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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~始点回帰編~
202/245

赤と黒の苦悩/継ぎ接ぎ

「そうさ、もうさせる訳にはいかない。

だから殺してでも止めなきゃならない」

「魔理沙待って…それは違っ…!」

「殺さなければ…同じ過ちを繰り返すだけだ」


魔理沙は霊夢へ向いてそう言い放った。

霊夢は自分が言った言葉の意味はそれと違う、

話せば分かり合えるはずだと言いかけたが、

それを言わせないように話し続けた。

もちろん霊夢は魔理沙の言っていることを、

完全に意味が間違っているとは思わないが、

全部殺して正当化するのは野蛮な答えだと、

まるで巫女のような意見が心の中にあった。


「お前は他人に対して甘すぎるんだよ。

あんな奴が強大な力を手にして、何をした?

すさんでしまった心に、武器は危険なんだ」

「例え大きな罪を背負ってしまっても…

誰だっていつか清算できるはずだわ…!」

「じゃあ…本人が拒めばどうするんだ!」

「魔理沙っだから私は…!」


それに霊夢は言い返すことはできなかった。

彼女の中では分かり合えないはずはないと、

拒まれるのは微塵にも考えていなかったからだ。

それは前からも今も変わらずそう思っていて、

それ以外の可能性は絶対ないと信じ込んでいた。

霊夢の中の優しさが今までの場合を振り返り、

本当に悪い奴はいないと考えていたからだった。


「罪だと自覚してない奴と分かり合うより、

罪だと知りながら最後まで突き進む奴の方が、

どう考えたって可能性なんかないだろ!」

「誰だってちゃんと話し合えるはずだから!

できないなんてそれは絶対なんかじゃない!」


霊夢がそう叫ぶと、周囲に沈黙が漂った。

魔理沙も霊夢の言いたいことを理解している。

ただそれがどんなに絶望的な可能性なのか、

相手に騙されて悲しんだり利用されたりして、

戦う以上に傷ついてしまうことに、

霊夢がそんな目に遭ってほしくないと思い、

考え直してほしいからそう話していた。

互いの意見ははっきりと互いに伝わっている。

性格の違いなのか、それとも別の何かか。

自分勝手な意見の押し付け合いがいけないのか。

理由は霊夢にも魔理沙にも分からない。

ただ互いにいつかは分かってくれるはずだと、

昔から一緒に居たから想える信頼感が、

互いの意見の押し付けの強さを増していた。


「お二人とも、そこからは向こうで」

「…(どうして分かってくれないの…

相手を殺すことだけ考えてたら…

そんなの殺人鬼と変わらないじゃない…)」

「…(そんなことを願い…思い続けたら…

いつか自身の身を滅ぼしちまうって…

人類全てがお前みたいに優しくはないのに…)」

「…」


相手の思っていることは全て聞こえてくる。

その力を持つさとりは気難しい顔をしていた。

その顔は実に分かりやすい表情のようで、

逆に誰かが彼女に聞きづらい表情であった。

互いの思っている事は互いに伝わっているので、

さとりはそれらを伝える事は必要なかった。

それは逆にこの状況では彼女は何もできない、

それでもどこか気持ちが引っかかっていて、

何かできる事はないのか、そう考えていた。

伝えられるべきことは全て伝わっている、

その上で霊夢、魔理沙の中に生まれた思いは、

同じことを二度伝えても変わる訳もない。


「…今は争ってる場合じゃない…よな。

…私はこの世界の地図を前に見た事がある。

このずっと先に古い集落があるらしいな」

「ああ…あそこですか」

「ん、知ってるのなら案内を頼むうさ耳」

「鈴仙・優曇華院・イナバ、名前です」

「長いな…まあいいか」

「いや…あそこは…ってうわっ!?」

「っ…何だ…!」


鈴仙が何かを言うのを躊躇ったのと同時に、

背中から物凄い風圧に襲われ吹き飛んだ。

彼女が集団の最後尾だったので無事だったが、

そこには天高く続く不気味な壁が出現していた。

それはにとり達を見下ろす四角い空を作り出し、

その後も悲惨な現状に遭わせた原因そのもの、

この壁はあの鉄の檻のような結界であった。


「八雲紫の仕業か…だけど何か違う…

けど私じゃあ少ししか感じられない…

なぁ霊夢、こいつを見てどう思う?」

「そうね魔理沙…そうらしいわね…

この結界からは紫の意思…思考を感じない…

もっと別の何か…大勢の人々の…想い…?」

「何を言い出してるんですかお二人とも、

ただの大きな結界じゃないですか」


同じような結界を何度見たにも変わらず、

まるで初見の人が勝手に思った妄想のような、

奇妙な物言いを言ったのに鈴仙は首を傾げた。

しかし霊夢と魔理沙が感じた何かは本物で、

自分と同じような力なら感じられる霊夢は、

相変わらずだが今回は魔理沙も感じられるほど、

その力は異常に大きなものであった。


「結界は結界なのよ…そう…けどれは別物…

そこの永琳って人物と紫が使ってた、

気力を奪って封じ込むほうのじゃないわ」

「…流石よ霊夢。これプレゼント」

「っ…この声は…」


霊夢は声の聞こえた方向を見上げたが、

そこは上から何かが落ちてきている最中で、

そのまま霊夢の顔に勢い良く衝突した。

反動で体勢を崩し少し高度が下がるも、

彼女はそれを受け止め、体勢を立て直した。

そして、霊夢は受け止めたそれを見た途端、

とても凄く、何かが不快な感情に襲われた。

それは姿や感じるものが颯花のはずなのに、

桐柄の気や何かが複雑に混ざったようで、

今の所霊夢の中では判別が不可能だった。


「これは…颯花……なの…?

姿形は確かにそのままなのに何か違う…

颯花のはずなのに…桐柄も感じる…」

「さあ…二つ目の問題よ霊夢…。

簡単な問題、その子はどっちでしょう?」

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