吸血鬼の妹:2
「一体どうすれば……安全に救える……?」
「魔理沙……!」
魔理沙が救う為に悩んでいる時に、
颯花が苦しそうな表情で叫ぶ。
それに驚き止めようとして魔理沙は叫んだ。
「やめろ!傷が……更に酷くなるぞ!」
「どうせ治る!……1つだけ…言う……!」
「なんだ…!?」
「……相手に隙がないというのなら、
ほんの僅かな隙を探すよりも……まず…
自分から…ヒントを探すんだ…!」
颯花は右手の拳を強く胸に当て、
その言葉を強調するような仕草をした。
しかし、説明不足で分かってもらえなかった。
「…?」
「自分の持ち物からヒントを…探すんだよ…!」
「…おっおう…!…よく分からないけど」
彼女の服のポッケには2つの道具のみ。
しかし他に探す所はなく、
ヤンキーがカツアゲした時のように、
とりあえず跳ねて、飛んでみた。
「…ん?」
彼女の服に挟まっていた本の紙切れが落ちてきた。
パチュリーの持っていた魔導書のものだった。
なぜそれが挟まっていたのか分からなかったが、
その紙切れの内容を見て、少し自信がついた。
「この魔法、私にも使えるかもな…」
「…」
ある程度読んだだけで使い方を把握した。
それは魔理沙にある程度の才能があったことと、
その本の書かれ方がとても丁寧であることが、
彼女を短時間で試しもせずに、
その魔法を使えた起因となっていた。
そして手を構え、手の平をフランへ向ける。
「動かない相手なら…簡単だ!」
「ッ……!?」
突然足元につるが生え、フランの脚へ絡みつく。
何故か吸血鬼の力でも、びくともしていない。
彼女の動きは完全に止まっている。
「脚は止まった。…後は接近のみ!」
そのチャンスを逃さず魔理沙は突撃する。
近づけまいと、フランの杖から大量の弾幕を張る。
そのパターンを分かっているかのように、
まるで流れるように回避しつつ近づいていく。
前へ。右へ。左へ。後ろへ。
弾幕は発射距離が近いほど密度が増していく。
密度が高ければ、避けるのは不可能と、
普通ならばなっていく。
「その点は……既に把握済みだ!」
背後から先ほどの分裂した魔理沙の上半身が、
絡みつくようにフランの両手を押さえる。
すぐに外れて人形が壊されてしまったが、
魔理沙本人への隙を生むには充分だった。
「ほらよ!」
フランにひとつ瓶が投げられる。
瓶は機械が反応し即座に殴られ、割られた。
「ッ……!!」
その瓶からは、大量のシャボン玉が出現した。
この薄暗い僅かな光をかき集め、
暗闇で光るそのシャボン玉は、
フランを機械がコントロール出来ないほど、
夢中にさせ見とれさせた。
「(生物は皆、初めてのものや美しさには、
どんな心を持っていても見とれてしまうものだ)」
それを利用して隙を生み出した。
しかし、本当はシャボン玉が機械の内部のカメラを
誤認させ、幻覚のようなものを見せているか、
機械に入り込み故障させたかのどちらかであった。
「……キレイ……」
「いまだぁ!!今の内しかないッ!!」
魔理沙は即座にミニ八卦炉を取り出し、
フランの方向へと発射した。
それに一瞬だが驚いて動いてしまったフランだが、
機械の位置がずれても、
拡散ビームで的確に機械だけを狙い撃ち、
全ての機械を同時に破壊した。
フランに怪我をさせず、
約束通りに救い出した魔理沙は、
颯花と向き合い、微笑んだ。
「やったぜ。」
そしてフランへ振り向く。
彼女は魔理沙に対し尊敬と感謝をしている。
「……ありが…とう」
「なあに気にすんな!もう安心していいぞ!
怖いものはもう何も無いんだ!
そこで…楽になってていいぜ」
その魔理沙の言葉が、
とある記憶を引き思い出させた。
彼女の記憶の奥深くにある似たような言葉が、
フランの脳内でハッキリと再生された。
『 安心しろ…ちょっと痛いだけさ……なぁ?
恐がらず…当たり前のように受け入れるんだ……
楽になろう……さあ!』
フラン達が実験されていた時の記憶だ。
今の彼女は痛くも何も無いはずだったが、
その言葉と同時に全身がその時を思い出す。
視界。痛み。血の色。絶望。恐怖。
そして、頭に埋め込まれたなにか。
「…嫌……嫌…」
突然と怯えだしたフランを心配するかのように、
魔理沙は彼女に寄り添うように近寄った。
「どうした?」
「(どうした?楽になれば終わるんだよ?)」
「ぁ……ぁ……ぃ…ゃ……!」
「おいッ!しっかりしろよ!」
「……嫌ぁ!来ないでぇええええええ!!!!!」
フランが振り下ろした腕は、血に染まった。
魔理沙の胴体を容易く切り裂いたのだ。
その血が元々紅かった紅魔館を更に染め上げた。
辺りとフランは勢いよく出血したそれを浴びた。
その血を見て、魔理沙は冗談を言いつつも、
少しずつ意識が遠のいている状態だった。
「まったく……女の子の心を……読むのは…なぁ…
魔法を覚えるよりも……難しいぜ…」
「魔理沙ッ!……ゲホッ……チッ…動けねぇ…」
「ぁぁ……」
その瞬間、彼女の脳で謎の声が響いた。
それは聞き覚えのあるもので、
フランに優しく語りかけていたが、
どこか冷酷さを感じることが出来る語り方だった。
『あなたが殺したのよ』
「(えっ…何……なんなのよ…)」
『これは事実よ』
「(違う……私のせいじゃ……!)」
『それは逃避というのよ』
「(なっ…)」
『何に泣いているの?』
『何の為に悲しむの?』
『謝罪?同情?慈悲?後悔?』
「(…)」
『じゃあ、今のあなたがしたいことはは何?』
「(私がしたいこと……)」
「(私は……お姉様を止めること……!)」
『それはとても難しいわよ』
「(分かってる……)」
『ならば行きなさい、進みなさい』
『自分は自分でしか切り開けない!』
1人霊夢とレミリアが向かった方向へ歩み出した。
それを止めようと、颯花は大きく声を上げ、
必死に呼び止めようとしていた。
「待て……フラン!何処へ!」
「お姉様を止めに行く!」
「やめろ!……危険だ!…ゲホッ」
「それでも行く!」
「……やめろ……行くな…フラン……ッ!
巫女に任せればいいんだ……!」
「嫌!私の道は、私で切り開く!
昔、助けてくれた時、お礼が言えなかったけど…
今でも感謝してる!でも私は行く!」
そしてフランはレミリアのいる場所へ向かった。
歩くことすらままならない彼女は、
匍匐で魔理沙のもとへ歩み寄り、
彼女の安否を確かめている。
「あの……馬鹿野郎……!
魔理沙……大丈夫…か……!?」
とても状況は良かった。傷は深くない。
そして最善の手当てをしていくが、
そこにとある人物がこっそり近寄ってきた。
しかしそのとてつもない殺気ですぐにバレた。
当然その人物を殺すことも、倒すことも出来ない。
「……やはりお前か……ッ!」
「あれ、気付いちゃったかな?アハッ」
「お前……!」
「その状態で戦うのはやめた方がいいよ?」
「……クッ…クソッ……!」
「そう、彼女に語り掛けたのは僕、
君の恩人、ジーグ・フリーズだよ」