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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
182/245

四角い空の中で:1

「このまま逃げるだけだと…無理だ…

「颯花……何か宛はないのか…安全な場所を…!」

「…。ここから西に行くと大きな神社がある…。

あの建物なら壊れる心配はないだろう…」

「ああ……分かった…!」


曲がり角で追っ手を振り払いつつ、

颯花の言った西にある神社へと走っていく。

そこにも既に傀儡は居るかもしれないが、

ここの周囲の廃墟に隠ればやがて崩れる可能性や、

歩くだけで瓦礫を踏み物音がしてしまう為に、

そこで長時間過ごすのには無理があるだろう。

にとりの鞄の中には食糧等は入っておらず、

その点についても問題が発生していた。


「にとり、前ッ!」

「っ…こっちにも……!」

「確かお前の機械の中に飛行出来る物があったな…

あれでどうにかならないのかッ!」

「一応あるが…飛べるのは50mまでだ…

どうにも目的地まで着けるような代物じゃない…」

「いや…それであのビルの屋上に行けるか…?」


颯花はそう言ったが指をさす指や身体がない為、

にとりは彼女の向いていた方向を見て探した。

すると丁度いい高さの建造物を見つけた。

しかしその建物は既にボロボロな状態であり、

ヒビが入った柱を押しただけで今にも崩れそうだ。


「あそこを登れと?」

「…可能性はある」

「無茶な」

「信じろ」


にとりは一瞬だけ立ち止まった。

あんな場所に登って意味があるのかという躊躇い、

それによって彼女は足を止めた。

しかし前と後ろの傀儡はすぐそこまで迫っている。

彼女は頭を左右に振り、そして自分の頬を叩く。

迷ってたらそのまま死んでしまうのは明らかだと、

そう自分を言い聞かせ、大きく1回深呼吸した。

彼女は心が落ち着いた後、颯花の指示に従った。


「…分かったよッ!戦機『 飛べ!三平ファイト』ッ!

しっかり捕まってくれよ……!」

「えっ……ちょっと!?」


にとりの鞄は全体的に機械風に姿が変化し、

機械の後方から赤い火を噴きつつ飛び上がった。

その機械の操作に両手を使わなければならず、

颯花を抱えて飛行する事が出来なかった。

彼女は必死ににとりのスカートに噛み付き、

自身が落ちないように全力を尽くした。


「あっ!お前この服私が気に入ってるヤツだぞ!

気安く噛み付いてるんじゃないっ!」

「っ…!」


必死に噛み付いている為に話せば落ちてしまう。

こんな状況でそんな心配をしている場合か、

そう言い返したいものの必死になり過ぎていて、

屋上に着く頃にはその事すら忘れていた。

にとりは両足を広げ、その屋上にそっと降りた。

しかし彼女が脚をついただけで揺れ始め、

見た目通りに今にも崩れそうだった。


「でっ…ここからどうするのさ…」

「どうせ…お前義手持ってるだろ?

私の身体を元にした例のヤツ!」

「げげっ…」

「あれにもアンカーが装備されているはずだ!

それでこのビルの一帯を飛んで移動するんだよ!」

「んな馬鹿な!ゲームじゃないんだぞ!」

「今飛ばないと崩れて死ぬぞ?急げ急げッ!」

「まさか本当はここ来なくても良かったな!

無理矢理これで飛んで移動する為の…!」

「地上から投げて移動しろって言っても、

お前じゃやらなそうだと分かって言ったんだ!」


そう言い合っているだけでも揺れている。

今強風が吹けばビルが崩れて落ちて死んでしまう。

使った事もないこの頼りない紐に命を懸けて、

他のビルも崩れる危険性があるはずなのに、

それに引っ掛けて移動するのをにとりは躊躇う。

それは誰にとっても同じ反応をするだろう。

しかし、既に時間は迫って来ている。

半ばヤケクソで、彼女はそのビルから身を投げた。


「こっ…こんのぉ……ゲス野郎ーッ!!」

「馬っ鹿!飛ぶ前に掛け声を言えーッ!!」


踏みつけた屋上は飛んだと同時に崩れ、

やがて土煙を舞い上げながら姿を消していった。

両手に持った義手を持ち上げアンカーを撃ち放ち、

初めてとは言えないほど綺麗に操作して動き、

ビルに引っ掛けては移動し、それを繰り返す。

その引っ掛けた後のビルは全て崩れ落ち、

二人が見えている全ての地上が隠されるほど、

その崩れたビルの風圧で土煙が舞った。


「見えたッ!颯花あれか!?」

「…」


最後はそれらのビルよりも低い信号機に引っ掛け、

高度から落ちたまま地面に直撃するのを回避した。

土煙が舞っているせいで周囲の状況が分からず、

付近に傀儡が居るのかさえも分からなかった。

両手に持った義手を鞄にしまって休もうとした。

しかし、そんな場合じゃないと颯花は急がせる。


「待ってくれ…これ結構体力使う……!」

「後ろを見れば分かると思うが?」

「なっ…!」


土煙が舞っている地上ではない、もっと上空。

そこだけが視界に入ったもの、それはビルだった。

そのビルは徐々に背丈を縮めているのが見えた後、

足元に瓦礫が飛んできた事でやっと状況を理解した。

にとりは頭を両手で守りながら必死に走った。

それで再び颯花は彼女に捨てられそうになり、

またスカートに噛み付き、しがみついた。

それににとりは怒った表情を彼女に見せるも、

とにかく今は目の前の神社へと駆け寄った。


「目の前に人だかり…生き残りか!?」

「むむ…むむむむ!」

「えっ…なんて?ちゃんと喋れよッ!」

「…」


その人だかりは言うまでもなく傀儡の群れだった。

土煙で視界が悪く良く見えず、生存者だと誤解し、

にとりはそのすぐ近くまで近寄ってしまった。

それらはカメラや機材を持ち、動きが遅かった。

その為にすぐに逃げることが出来たものの、

後ろは瓦礫が落ちてきて危なく、逃げようがない。


「お前がここ来いって言ったろ?何とかしろ」

「…」


スカートに噛み付いている為にまだ喋れず、

お前は私の今の状態で何かやれると思うのか?

そう言おうとしているものの話せない。

八方塞がりのその時、何故か人の声がした。

それに二人は聞こえたかと聞くように見つめ、

互いが聞こえたと言うように頷いた。


「こっちだ!来るんだ!」

「生存者…一体何故…?」

「いいから早くっ!」


その声のするすぐ近くの茂みの中に飛び込んだ。

するとそこには地面が無く、真下に落ちた。

尻餅をついたそこには土はなく、鉄板があった。

その場所は裏道のような薄暗い地下の中に、

2人が入ったものと思われる頭上にある扉、

そこから少しだけ差し込む弱々しい光しかなかった。

やがてその扉は誰かによって勢いよく締められ、

辺りは真っ暗になった。扉が外から叩かれる。


「あんたは…?」

「静かに」

「こっちだ、声だけを頼りにしろ」

「お…おう……」

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