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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
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純粋な吸血鬼

天候が曇りのせいで弱点の日光は当たらず、

この吸血鬼は平然と外に出る事が出来ている。

相変わらず思うが相手の姿は偶然だとしても、

咲夜に似ているよりも同一人物以上のレベルだ。

どうせ自分は目の前の相手を斬る事は出来ない、

そう思いつつ、手に持つ使わない剣をしまう。


「…何のつもり」

「素手の相手に剣を持つのは反則でしょう?」

「吸血鬼を…侮ってると…!」


スカーレットは両方の拳を強く握り締め、

先程の一本道の上を通り一直線に接近戦をしかける。

戦闘方法を変えて来るのを分かっていながら、

颯花は何故か防御の体勢を弱めていた。

それに疑問に思うがどうせ話してくれないだろうと、

にとりは画面から状況を確認しつつ見守っている。


そして見切った通りに右の拳から殴りかかってきた。


「(始動は右からか…?)」

「それでは甘いわ…素人ね!」

「っ…」


距離は近づき超至近距離にも関わらずこの相手は、

体勢を低くし右の拳を下から昇るように振り上げ、

両手で交差させた防御を下から突き破った。

その衝撃と後から来た風圧により体勢を崩され、

ガラ空きの腹部へ正拳突きを直撃してしまった。

そのまま後方へ大きく吹き飛ばされるも、

真下を通り過ぎる建造物の屋上に拳を叩きつけ、

腕を差し込んで固定し飛ばされた勢いを弱める。


「…不味いな。右脚が動かせない…」

「平然と言ってる場合か!来るぞ!」


腹部から火花が散るほど大きく損傷しており、

そのせいか下半身の動きが鈍くなってしまったが、

まだ動かせるのはいいとして右脚が機能不全に陥り、

普通に歩く事さえ困難な状態になってしまった。

それに情けをかけるほど相手は甘くは無く、

躊躇いもなく颯花へと追撃を仕掛けに接近してくる。

右脚を真横に振り上げ、颯花へ叩きつけてきた。

それを食らうのを避けたいと左手をぶつけるも、

両手で押さえなければいけないほど力量差があった。


「…たった100年しか一緒に居られなかった…

それでも親としての愛が…意地があるのよ…!

なのに貴女は…私の…2人の幸せを奪った…!」

「ならどうして…100年後から手を離した…

大事なものを…失ってからでは遅いのに…!」

「貴女が…それを言える立場じゃないでしょう!」


異常なほどの力量による負荷に耐え切れなくなり、

金属がねじり切れたような音と火花を散らしつつ、

やがて限界に達した左手は爆散してしまった。

義体の表面を焦がすほどの爆発によって、

颯花と共に更にダメージを与えてしまっていた。

煙で周りが見えないままろくに動き回る事も出来ず、

前方から頭部に飛び蹴りの一撃を食らってしまった。

訳の分からないまま今度は速度を弱められず、

勢いが弱まるまで後方へ大きく吹き飛ばされた。


流石のあの姉妹吸血鬼の親といった所だ。

血に惑わされた凶暴状態のレミリア以上の戦闘力で、

能力を使えない状態でもこれ程まで力量差がある。

私が姿に惑わされてまともな戦いが出来ない事も、

理由にはなるがもしも惑わされていないとして、

能力有りで殺り合ったとしても恐らく勝てない。


「…にとり…これちょっとヤバイかも…」

「…ザザ…ザ…」

「…さっきの一撃でカメラと一緒に壊れたのか…。

どうにかしなきゃな…これじゃあ…アイツが…」


動けず倒れ込んでいるままの颯花の元へ歩み寄り、

いつか颯花がやっていたような事をしている。

ゴミを見るような冷たい目で彼女を見つめていた。

その目は寂しさや怒りが混ざったような目で、

輝きを全て失ったような悲しい目ををしていた。


「なんでそんなに弱いくせに…

私の自慢の子供が…お前なんかに…!

この私の殆どを教え込んだ…あの私の化身を…!」

「…ああ…確かにお前が自慢と呼べるほど…

あの2人は強かった…でも…それは違う…!

それはお前が彼女達の親だったからじゃない…!

殆ど教え込んだ…?何をだ…戦う方法か?

お前は最初から子供を戦いの道具として…

そんな目で…自分の子を見つめていたのか!?」


スカーレットはその言葉に更に感情が昂り、

理性をまともに保てず怒りという感情に身を任せ、

仰向けの颯花の腹部へ拳の一撃を食らわせた。

元々損傷していた場所で当然耐久力は既に底に達し、

容易く頑丈だった装甲を突き破った。

爆発はしなかったものの、放置すれば危ない。


「何よ…貴女は何様のつもりで…!

私の子供なのよ…赤の他人がどう言わないで!

子が親に従うのは当たり前でしょう!?

逆らったら教育して…1人前の吸血鬼に…!」

「…だからお前から彼女達は離れたんだ…!

全てを自分の為だけに利用するお前からな…!」


スカーレットは貫いた拳を颯花の身体ごと持ち上げ、

そのまま高速で上昇し四角い空へ叩きつける。

上空に投げられ宙に浮いた状態の颯花の頭を掴み、

何度も休む事なく結界へ叩きつける。

ヘルメットは衝撃を耐え切れずどんどん欠けていき、

原型が分からなくなるほどボロボロになっている。

しかしそれから折れた音、欠けた音ともうひとつ、

どこから似たような音が鳴っているのが分かった。

それはとても小さな音で集中しなければ聞こえない。

それでも、その原因が分かった颯花に対しての、

小さくともとても大きな希望の音だった。


「…貴女を倒した所で私の復讐は終わらない…

貴女の仲間を全て…片っ端から殺すまで…!」

「私には仲間なんていない…こんな…、

まともな考えさえ出来ない私にはね…けど、

他人を利用するだけの下劣な野郎よりも……!

こんな糞野郎の死神の方が遥かにマシだッ!」


颯花は相手に叩きつけられていた結界の場所を、

ピンポイントで真っ直ぐ剣を差し込んだ。

そして破れるはずのない結界に直径5mmほどの、

とても小さな裂け目を作り出す事が出来た。

作り出された裂け目はかなり目を凝らさなければ、

見えないほどの本当に小さなものだったが、

颯花に時間は味方をしてくれた。

今の時間帯は正午であり、太陽が真上にあった。

小さな裂け目は太陽が横にあれば日光は通らず、

運が悪ければその行動は無意味となっていた。

真っ直ぐ直線に、そして久しぶりの太陽の光を見た。

一直線に伸びる閃光が、スカーレットへ直撃した。

見上げていた彼女の左目に命中し、

よほど強烈だったのか異常に苦し始めた。

手を離され飛行能力のない颯花はそのまま落下し、

追撃も出来ないまま地面へと落ちていく。


「この光は…太陽光……!」

「純粋な吸血鬼であればその分日光に弱い…

お前の目は良くて失明程度だろうな…!」


颯花はそのまま先ほどと同じ着地方法をするも、

アンカー一本では出来るはずもなく、

それでも相当なダメージを負ってしまう。

しかし、颯花は突然何故か地面へと手の平を向けた。

自分でも何をやっているのか分からなかったが、

形を変化していった腕を見てやっと理解した。

元々の胴体にあった風圧結界に似たような、

シンプルな形状の白い機械が露出していた。


「あいつ…有るなら先に言ってくれれば…!」


有るのなら殺す事なく相手を無力化も出来て、

あの強烈な攻撃にも耐え凌ぐ事も出来ただろう。

しかし、それをにとりは一言も言わなかった。

でもそれは流石ににとりらしくはないと思った。

何も言わないという事は大きな欠陥か何かがある、

何かそれに対して後ろめたい事が有るという事だ。


近づいた地面へその風圧結界を叩きつけた。

機械が発している風圧による空気のクッションで、

地面への直撃を免れる事が出来た。しかし、

使ってみたがどこも不備があったとは思えない。

ちゃんと機械が内部へ折り畳まれて入り込み、

そして元々の普通の手の形に戻っている。

しかし、その右腕は微塵も動かせなくなっていた。


「前の身体の排熱機構がそのままで…

そしてそれで腕ごと機能不全に陥った…か」

「ザザ…颯花!返事を!聞こえないのか!」

「やっと繋がったか…」

「まだ…終わってないわよ…!」

「ッ…いつの間に背後に……!速い…グッ!」

「おい颯花ッ!どうした!?」


ヘルメットに搭載していたモニターを潰され、

聞こえる雑音混じりの音からでしか判断出来ない。

にとりはいつもの颯花の余裕な態度ではない事に、

今の彼女の状況がかなり不味い事を感じ取った。

鞄を手に取り、外への扉に取っ手を手に掛けた。

直後に、後ろから方を掴まれ呼び止められた。


「外へ出るのは危険だって!まずいって!」

「邪魔しないでくれ!あのままじゃ死んじゃう!」

「だからってお前ごと死に急ぐ必要は無いって!」

「でも…それで後悔が残るのなら嫌だね!

どうせ死ぬなら足掻いて笑いながら死んでやる!」

「あっちょっと…!神奈子も何か言ってよ!」

「怪我して帰ってくるんじゃないよ…」

「ちょっと!あっ待って…」

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