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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
176/245

女神の軍隊

1人の兵士が相手の兵士を射撃し撃ち倒した。

辺りには戦車の残骸や両軍の兵士の死体など、

それらが辺り一面の基地の広場へ転がっている。

自身が倒した相手の頭を何故か掴んで持ち上げ、

隣にいる同軍の兵士に話しかけている。


「これで全部か…?」

「起き上がる奴もいるかもしれない。

1人ずつ脳天撃ち込んでおけよ 」

「ああ…分かってるよ」


ミサイルが遥か上空を飛んでいる最中の地上、

基地の広場にて戦闘が起こっていた場所で、

統制の無くなった軍隊はもはや相手ではなく、

ほんの数分で流石に自軍にも被害を出しつつも、

永琳の軍隊がA国の軍隊を全て鎮圧し終わった。

戦火が広がる事もなく終わったおかげで、

民間人への被害は皆無だった。

兵士は引き金を引いた。だが弾切れだった。


「すまん、弾をくれないか?

ピッタリ撃ち切ってた、ある意味危なかったぜ」

「って言っても俺ももう無い。ナイフでやれ」

「チッ…グロい事させるぜ、ったく」


勿論A国の軍隊の方が戦力もあり、

それ相応の被害や消耗も酷いものであった。

生き残った人間や戦車の残弾数も僅かだった。

その光景を見つつ、鈴仙が八意 永琳へ話しかける。


「八雲 紫が血を流していましたね…。

あれは一体…どうやっていると思います?」

「身体に血液を入れていたか…

その身体の場所が別の人物のものか…

死の灰が人間の細胞を取り込んだ時に、

死の灰と人間の細胞の中間の存在に変化した…。

何故、何の理由があるのかは分からないわ。

彼女が痛がってたのはただの幻覚よ。

本人は演技のつもりだろうけどね…」


永琳は軍隊の撤収等の指示を部下に命じた。

その時はまだあれが落ちてくるとは分からなかった。

一目散に逃げたマスコミが戻ってくる前に、

永琳の兵士は死体や瓦礫の撤去を取り掛かる。

そして2人は上空を飛ぶミサイルを眺めている。


「一体死の灰は何故存在するんでしょう…。

夢を叶えるもの…あるいは絶望を生み出すもの。

手にした人物がそれを選ぶだけの話…ですか」

「死の灰のほとんどは八雲 紫の元にある。

彼女がそれを次空間移動でほぼ失っている。

それを手にする為にミサイルを彼女が飛ばした…。

光を浴びた人を殺すと灰化する仮説を…信じてね」

「動かないで…!」

「っ……あなたは…」


結界に封じ込められているアリスの隣に立ち、

永琳へ右手を向けるさとりの姿があった。

周囲の兵士がそれに反応し彼女に銃を向けるが、

その向けた全員が弾切れを起こしていた。

それを彼女は予め知っている上で行動していた。


「なるほど…あなたの能力が活躍したわね」

「彼女を解放して下さい。

私にはあなたを撃つのに、躊躇いはないです」

「躊躇いはないのが当たり前でしょう?

わざわざ言ったって事は嘘を隠す為ね」

「っ……」

「いいわ、私もあなたを殺す気はない」


永琳は自身が展開した結界を消滅させた。

中に倒れ込んでいるアリスをさとりが抱える。

封じられてから攻撃されていないのが、

彼女の全身が無傷であることで証明されたものの、

まだアリスの気力が戻るまで時間が掛かりそうだ。


「…あなたはあれで何をする気ですか。」

「あれを打ち上げたのは私じゃないわ。

妹紅が、あるいは八雲 紫、桐初 颯花の誰か、

彼女達の誰かが打ち上げたのよ」

「…。…嘘ではないようですね」

「でも待って…なんで殺さないのかしら?

今まで攻撃してきたくせに、なんで…?」

「アリス…もう動けるの?」

「ええ、少しだけね」


アリスはさとりに抱えられたまま、

あまり彼女に負荷をかけない体勢で話しかける。

まだ彼女は人形もまともに動かせないが、

疑問になった事を聞かずにいられなかった。

後でさとりに理由を聞けばいいものの、

気になった事はすぐに知りたいと思ったからだ。


「今までのは八雲 紫の指示よ…。

私達は全部…存在も彼女に利用されていたのよ」

「…」


アリスはさとりへ向き、彼女の顔色を伺った。

一瞬さとりはそれに戸惑った表情を見せるも、

嘘はついていないとはっきり言葉を発した。

とりあえずアリスは魔理沙の居る方へ行こうと、

先ほど八雲 紫と戦っていた場所を振り返った。

しかし、そこには出血等の痕跡しかなく、

既に魔理沙達の姿は消え失せていた。


「魔理沙…?居ない…殺られた…まさか…」

「居ませんね…。何処に行ったんでしょうか」

「まさかだと思うけど…あそこに…?」


アリスはゆっくり腕を上げ、指を空に指した。

その指が指した方向にはミサイルがあった。

さとりはそれを可能性は無くはない、が、

今向かっても流石に無駄だろうと思っていた。

しかし、そのミサイルから黒い点が飛び立ち、

こちらへ高速で向かって来るのが見えた。


「魔理沙…良かった…」

「…」


魔理沙がその基地にいる2人が視界に入ると、

彼女はすぐにそこへ方向を変え、地面に降り立った。

箒を降り、チルノを抱えたまま駆け寄った。

そのボロボロな魔理沙の身体の状態、

魔力が既にギリギリな状態だという事が分かり、

アリスはとても心配そうな顔をしている。


「アリス!さとり!無事か!」

「ええ、問題ないわよ、けどあなた… 」

「これはいい、早く……あれを止めないと…!!」

「…魔理沙さん…それは流石にまずいですね」


魔理沙の頭の中を見て伝えようとした事を、

すぐに理解した彼女も焦りの表情を浮かべる。

そして全員がミサイルへ振り返り見た瞬間、

無音のままミサイルは分裂を始めた。

遠くで音が届く前にその状況かが起きている為、

そのすぐ後にそれらしき音が耳に響いた。


「…ッ、なっ……一体何が……!?」

「まずい!あの下はちょうど市街地の中…央…!」

「何ですってッ!?」

「八雲 紫…なんてことを……!」


全員がそれを間に合わないと思ってはいるも、

そのミサイルの場所へ向かおうとしていた。

しかし、彼女達が飛び立とうとした直後、

全員をピッタリ囲むように結界が生成された。

まるで誰かがその場所を見ていたかのように。


「ッ…何をしているの永琳さん……!」

「私じゃないわ……これは…八雲 紫の…!」

「解除出来るだろっ!早くしてくれ……」

「無理です…展開した人にしか出来ないんです…」

「なんだと…こんな大事な時に…」

「師匠を悪く言わないでください…っ…!」


そう言い争っている時もミサイルは落下し、

どんどん高速で落下し、高度を下げている。

地面に直撃するまで残り5分位だろうか。

ミサイルの後方部分は彼方へ飛んでいった。

全員が焦っているが、何も出来ない。

側に居た1人の兵士が慌てて永琳に話しかける。


「代表、あれをどうするんですか!」

「……市街地付近の民間人の避難はいい…

なるべく……あれから逃げるのよ……!!」

「えっ……ですが……!!」

「あれはもう誰にも止められないわ…。

逃げる人がいるほど…被害は減る…」

「永琳って奴、お前何言ってんだよ……!」

「魔理沙さん……私が説明します。

あれは人を殺すだけの兵器ではないんです…。

落ちた時の光が浴びた人間を…

殺さず苦しめる……そんな兵器なんですよ」

「なんだと……!」


それを聞いた魔理沙は永琳へ顔を向かせ、

半ば力の抜けた怒りの表情を見せている。

そんな代物を作った本人である為に、

永琳はそれに否定は出来ないものの、

本当は彼女に打ち上げる気などなかった。

兵士が現場から撤収する中、先ほどの兵士が、

永琳の元へ戦車数台と共に歩み寄って来た。


「代表……私には提案があります。」

「私は…あなた達に死なせる気は無いわ…。

命令違反は反逆罪よ…いいの……!?」

「人が死ぬのならこの命くれてやりますよ。

私はいえ、私達は覚悟があります…」

「やめ……なさい…」

「下から砲撃で落下の速度を下げます。

あのミサイルの外壁なら並の砲撃じゃ壊れない。

怖くない訳じゃないんです…けど俺達にも分かる、

それでもやってみる価値は……ありますってね」


その兵士が戦車の外側に乗り移動の指示を出した。

すぐ側の戦車数台がそれを聞いて動き出し、

全速力で市街地へと向かおうとしていた。

永琳はそれをやめて欲しいと言わんばかりに、

半ば泣き目で止めるように叫んでいる。


「やめなさい…そんなことをしても無駄よ…!」

「止めても行きますよ…私には、

あの市街地には家族が居ますからね……!」

「…待って……!」


その兵士達は永琳から離れていった。

文字通り死にに行くようなものだというのに、

とても怖い思いをしているはずなのに、

彼らは迷っている表情を微塵も見せなかった。

その精神力にさとりは不思議なものを感じ、

時代が違えば永琳はいい代表になれたと、

そう心の底から思っていた。

しかし、その勇敢な彼らの後を追うように、

撤収したはずの軍隊が全員と呼べるほど、

永琳の隣へ脚を戻してきた。


「まさか……あなた達も…!」

「彼らにだけいい思いはさせませんよ…。

私達にだって避難指示くらいは出来ますからね。

あなたがそこから出られないのは分かってます。

だから……俺達が責任を取ってやり遂げます」

「…」


彼らもまた市街地へ向かい始めた。

前方で彼らを待つように、先陣が待っている。

それに躊躇うことなく、彼らはその場所へ向かう。


「……待って!!」


その永琳の声に一同は止まった。

そして、深い深呼吸をした後、永琳は言った。


「なんであなた達はそれが出来るの…?

怖いのに……立ち向かうことが出来るの…?」

「……この国に生まれた誇りってヤツですよ。

みんなで、無事に帰ってきますよ。

俺達には、八意 永琳っていう女神がいますからね」

「…」


そして軍隊は総動員してその場所へ突き進む。

怖くとも兵士同士で励ましながら進んでいる。

全員、一度たりとも脚を止めることは無かった。


「なんて奴らだ…彼らの勇気に恐怖すら感じるぜ」

「魔理沙さん…」

「でもな、なんだか凄く頼もしい…いい奴らだ」


魔理沙が彼らの背中を見ながらそう言った。

後々、さとりもアリスも賛同の声を上げたが、

鈴仙と永琳はいつまでも暗い表情をしていた。



「よーし全員配置につけ、お前らは避難指示だ!」

「はい!」

「なるべく1発ずつ的確に撃つ!いくぞ!」


戦車が道路を通り、ミサイルの真下に着いた。

そして砲身を高く上げ、ミサイルを睨みつける。

彼らの周囲にはまだ残った民間人が居たものの、

避難指示をする前にある程度避難していた。

残りの人間の避難誘導に早速取り掛かる。

流石にそこにいつまでも残っているほどの、

馬鹿な、あるいは忍耐強いマスコミは存在せず、

彼らの行動を邪魔する者は居なかった。

その最中にも戦車の砲撃音が響いている。


「まずい、止まらないぞ……!」

「どうせ壊れないッ全弾ぶっぱなせッ!」


そして連続に砲撃が続き、上空が煙で覆われた。

止まったか分からないはずなのに、

その状況が見えない状態のまま彼らは理解した。


「まずい、結界が張られて攻撃が通らない…!」

「あそこにはA国の奴もいるってのか…!」

「クソッ…撃て撃て撃てぇーーッ!!!!」


当然のようにその結界は破られず、

ミサイルはとうとう彼らの目の前まで迫ってきた。

それでも攻撃は諦めずに最後まで続いていた。

複数の兵士は咄嗟に閉鎖空間に逃げ込んだ。

しかしほとんどは棒立ちで無心状態だった。

そして、眩い光と風圧に彼らは包まれた。

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