさえ思っている。
その魔理沙の事をレミリアは馬鹿にする。
「…あなたは戦力になってるかしら?」
「うっさい!…私だってやれる、戦える!
行くぞ霊夢!私に着いて来い!」
「何よ!あなたが私に着いて来るのよ!」
着いてくるように言った魔理沙へ反抗するように、
霊夢も自らに着いてくるように言い放つ。
そのグダグダな会話をしつつ、
2人は戦う構えをして突撃していった。
「だったら……ハンデをくれてあげるわ…。
咲夜の能力……時止めは使わないであげる」
「よっしゃ…勝ったぜ(確信)」
「さあ…?どうかしらね?」
「行くわよ魔理沙!私に着いて来なさい!」
「もういい分かったぜ!仕方ない私が援護する!」
そのままレミリアへと2人が駆け走る。
その向かう前方から拒むように妨害を仕掛けた。
鮮やかな弾幕目の前を覆い込みが展開される。
「魔理沙お願い!」
「…またコイツにお世話になるぜ!」
魔理沙は瓶を取り出し弾幕へと投げ込んだ。
そして中央で爆発し、花火のように弾幕が広がり、目の前の弾幕を相殺していった。
「なぶしっ…!使うなら何か言いなさいよ!」
「すまんなぁ霊夢、考えてなかった」
「…チッ」
「巫女が舌打ちした!また巫女の評価下がるぜ」
「喋ってると寝首を狩られるわよ!」
「へいへい…っと」
魔理沙がそれを使う事を教えなかった事は、
おそらくわざとであっただろう。
仲がいいのか悪いのかがよく分からない。
その目を隠した霊夢の隙を突き、
一足先に魔理沙はレミリアへと接近する。
「まずは……魔法使いから始末するわ」
「だったら…やってみろ!」
「ひとりで戦わないで!死ぬ気なの!?」
「死ぬ訳ないだろ!主人公補正があるだろ!」
「あんたねぇ…!!」
「さあ来い!ここがお前の死に場…」
「もらったわ!」
台詞を言う前に、被せるように言い放つ。
そしてレミリアの拳が魔理沙へと真っ直ぐ向かう。
しかし、彼女はそれを防ごうともしない。
「それはこっちの台詞だ!」
魔理沙はヘソのある場所の服の下に、
ミニ八卦炉を隠していた。
そこから眩い輝きが放たれた。
「くらえ!ヘソスパークッ!!
超高火力の閃光が!お前の身体を削り取る!」
「ダサッやめたらその技!」
「うっせえ!当たりゃいいんだよ!」
その放たれた極太の輝きがレミリアを包み込む。
その光は紅魔館の外へ突き抜けた。
その輝きが消え、舞った土煙が引いた。
しかしそこには何事もないように、
レミリアが余裕な態度で立っていた。
「…この程度か?」
「なっ紅魔館…の吸血鬼は化け物か!?」
明らかに全然効いていなかった。
直撃の筈なのだが、威力も充分あったはずだ。
その状況に固まった魔理沙の首を掴み、
いともたやすく持ち上げた。
「ぐ…!」
持ち上げたもう片方の腕で腹部を連続で殴る。
彼女を殴る度に鈍い音が響いている。
それを止めさせようと霊夢は突撃する。
「…やめなさいッ!」
殴りかかった霊夢のお祓い棒は、
高く上げられた脚で軽く止められた。
その力はどこから湧いてくるのかが、
霊夢にとっていちばん不思議だった。
「所詮この程度だわ、私に勝つことなど不可能!」
「調子に乗って!」
「調子に乗れるほど余裕があるのよ!」
魔理沙は先程より強く殴られ、
霊夢はそのまま蹴り飛ばされ、
互いの背中の方向へと飛ばされた。
「…チ……チートだぜ…こいつぁ…」
「チート……?違うわ…これは実力よ。
なるべくしてなったてん結果よ」
「まだ勝敗なんて決まってないわ……。
そんな余裕だけで…やはり傲慢の塊ね、あなた!」
「……いくらでも言えばいいわ。
言ったって戦況が変わるとでも?」
「あなたの頭の中のお花畑では…
言いたいことを言っては駄目なの!?」
「…そうなのかもしれないわね」
「…フッ」
「…フフフ、ナイスだ霊夢」
何故か2人は笑い始めた。
突然笑ったことに不気味さを感じる。
しかし、その理由は分かるはずもなく、
レミリアは未だに分かっていなかった。
しかし。その異変にはすぐ気付いた。
脚に霊符の結界が張り付き、動きを止めている。
もがいても結界は破れない。
その結界が上へどんどん彼女を包み込み、
遂には全身の動きを止めさせた。
「あんたの足下に、結界を張ったのよ。
殴られて壊れるなら、殴らせなければいい」
「…ッ!」
「さあ、どう終わらせましょうか?」
「高火力でぶっ飛ばすぜ」
「さっき効かなかったじゃない」
「あれは最大出力じゃないから…
手から魔力供給の方が威力が上がるんだよ」
「あっそ、お好きにどーぞ。
(あんな腹パンされてたし、ここは譲るかな)」
「そんじゃいくぜ!
ミニ八卦炉、行くぞ!最大出力……!」
ミニ八卦炉に次第に光が集まっていく。
明らかに先ほどより輝いている。
まともに喰らえば今度こそ消し飛ぶだろう。
レミリアは冷や汗をかいている。
「やめろ…!」
「いいや、だめだね」
レミリアはその時、時を止めた。
しかし体が動かせず、結界を破壊出来ない。
そのまま6秒が経過し、無駄となった。
時を止めたことに、霊夢が気付いた。
「ハンデじゃなかったの?」
「ッ……黙れ巫女ッ!」
「今頃、遅いぜ!くらえ!
魔砲『ファイナルスパーク』!」
「やめろ!ふざけるなッ!この私がッ!
下等生物ごときが思い上がらないで!
やめろ…やめろ…やめろ……やめろッ!
……この……この私をッ……!
この私がぁああああああああああ!!!!!!」
やがて放たれた巨大な閃光が、
レミリアの姿を完全にを包み込んだ。