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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
〜紅霧異変編〜
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交差する理想と思想/悪魔と悪夢:1

「いつもいつも…そんなに殺されたいか…!」


散々他人を弄んでいて更に罪の意識もない、

そんな態度をする相手に颯花は殺意を向けている。

しかし全身の痛みが残っている為に、

まともに戦えば勝てない状況であった。

自分自身の力に無力さを感じている。


「ああん…怖い怖ーい。フフッ。

ゼィル、怖い顔もいいねぇ……♪」

「その顔で…私の顔で言うな……!」

「ん?違うね……君が僕の顔なのさ」

「ふざけるな…いつまでも目障りなヤツ…!」


颯花は頑張っても立てない程度の状況でも、

無理に立ち上がろうとしている。

しかし、長々と身体中に響く痛みを耐えつつ、

そのまま無理矢理膝を立てたが、

それ以上脚が動く様子はなかった。


「無理しちゃ困るわぁ、

貴方も僕の手のひらの駒なんだからさ♪」

「チッ……」


颯花の見つめる相手は、同じ服装。顔。体型。

まるで同じ人物に見えてしまうほどだった。

しかし、ジーグの瞳の中の輝きはほぼ無く、

服装も颯花の色合いの黒寄りの色をしている。

全く似て、そして何処かが違うような感じを、

颯花は相手から感じている。


「安心しなよ♪僕は今は傍観者だからさぁ♪」

「今は……か…ぜんぜん安心出来ねぇな…全く」

「フフッ♪それじゃあまたねぇ♪ぜいるん♪」

「本当…気色悪い……吐き気を感じるまでな…」


そして彼女は颯花の元から去っていく。

その人物は、まるで感情が無かった。

顔を見た時も、別れた時も、無表情だった。

身の毛がよだつ、その場を凍りつかせるように。

颯花はそれに拒絶感はあるものの、

自分がやがてそうなりそうな事による、

悔しみと悲しみを感じていた。


「本当……感情ないな…。

私も…ああなってしまうのか……いつかは」


そっと足を立たせ立ち上がろうとしたが、

依然として先ほど受けた痛みで動けない。

仕方なく、引きずって魔理沙を広間の端まで運ぶ。

その時、魔理沙は目を覚ました。

今の会話は聞かれていないようだ。


「すまないな…こんな目に合わせて……」

「気にすんな…運命、って奴だよ……」

「…貴方らしい…回答だな」


ふたりはその場でしばらく動けなかった。

すぐに霊夢と合流出来ない事への、

そのただじっとしている事への焦りを感じている。



「はあッ!」


霊夢の手に持つお祓い棒の先端を相手に向けた。

そしてその先端から輝きを撃ち放った。

そしてその光は複数に分裂し弾幕となったが、

レミリアはそれを軽やかに避けている。


「まったく、空中で機敏すぎるのよ…!」

「吸血鬼だから…ねぇ…?」


颯花達から離れてからずっと戦っているが、

レミリアにはまだ傷一つもなかった。

しかし、霊夢は膝に擦り傷があり、

更に息が少し荒くなっている。

その状況に、霊夢は冷や汗をかいている。


「(接近戦だと力技でやられる。

遠距離だと当たらず、こちらが押されるだけ…

一体どうすれば…この相手を突破できる…?)」

「なら、諦めて死ねばいいのよ」

「なっ……!?」


まるで思っていたことを読んでいたかのように、

レミリアは霊夢へそう冷たく告げた。


「人間は……寿命が少なく、愚かで惨めな生物。

そんな生物……生きてる価値もない存在。

それを、私が殺してあげるのよ?」

「自分の都合だけで…!」

「人間が居なければ、この星はね、

もっといい環境だったと思うのよ、私は」

「…」

「人間が生きるだけで世界が壊れていく。

戦争なんて以ての外、馬鹿みたいな生物」


その慈悲のないような言葉に、

霊夢はすかさず思っていた事を、

相手へ強く言い放ち反論した。

彼女はその答えを心から聞きたがっていた。


「それは……」

「ん…?」

「それは……咲夜もなの?」

「…ッ……!」


彼女は持っていた日記を取り出して、

レミリアに見せるように持ち上げる。

それは確かに颯花が持っていたものだが、

戦いを始める前に消し飛ばないよう、

扉を開ける前に置いていったのだった。


「この日記を拾ったのよ。

あんたも…充分可哀想だと思ったけど、

そんなあんたに利用されるだけの……!

彼女の方がよっぽど可哀想ね!」


レミリアは何の躊躇いもなく、

その日記に向けてひとつの輝弾を撃ち放った。

その光は日記と接触したその時、

それを跡形なく消し飛ばすような爆発を上げた。

霊夢は突然のことで避けることも出来ず、

彼女には当たらず無傷ではあったが、

思わず僅かな悲鳴を上げてしまった。


「好きなだけ言いいなさい。

私は咲夜の為にしているだけよ」

「彼女は本当にそれを喜んでいるのかしら?」

「…何」

「本当は…それはあんたの傲慢なんじゃないの?

自分がしたいだけじゃないの!?」

「…。

……言いたい事はそれだけか?」

「(流石に…揺さぶれないか)」


状況は何も変わらなかった。

どんなにレミリアを揺さぶろうとも、

彼女は全く動じていない。

しかし、しばらく時間が経った時、

先ほどの場所からやってくる人物がいた。


「…」

「お姉様!」


先ほど頭に響く声で導かれたフランが、

その二人のもとに飛んで向かって来た。

そして、彼女は指をさして言放つ。


「私は…私が……お姉様を止める…!」

「…」


そんな彼女の意思を良く考えることもなく、

それは彼女にとって無謀でしかならない事だと、

呆れ顔で否定し、押し付けるように返答した。


「…。馬鹿馬鹿しい…無理ね、

あなたは私に、どう足掻いても勝てない」

「やって見なければ分からないわ!」

「はぁ…馬鹿なことを考えなければ…

この巫女と同じ痛い目に合わずに済んだのに」

「…」


フランが手に持つ杖を向け、

その先端から放たれる閃光で弾幕を飛ばす。

その弾幕の密度はとても敷き詰まっていて、

隙はかなり無いはずだが、

その僅かな隙間を軽やかに回避している。

2人は全く似たような回避をしていたが、

姉の方はそれ以上に全く隙が無かった。


「どうして…?…なんで当たらないの…!」

「数撃ちゃ当たるって、それは迷信よ。

馬鹿な妹を持つ姉は苦労するわね…」

「ッ…!」


フランは持っている杖を投げ捨て、

何も考えずにレミリアへ突撃する。

フランが殴りかかったその右の拳に、

ピンポイントでレミリアの拳が衝突する。


「……フッ…」

「……ッ!?」


その衝撃でフランが吹き飛ぶ。

姉と妹との間には、圧倒的な力量差があった。


「なんで……なんで…なんで!」

「貴方は利用されているだけで良かったのよ」


吹き飛ばされたフランはそのまま壁に激突した。

深く壁にめり込み、自力で抜け出せない。

そんな状況のフランへレミリアは近づいた。


「私の望みを邪魔する奴は殺す。

さようなら、フランドール・スカーレット」

「嫌ッ……!」


レミリアはフランへ手刀を振り落とす。

しかし、その手刀は別の人物の登場によって、

フランを斬り刻むことは無かった。

両手を広げ、レミリアの前に立ち塞がった。

その人物は十六夜 咲夜、彼女だった。


「…何の用かしら」

「お辞め下さい、お嬢様」

「…」

「フランお嬢様は、大切な仲間であり、

お嬢様との血が繋がっている唯一の存在です。

どうか彼女を、お許し下さい」

「…。分かったわ咲夜…」


その言葉に咲夜は安息し、両腕を下げた。

そしてその両手にナイフを構え、

鋭い目つきで霊夢を睨みつける。

突然の状況に固まっていた霊夢を、

動き出さした瞬間だった。


「ッ……来る…!」

「…敵は、あちらにおります。

さっさと始末しましょう。お嬢様」

「ええ、分かったわ」




レミリアは斬り裂いた。

自分の仲間であった十六夜咲夜を、

何の躊躇いもなく、力を弱めることもなく、

仲間であるはずの咲夜の胴体をレミリアは、

自らの腕で彼女を血に染め上げた。


「フフッ……」

「ッ…!?」

「なっ…!?」

「嘘っ…!?」


それを見ていた一同が驚愕する。

傷口から勢い良く噴射する真っ赤な血が、

レミリアの綺麗な服装を紅く染め上げる。


「言ったわよね…邪魔する奴は殺す、と」

「お……嬢…様……」

「ぁぁ……嘘……嘘でしょ……」

「この人でなし…自分の仲間を……!」

「人でなし?違う。私は悪魔の吸血鬼。

この腐った世界を統べる者、

私がレミリア・スカーレットよ」

「こいつ……どこまでも、どこまでも、

腐りきってる…!」


レミリアは咲夜を手加減もせず蹴り飛ばした。

まるで壊れた玩具の様に扱っている。


「お姉……様…」

「貴方も…こうなりたくないなら、

私に利用されてればいいのよ?分かった?」

「…ひっ……」


フランは崩れるように倒れ込み泣き出す。

私のせいだ、と考えていた。


「絶対…許さない。颯花に殺さないで……と、

言われたけど…こんなヤツ、

この世界に生かしておいて意味はない!

絶対に殺すわ!あの世で悔やみなさい!」

「殺せるかな?私をッ!」


目の前で怒りに満ちている霊夢を見たまま、

レミリアは染まった手につく血を舐めた。

そして、不敵に笑みを浮かべた。


「今に見てなさい。悲劇が生み出した、

最強の能力!劣化もしない完成形、

完全複製能力(コンプリート・プリント)!」


彼女に変化は無かった。

しかし、状況は突然と変わった。

レミリアはいきなり霊夢の背後を取った、

時間もほぼ皆無で、移動する姿もなかった。


「こいつ…!なんで……いつの間に!」

「足掻け足掻け!……死にものぐるいの顔、

得と味わらせてもらう、博麗 霊夢ッ!」


突然変化した状況に霊夢は動けず、

振り向いた彼女の腹に真っ直ぐ拳が入った。


「ぐはッ……チッ…!?」

「アハハハ!この程度で済むと思う…?」

「まだまだ……!」


霊夢は飛び上がり距離を離しつつ、

彼女の周囲を全て囲むような、

サイコロ型の6面結界で周囲を囲んだ。


「厄介な……!」

「そんなものが通用すると?」


一瞬風景がズレたように霊夢は感じた。

しかし、レミリアの位置は変わらない。

変化したのは、割れるはずのない結界が、

一瞬にして全面にヒビが入っており、

ただのガラスのようにあっけなく割れた。


「なんてこと……!」

「これは敵無しになってしまったねぇ!

もっと面白く……ないとつまらない!」


かなりの距離が開いていた筈が、

再び一瞬で近接の間合いに入られてしまった。

そして間一髪でレミリアの蹴りを回避する。


「私が冷や汗をかいている…まずいわね…」

「どうした?守ってばかりでは勝てないわよ?

そもそも守りきれてないけどねえ!

アッハハハハハハ!!」

「くっ……」

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