悪魔と悪夢:2
「(時を止めている…私にはそう感じた。
もともと彼女自身に隙が無いのに、
時を止める事が出来るようになるなんて、
一体どうすればいいの……!)」
彼女が自分がどうすればいいか考えている時、
再び時は止まった感覚を感じた。
そして彼女の視界いっぱいに、
突然とレミリアの顔がまんべんなく映る。
「所詮、巫女はこの程度よ」
「ちっ…いい気にならないで…!」
霊夢は目の前にお祓い棒を振り下ろす。
しかし片手で受け止められてしまう。
そのレミリアの片手の握力は相当なものであると、
そう思ったのと同時に更に恐怖を感じた。
「ねぇ…この距離で能力を発動すれば、
そのおよそ6秒で色々出来るわね…フフッ」
「(不味い…)させないッ!」
霊夢は思い切りレミリアの顔を蹴った。
しかし、びくともしていないままで、
相変わらずお祓い棒を掴まれている。
「フフフ…終わりよ、巫女」
「……ッ!?」
「能力を発動するわ!」
そしてレミリアの模倣した、
咲夜の能力がその状況のまま発動された。
しかし、その時異変が起きた。
止まった世界で、2人共動けていた。
お互いに困惑した表情を浮かべている。
「何よこれ…聞いてないわ……!」
「… (どうやら、発動した相手に触れている者も、
同じ効果を受けるってことね…たぶん)」
「…何が起きているのよ…!?」
「いましかない…!」
霊夢が空いている左腕を真上に掲げたと同時に、
レミリアの周囲に複数霊符が次々と展開される。
「隙を作ったあなたの負けよ!
この霊力全て……食らいなさい!」
その霊符が順番良くレミリアに衝突する。
そして彼女の手はお祓い棒を離したおかげで、
霊夢は距離を離すことが出来たが、
やたら身体が何故か動きづらい。
レミリアの周囲はかなりの爆風で覆われた。
「やった…?」
霊夢はその立ち込める煙の方を見つめる。
しかし、その煙からレミリアが姿を現し、
なんの痛みも感じてないように歩み寄ってきた。
「…相変わらずの無傷ね」
「少し痛かった気がするわ…けど、
こんな程度じゃあねぇ…」
「…」
だんだん互いの距離が短くなっていく。
そしてレミリアは能力を再使用しようとしている。
それを止めるために霊夢は駆け走る。
「体に触られなければ問題ない!
意識のないまま殴り殺してあげるわ!」
「まずい!」
「レミリア…!」
「…っ!?」
レミリアはいきなり背後を取られた。
不意に彼女は後ろへ振り向くと、
そこには何故か颯花がいた。
「巫女!咲夜は手当てしておいた。
傷口は深かったが、紫色の人物が、
何故か治してくれた。命に別状はないよ」
「でかしたわ…ってかいつの間に」
「今はレミリアに集中しろ!
下手すれば…みんな死ぬ!」
「…私を甘く見ないでよね!賽銭箱の破壊神!」
「いつまで喋っているつもり?」
「ッ!」
霊夢と颯花の間に居続けるレミリア。
状況は挟み撃ちをされたようになっている。
彼女はその後ろを向いたまま、
颯花の能力のことを話し出す。
「このエセ吸血鬼、貴方もコピーね。
どうせ完成型じゃないだろうけど」
「…ああ、完成型じゃない。けど、
時系列的になら君が先に付けられている。
恐らくだがこれは…量産型だ。
劣化型は完全品より後には作られない」
「私から見れば、量産型も劣化型も、
完成型からみればどっちも同じね」
「…そうかな?」
いつの間にか時が止まっていた。
証拠に、霊夢が動いていない。
しかし、同じ能力同士互いに止まった世界で、
意識を保っている。
「時を止められない巫女など敵ではない」
「…そうかな。私が時を止められるとして、
ずっと巫女に触れていさせれば…どうなる?」
「…抜け目のない奴」
レミリアは歩き、大きな玉座に居座る。
攻撃も何もせず、再び時が動き出した。
「…玉座に座るなんて、
相手を見くびりすぎじゃない?」
「…でもね、相手がねぇ……」
「…巫女は強い。私の勘が言っている。
後で痛い目に遭うぞ…覚えときな」
「あー怖い怖い」
「…」
その余裕な態度にむかついてはいたが、
颯花1人で倒せる相手ではない。
とりあえず霊夢と合流し、話し合う。
「巫女。触れていれば…時止め中でも動ける」
「分かってる、能力を利用させてもらうわよ」
2人は二人三脚をするような状態で、
そのままレミリアのもとへ歩み寄ろうとするが、
二人共同じことを思っていた。
「…」
「…」
「動きづらいわね…」
「だったら…動ける間は2人で戦う。
けど、止まっている時は私に任せて。
止まった6秒を凌いでみせる」
「…ええ、頼んだわよ」
「…任せて」
「作戦会議は終わったかしら?」
「……ああ、誰も殺さず、皆を助ける…!」