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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
177/245

手書きのノート/廃墟の街:1

いつもの風景の市街地の上空を見下ろすように、

下にいる人間に見つからない高度で飛んでいる。

高度故に寒く、桐柄の体温が下がらないようにと、

にとりから桐柄を預かり前方に結界を張った。

そして再び目的地へ急いだ。


「霊夢…あれか?」

「…ええ」


霊夢はもともと教えられていた隠れ家の目印、

双子の赤青ビルの中間、その上空に着いた。

そこから見下ろして四角く白い建物があれば、

そこに最も近い隠れ家があるはずである。

そして後々遅れて着いた早苗を無視するように、

そのままそこへ霊夢達は向かって行く。


「ちょ……ちょっと待って…ぇ……」


無理に霊夢達に速度を合わせて急いだ為に、

相当の疲労と息切れで動けなくなった早苗は、

しばらく上空で降りれるようになるまで休息した。


霊夢達は四角い建物の入口へ着いた。

しかし、そこはどう見てもレストランだった。

妖精等が平然と存在する幻想郷のような雰囲気は、

そのレストランからは全く感じられなかった。

どう見てもおかしいとすぐに思った霊夢は、

そのレストランをとりあえず1周してみる事にした。

そして案の定、その隣の細道の影にひっそりと、

地下へ続く長い階段が見つかった。

そこへ躊躇うことなく霊夢達は降りていく。


「…ここね」


霊夢はドアを2回大きくノックした。

しかし、しばらく待っても返事も何もなく、

先ほどからの静けさがいつまでも続いている。


「おい!誰かいないか!医療関係の出来るヤツは?

人が死にそうなんだ!急いでくれ!」


扉の前でにとりは大声で叫び、助けを求めた。

しかし、しばらく響いた声が扉から帰ってくるが、

扉の向こう側の物音は一切聞こえなかった。

霊夢はやむを得なくその扉の取手に手をかけ、

万が一の為にゆっくりと扉を開けた。


「何よこれ…台風でも過ぎ去ったの…?」

「…どうするんだ…近くの病院に連れて行っても、

流石にそこまで面倒見てくれないぞ…!」


まるでその内部は台風が過ぎ去ったように荒れ、

廊下は皿の破片などが埋め尽くすほど散乱していて、

ひとつひとつの個室はほとんど叩き壊されていた。

とりあえず誰かいないか奥へ進んでいった。


「おいおい…時間の無駄かもしれないだろ…」

「大丈夫…信じて」


破片を踏み潰し、前へ前へ進んでいく。

確かに相当に荒れているがまだ生活感が残り、

ホコリもそこまで溜まっていなかった。

正面を真っ直ぐ進む目の前に、ひとつ扉がある。

とりあえずそこだけ扉がが残っていたので、

崩れるか心配になりつつもゆっくり開けた。


「…さっきまで人が居たのね。

自販機で売ってるコーヒーがまだぬるいわ」

「…でも、人の気配はないな…どうする」

「…。にとり、これを見て」


霊夢が奥の方向を見て、とある物を指さした。

するとそこには医療機器が何故か揃えてあり、

簡易的な手術も可能なほど充実していた。

更には台の上に手書きのノートまで置いてあった。

そのノートには手術の方法や処置が書かれていて、

その他にも何か日記のようなものもあった。


「(……これは…)」


その台に桐柄を降ろし、ノートを開いた霊夢は、

そのノートに一瞬苦い顔をするも、

すぐににとりに見せ、自分達で成そうとしていた。

霊夢のその行動ににとりは少し冷や汗をかいた。


「…まさか…だよな?」

「頼る場所を探すならどう見ても時間がない、

だから私達がやるのよ、それ以外無理だわ。

あんたもちゃんと手伝いなさいよ」

「これ通りにやればいいのか…やるしかないか」


一旦周囲の足元の破片を掃除して清潔にし、

ただ傷を塞いだり止血をすればいいのだが、

彼女達はそれを当然やったことも無かった。

しかしやり方なら書いてある為ミスは無さそうだが、

万が一目にホコリが入ってミスをするのを防ぐ為に、

彼女達はその部屋を掃除したのだった。


「……吐きそうだけど、やるわよ」

「…せっかく掃除したんだ、吐くなよ」

「分かってる。」



早苗はやっと体調が元に戻り、気が楽になった。

かなりの時間の間動かずその場で浮いていたが、

下にいる人間に見つかり騒がれる事はなかった。

しかし、どう見ても地上は妙に騒がしかった。

軍隊が民間人を誘導していて、残念に思いつつも、

その状況はとにかく緊迫感が凄まじかった。

その逃げている反対側を早苗は必然と振り返った。


「なっ……えっ……嘘っ!?」


早苗の僅か前方の、自身よりも少し上空を、

巨大な筒状の白い物体が高速で落下していた。

それで太陽を隠されていたにもかかわらず、

早苗は少しもその存在に気付く事は無かった。

すぐさま霊夢達に知らせようと急いで向かった。

扉を開け、目の前の廃墟に違和感を感じるも、

様々な破片を踏み越え、真っ直ぐ進もうとした。

しかし、扉を閉めたちょうどその時だった。


「地震…じゃない!?…もう落ちたの!?」


凄まじい揺れを感じ、すぐさま原因を理解した。

すぐに霊夢達と合流しようとしたが、

彼女は急に閃き、閉めた扉が開かないように、

強く内側から両手を使って押さえつけた。

すると、当然のように彼女の読みは当たり、

反対側から凄まじい突風が扉に押し寄せた。

見た目によらずとても頑丈な扉は壊れる事なく、

いつまでもずっと耐えた。


「これなら…大丈夫…そう……!」


扉と地面の隙間から凄まじい風が吹いている。

それに足を取られそうになるも、

早苗は強くその場に踏ん張って凌いだ。

彼女の居るその廊下に突風が入っている事に、

再び彼女の勘は働き、凄まじい冷や汗をかいた。

そして、それも当然のように当たってしまった。


「まずっ……!」


彼女がすぐに振り向いたその廊下には、

吹き抜ける強風で散乱していた様々な鋭い破片が、

舞い上がって風に流され、辺りに飛び散り、

コンクリートで出来た壁に突き刺さっていた。

そして彼女は咄嗟に前へ振り向き目をつぶった。

やがて何かが刺さった痛みが彼女を襲った。



「なんだこの揺れ……!?」

「にとり!機材を押さえて!」


手術を不器用そうに進めている2人を、

邪魔するかのように大きな地震が襲った。

すぐに2人は被害が及ばないように機材を押さえた。

しばらく立てないほどの揺れは続き、

ここが崩れてこないか心配になったが、

時間が経つと揺れは収まり、2人は立ち上がる。

意外にも早く進んだ手術の残りを颯爽と済まし、

残りの作業を3分程度で済ませ、一気に外に出る。

扉を開けようとして霊夢が見た扉は、

その扉の反対側から鋭い破片が突き破っていた。

それを開けることすらままならず、蹴り破った。

周囲にホコリが舞い上がって2人は咳き込むも、

その場から急いで外に出ようとした。


「さっ……早苗っ!!」


外へ出られるひとつ扉の目の前に、

倒れ込んでいた早苗の元に2人は駆け寄った。

彼女は霊夢達が言った呼び掛けに反応し、

よほど怖かったのか弱々しく返事をした。


「肩に……破片が刺さっちゃって……」

「他は!他は大丈夫なの!?立てる!? 」

「私だって結界は張れますよ…なんとか」


肩から生えるように長く伸びる破片を、

邪魔にならない程度で霊夢は一旦叩き折った。

破片を抜き、とりあえず程度の止血を済ませ、

余った包帯を少し雑に巻いて急いで外に出た。

全員がそこから走って飛び出した直後、

そこを潰すように上のレストランが崩れていった。


「間一髪ね…」

「…霊夢、周りを見てみろ。まるで廃墟の街だ」

「…こんな…こんな事って……。

諏訪子様達は大丈夫でしょうか…」


辺り一面を高層ビルの廃墟がそびえ立つも、

道路は小さな建造物の残骸が覆うように転がり、

頑丈な建物以外は全て吹き飛んでいた。

気がつけばそこはよく通っていた大通りだった。

しかしその賑やかな雰囲気は完全に途絶え、

人類が絶滅したような脚が竦むほどの光景となり、

行った覚えのある建物や好きだった店が消え失せ、

早苗は先ほど人々の死を願ったのを後悔した。

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