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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
186/245

生存者/にとりの旧友

「チッ…キリがない…」

的確に首を切り落とし、傀儡を無力化する。

それらは灰となって消えるので死体の山にならず、

颯花の足場を阻害する事はなかった。

しかし、それらをいくら切り落としたとしても、

どこからともなく瓦礫から湧いて出てきて、

颯花の戦っているこちらに向かってくる。


「…一体どうすれば…。

ん…鈴の音……か?聞こえるか、にとり」

「ああ…何故こんな音が…?」

「音を立てないで!静かに…」


颯花の背後から幼い少女の声がした。

それに驚きもせず颯花はその場で立ち止まった。

どうやらそこに居た事を彼女は知っていたらしい。

鈴の音がする向こう側に傀儡達は向かっていき、

まるで颯花と彼女を無視するかのようだった。

先ほど伝えようとしていた事を、

颯花は小さな声でにとりに伝え始めた。


「…。そう、生存者だ」

「まさか…な…いや、そこで放置するのも危ない。

颯花、連れて帰ってきてくれないか?」

「………全員を?」

「……全員って…まだ居るのか?」


周囲に傀儡が確認出来なくなった頃合を見て、

颯花は少女の方へ振り向き、その方向に進んだ。

他と場所と同じく瓦礫が地上を覆っているものの、

そこの地下に続く扉の上の瓦礫は退かされていて、

中に入ることが出来るようになっていた。

扉を開け、颯花は中に入っていく。

その後ろを少女が着いてきて、彼女が扉を締めた。


しかし、扉を閉めた瞬間取っ手が外れ、

彼女はバランスを崩して颯花へ倒れ込む。

颯花はそれを受け止めようとするも、

何故か彼女は颯花に触れられたくないのか、

颯花のいない方向へ無理矢理倒れ込んだ。

段数は少ないものの、そこは地下へ続く階段があり、

倒れた衝撃の痛さは相当あっただろう。

さっきのは気のせいだと颯花は思いたく、

彼女倒れた彼女に手を差し伸べる。

しかし、彼女はそれを無視して1人で立ち上がる。

声には出さずとも、颯花は内心相当傷ついた。


「やっぱり…お前…!」

「何…?…お前の知り合いか?」


にとりはカメラの視界に入った彼女に対して、

以前会ったような反応を見せている。

そのカメラからの音声に彼女も気付いたのか、

驚いた表情を見せたがすぐに暗い表情になり、

颯花と目線を逸らした。また内心が傷ついたが、

何故そんな表情をするのか気になった。


「…なんでそんな表じょ」

「お前まだあのこと気にしてるのか!?

確かにあれは辛かったけどもう気にしてないって!」

「嘘よ!そんな筈ない!あれで貴女は…!」

「待て待て…説明を頼む。それと彼女の名前を」

「彼女は鍵山 雛、厄神でな、触れると厄が移る」

「なるほど…つまり嫌われてる訳ではないと」

「ああ…あれはお前と会うもっと前の話だ…」


颯花会う前の、まだあの時の空が紅くならない頃、

にとりはいつも通りに川の近くで機械を弄っている。


「ねぇ、それって楽しい?」

「うん、物凄く」


そんな彼女の隣りにいつも雛が居たらしい。

にとりは厄神の彼女の事を嫌った事は一度もなく、

むしろ盟友とも呼べるくらいの信頼感を持っていた。

たまに雛を触れて大惨事になった事もあるが、

それに臨機応変に対応して被害を抑えたりと、

にとりは雛にとって無くてはならない存在になった。

その頃というよりも、ほとんど毎日だったが、

河童達の間では絶賛の機械ブームだった。

にとりはそんな河童達の上位に入るほどの、

機械といえば彼女と呼ばれるほどの存在だった。

そう呼ばれる理由は誉められるほどのものだから、

純粋に凄いなどと思われているだけではなく、

ほかには嫉妬も含まれたものでもあった。


ある日、自作の機械を見せ合う大会のようなもの、

それを頑張ろうと念入りに準備していた。

そしてその大会の当日、その自信作をあろう事か、

にとりは持ってくるのを忘れてしまった。

このままでは困るだろうと雛はそれを手に取り、

河童の集まる集落のような場所に向かった。


その入口と思われる場所には2人の門番が居た。

雛はあまり自分から話しかけれるような、

そんな性格ではなかったものの、

このままではにとりが困ると思い話しかける。


「誰だお前?ここはお前のような奴が」

「来るような場所じゃないぜ」

「あのっ…にとりの…忘れ物…えっと…」

「…へぇ、なるほど…これがねぇ…」

「あっ…ちょっと…!」


その門番の1人がその機械を雛から取り上げた。

それを軽々しく触り、雑に使ったのに対して、

雛は心の底から異常なほどに怒りがこみ上げた。

それは友人が大切に作り上げたものを、

本人の苦労をも露知らずに粗末に使われて、

相当許せないと思ったのだろうか。

何故自身がこんな怒りが沸くのか分からないまま、

彼女はこんな奴なら別にちょっとくらいなら

厄を移しても平気だと思い、相手にわざと触れつつ、

そのにとりの機械を無理矢理奪い取った。

とにかくこの人物に預けるのはまずいと、

雛はそう思ったからだった。


「あ?何すんだよコイツ!」

「もういいです…私が直接渡します…!」

「おまっ侵入者だ!取り押さえろッ!」


片方の門番が笛を鳴らすと周囲から河童が顔を出し、

彼女を取り押さえようと武器を持ち飛びかかる。

彼等は雛の事を知らないのか平気で彼女に触り、

そして実感もないまま厄が移っていく。


「雛っ!」

「あっ…にとりっ!」


その騒ぎに気付いてそこへにとりが走ってきた。

彼女が周囲の河童に無害だと教えて離れさせ、

にとりの機械を抱きしめて守った彼女に話しかける。

しかし、取り押さえられた時に機械が壊れてしまい、

抱いた腕を広げると機械の部品が次々と落ちてきた。


「お前…無茶をして…」

「ごめんなさい…機械が…」

「大丈夫、このぐらいすぐに直せるから」

「…ありがとう」

「なっ…うわっ!」


2人は後ろから聞こえるいくつもの悲鳴に驚き、

何が起きたのか知る為に振り向いた。

そこはいつもとは違った厄の雰囲気が流れていた。

にとりがたまに移った厄の量と比較にならないほど、

彼らに降り掛かった災難は尋常なものだった。

いつもなら良くて転倒、悪くて軽傷程度だったが、

目の前に起きているものは明らかに違った。

持った武器が仲間に刺さったり、

武器の木の部分が多少掠っただけで火がつき、

持っている河童の身体を燃やすまで、

悪くいけば死に至るほどの厄だった。


「えっなんで…いつもとはまるで…違う…!」

「…触った相手の厄は一人一人均等だけど、

それが密集して相当な厄災になっているのか…?

違う違う!水だ!水を持ってくるんだ!

医療とか出来るやつもだよ!早く!」


にとりは自身の機械を放り投げてでも、

彼等を死なさないよう全力を尽くし救助を行った。

にとりの機転が幸いして死者は出なかったものの、

山の何割かは燃えてしまう程の災難になった。

そんな彼女の事を怖がらないはずがなく、

相応の実刑と山に近寄る事を禁止する事を決め、

総動員してまで彼女を捕まえようとし始めた。

勿論それを止めるようににとりは怒鳴り込んだ。

自身の位を捨てる覚悟の上で行動した。

それは、単に友達を助けたいという想いだけで、

にとりは友達を助けるのに理由などない。


「長老!こんな事やめてくれ!

あいつは別に悪気があった訳じゃ…!」

「ふむ…それがわしに話しかける態度かの?

まぁしかし…あれで生まれた憎しみも、

少しだけでもある、それ以外では取り除けん」

「あいつは厄神なんです、仕方ない事なんですよ!」

「だとしても、お主の説明不足も、原因じゃぞ」

「そんなっ…確かにそうですけど…!」

「お主は救助を頑張っていたのは知っておる。

その感謝の気持ちとして、お前には罪など与えん」

「その言い方…本当はまるであったみたいに…!」

「…」


「はっはっ…まだ追っかけてくるの…!?」


空を飛べばすぐに見つかってしまい、

仕方なく地上を走って雛は逃げていた。

後ろからはまるで怒鳴り声のようなものが聞こえ、

ただ彼女は恐怖に怯えて逃げるしか出来なかった。

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