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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~始点回帰編~
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二つの人形劇

「へぇ…わざわざやられに来たのか!」

「魔理沙やめてっ!」


真上に居る紫目掛けてミニ八卦炉を掲げ、

今にも撃ちそうな魔理沙を霊夢は前に立ち、

彼女の射線を塞いで身で止めようとしていた。

心境はともかく表情さえもここまでするのかと、

こんな相手に自分の身を捨てる覚悟さえも、

持ってしまっているのかと全身が青ざめていた。


「やめてくれよ…そんなこと…!

どけよ!それじゃあそいつを撃てないだろ!」

「敵なら構わずやるのは間違ってる…!

どかない!考え直して!お願い魔理沙!」


紫に背を向けたまま霊夢は魔理沙に立ち塞がり、

彼女が何もしないという前提で行動していた。

もしも紫の立ち位置が事情を知らない者であれば、

間違いなく霊夢は相手に殺されていただろう。

そんな二人のやり取りを紫は見下ろし嘲笑った。

二人が抱えている苦悩を微塵にも考えもせず、

愚かで醜い、惨めだと心の底から思っていた。


「…そいつはお前の行動に笑っているんだぞ…」

「それは理由が分からないせいなのよ…そう…

ちゃんと思いを伝えれば分かってくれるはず!」

「それはお前が思っているエゴに過ぎない!

独善的な理想は他人には通用なんかしない!」


いつまでも続きそうな二人の口論は、

紫が鳴らした拍手一回で止まってしまった。

その場にいる全員が紫の方を見つめ硬直した。

それは恐怖ではなくただ話し始めるのかと、

全員が紫の話を聞こうと静まっただけだが、

騒がしかったのが一瞬で静まり返ったせいで、

その周辺の雰囲気が凍り付いてしまい、

心境が連動して結局は恐怖を感じていた。


「まあさっきの問題はすぐに答えは求めない。

それよりほかに…私にはやる事があるのよ」

「…どうにも嫌な予感しかないぜ」

「でも…もう終わったわよ。後ろを見なさい」


紫がそう言うと全員が後ろを振り向いた。

そこには相変わらずの不気味な絶壁がある、

しかし変化したのは風景ではなかった。

後ろを付いてきていた鈴仙と永琳が姿を消し、

辺りを見渡しても気配すら感じなかった。

これは紫が隙間でどこかに連れ去ったことを、

周囲の静けさが証明しているようだった。


「言ったわよね…殺すと思えば殺すと…」

「…嘘でしょ…ほら冗談が好きだったし…!」

「…さあ?どうでしょう」

「霊夢…殺せばこうはならないんだよ。

けど今回は殺してないぜ。こいつの殺し方は…

死体は隠さず放置する野郎だからな…」


魔理沙はその時無意識でありながら遠回しに、

そして不可能だと気づいてくれるようにと、

ずっと前の藍の殺され方を発言していた。

その無意識は空しくも霊夢に届くこともなく、

彼女はそれに言葉を返すこともなかった。


「彼女達は壁を壊す技術がある。

だからここで黙っていてくれないとね…

後々だけど、私は困るのよね」

「自分勝手なことを…」

「さっき自分勝手に理想を押しつけ合ってた、

あなたが言えることじゃないわよ」

「…少なくともお前よりはマシだぜ」


いつまでも紫に背後を見せ続ける霊夢に、

さとりはそばに近寄って霊夢の手を取り、

紫から抵抗はないが少しだけ無理矢理離した。

いくら紫の攻撃する気は感じていないものの、

これ以上は険悪な関係になりかねないと思い、

そのような行動を取ったのだった。

魔理沙は射線が空き再びミニ八卦炉を構え、

紫の方へ眩い閃光を放ってしまった。

霊夢は咄嗟に動けず止められなかったが、

後ろからアリスが複数の人形で腕ごと動かし、

射線を明後日の方向へ変えたことで、

今は何とか紫にその攻撃は当たらなかった。

しかし、それに無反応の魔理沙ではなかった。


「何をするんだアリス!お前も…

お前もこいつと話すと考えているのか!?」

「違うわ魔理沙、どちらかというと、

あなたのほうの意見になら賛同できる」

「ならどうして…!」

「けれど今はその時じゃないわ。

もしも今戦い始めれば私達は勝てない。

早苗と霊夢、魔理沙が抱えている子を

戦っている最中に守りきれずさらわれて、

今以上に人質を増やされるだけよ。

あなたはその時責任が取れるの?」

「…」


早苗と霊夢はともかく自身が抱えている、

ボロボロな状態のチルノ達の存在を忘れ、

失うかもしれないことをしようとしていた。

霊夢の意見には賛同はまだできないが、

アリスの言っていることは間違ってないと、

そう思い、彼女は武器を持つ力を弱めた。

アリスはそっと人形が掴む腕を離させた。

魔理沙はそれで自由になった腕を降ろすが、

その手はミニ八卦炉を離すことはなかった。

そう言われても敵を前にしているので、

当然武器を捨てるようなことはできない。


「正しい選択ね」

「用は済んだでしょう…

とっとと前から姿を消しなさい…!」

「あら…まともなこと思ったけど、

戦う気のない敵を煽るのは愚策よ?」

「あなたの顔はもう見たくない。

これ以上見てたら手が出てしまいそうだわ。

さっさと身を引いてくれないかしら?」

「人の話は聞くものよ…まあいいわ。

じゃあね、小生意気な人形屋さん…」

「…(あなたの人形劇よりは遥かにマシよ)」

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