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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
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直感と閃き

あれほど原型を保っていた建造物は殆ど崩れていて、

所々の場所で火事になっていて酸素が薄く感じ、

かろうじて残っていた建造物の2階に潜んでいる。

義体への激しい負担のせいで全く動く事が出来ず、

この状態で戦闘でも行えば逃れる事も出来ない。

破損したヘルメットから伸びていた金髪は既に短く、

何かの拍子に切れた或いは燃えてしまったのだろう。

いくら義体だとしても疲れない筈もなく、

義体精神共に既に限界にまで達してしまっている。


「…せめて何かきっかけを…流石に無いか」

「どこに隠れたの…ねぇ…?」


建造物の向こう側の通路から相手の声が聞こえる。

もう相手にも分かっているのだろう、

その状態では遠くへ逃げられるはずもないだろうと。

今はどうにか隠れて手段を考える事しか出来ない。

ここまで悔しむほど痛めつけられているのに、

未だにあの姿を斬りつける事に躊躇っている。

どうせ赤の他人、とっとと斬り捨てればいいものを、

私はいつまでも無意味に悩んでしまっている。


「(…風圧結界も故障…か。逃げ切れるのか…?)」

「すぐ近くに居るんでしょう?出て来なさい」

「…」

「もう晴れを待っても意味無いわよ?

だって痛みさえなかったんだから…不思議よね」

「何っ…」

「仕方ないわね…」


確かにこの吸血鬼に日光を直撃させたはずだ。

そのはずなのに彼女は全く痛みを感じていない。

そして日光が当たった部分にも変化がない。

失明しているようにも全く見えない。

直後に声のする方向からとても大きな崩れる音が、

静けさが漂う閉ざされた世界全体に響いている。

どうやらここにある建造物全てを壊すつもりらしい。

ひとつひとつ、たった一撃、軽く殴った程度で、

4-5階ほどの頑丈そうな建造物を破壊している。

そして次々破壊され、ついに目の前から声がする。


「次はここね…」

「(…もう隠れ切れないか…クソッ…)」


崩れ始める寸前に建造物の2階から身を投げる。

そして地面のコンクリートに義体をぶつかるも、

相当な負荷が掛かったが故障の心配は要らなかった。

しかし、とうとう相手に見つかってしまった。


「…さっさと出て来て殺されていればいいのに」

「少なくともお前には殺されたくはないね…」

「その言い方だと殺されたいみたいに聞こえるわよ」

「…いつかはケジメで死ぬつもりだよ…。

でもまだまだやってない事が沢山あるんでね…!」


そう言った颯花に向けて拳を振りかざす。

優しく振りかざしただけの拳から異常な突風が吹き、

颯花はそれに体勢を崩し、耐える為に膝をつく。

相手はまるで戦う度に実力が増している。

逆に最初がまるで自身の身体に慣れていないような、

そんなように颯花は戦って相手から感じられた。


それにどこからともなく違和感を感じた。

戦い慣れしたような戦い方は確かにやっていた。

でもどこかぎこちない身体の動かし方をしていた。

まるで身体が突然変化してしまったかのように。


「(…八雲 紫と桐柄の変化と同じ…か…?)」


確か八雲 紫は首を切り落とし生成した身体と繋げ、

何不自由なく新しい身体と同調成功し動けていた。

その元々の首さえも死の灰の性質へ変化している。

つまり身体に接触した身体の一部は同じ物質になり、

そしてこの相手が傀儡を喰らっていたとすれば、

死の灰が身体に触れ、同じ物質へ変化している筈だ。

コンビニの食糧が無くなっていたのは気になるが、

ここから一体も居なくなった傀儡も気になっている。


「…つまり、殺さなければ斬れる筈だ…

直ってくれるのなら…例え姿が咲夜でも…!」


未だに目の前の敵の姿に躊躇いを感じていて、

手足を斬り落とし達磨にするのは流石に気が引ける。

今まで死の灰の身体の相手を何度も相手してきたが、

切られた部分が再生する相手としない相手も居た。

どちらも頭部か脳を破壊されれば死ぬのは同じだが、

八雲 紫の場合だが傷は時間が掛かっていたが、

それでも私と同じ自然修復が可能であった。

このまま殺されるのも本人に対して失礼だろう。

咲夜が私にやろうとしていた首だけ残して生かす。

もう何度も彼女の死に顔を拝むのは後免だ。

残っている片腕でしっかりと輝く剣を手に持つ。

先ほど久しぶりに見た太陽光よりもなぶしいほど、

この剣は辺りを照らし暗闇を退け輝いている。


「…剣を手に取るのが遅いんじゃないの?」

「まだ負けてないから遅くない。

少なくとも私はそう思うが…どう思う?」

「どちらにせよ…無駄って事よ!」


スカーレットは颯花へと真っ直ぐ突撃した。

10mほどの距離を一秒も掛からず颯花へ迫った。

しかし、彼女はその間の僅かな瞬間に体勢を変え、

殴りかかった突撃は瞬間に飛び蹴りへ変化した。

まともな人間では目視の判断は不可能に近い。

やがてその強烈な飛び蹴りは颯花の額に命中し、

破損していたヘルメットは粉々に空高く宙を舞った。


「ふふ…終わった」

「…」


ヘルメットはそのまま重力に引かれ地面に落ちた。

事が終わり、時が静止したように止まった2人は、

ヘルメットが落ちたと同時に再び動き始めた。

時が動き始めた最初の変化、それは脚が消えていた。

その脚は颯花のボロボロの義体のものではなく、

血も吹き出さず、傀儡と似たような人形の脚。

その脚が、ヘルメットの隣に寄り添うように落ちた。


「なっ……この速度に着いてこれたっていうの…!」

「いや違うね…私は勘がいいからな。

名前で呼ぶとするのなら…勘が鋭い程度の能力だ。

優れていても、ただ単純に鋭い程度って事だ」

「なっ…勘だけで…予測だけで動きを…!」

「だが…それにも限界が有るという事もな」


ヘルメットは義体を動かす為には重要なものだ。

これが無ければ燃料を供給出来ず動けない。

そしてこの輝く剣も使う事も出来なくなる。

それはあの雛の居た隠れ家にてよく理解していた。

しかし、今ではもう粉々になり使い物にならない。

避けた方向を間違い斬った後の脚が衝突したせいで、

残り僅かだったヘルメットの耐久は底をついた。

勘が良くても流石にそこまで読めなかった。


「…反撃のつもりがイタチの最後っ屁になると…

意味合いは多少違うと思うが…間違いでもないな。

これもまた自分の運の無さがよく分かるよ…全く」

「ふふ…調子に乗った分…苦しんで死になさい…」

「苦しんで死ね…か」


ヘルメットが無くなり遮るものがなくなった頭に、

気が済むまで集中的にスカーレットは痛めつけた。

投げ、蹴って、殴って、何でもアリだった。

この今の狭い世界、いや私達に法律なんてない。

殺したいと思えば殺し、弱肉強食が文字通り。


「ふふ…聞こえる…?鼻が折れてるわよ…?

治してあげようか…?それでも女の子だものね、

顔が不満で整形したくなる事もあるでしょう?」

「っ…」


駄目だ。こいつが気が済む前に私が死に戻る。

せめて目の前のこいつの姿が違っていたとしたら、

また違う方向へ世界が動いていたのだろうか。

どうしようもない後悔が颯花の気を萎えさせる。

しかし、どう思ったとしても全て無駄だった。

最後の締めのように、一気に目の前に大地が迫った。

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