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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
170/245

市街地にて

「みなさん逃げてくださいっ!

下手したらここにいても死んじゃいますよ!?」

「って言われてもな…」

「そんな言葉信じる奴いるのかよ?」


霊夢達がいる基地のすぐ近くの都市部にて、

そこに何故か早苗は大通りで叫んでいる。

そもそも何故ここにいるのか、更に何故最後まで、

霊夢達に同行しなかったのか、時は数時間遡る。


「万が一よ、あっちで戦闘になったとして…

あなたを私達が護り切れるとは限らないわ…」

「それでも…私は救うって…決めたんです…!」


ある程度大きな神社から飛んで移動するも、

霊夢と手を繋がなければいけないほど、

早苗の単体の飛行速度は遅く、未熟過ぎていた。

そのせいで時間がかかってしまう為に、

更に急がなければならない状況であり、

足を引っ張っているのは彼女も分かっていた。

それでも彼女は自分が助けたいと思っているが、

魔理沙はさすがに反対意見を述べた。


「やっぱり私は反対だ…早苗はまだ、

飛ぶ能力が不完全過ぎてまともに飛べてない。

桐柄を抱えて逃げろって言っても出来ないだろ」

「でも…早苗に助けさせたいの…!」

「人の命を…理想で救けるのはやめろ、

それで何人死んできたと思っている…霊夢」

「確かにそうだけど…!」

「私ももちろん誰も死なせる気はない。

だから出来るだけ…確率は上げたいのさ」


こう立ち止まっている時も時間は進んでいく。

魔理沙の箒で移送する事も出来たかもしれないが、

真瑠自身が3人乗りは無理だと言い切っていた。

全員が黙り込み、空気が重くなっている時、

さとりがその状況を変えるように言った。


「確かに早苗さんには助けたい思いがありますね。

けれど…もしもそれで死んでしまったら…

あなたは責任を…とることが出来ますか?」

「…」

「私はあなたを責めている訳では無いんです…。

私も…魔理沙さんの方法なら救える気があります」

「…」

「あのマスコミに捕まってる二人には悪いですが、

やっぱり戦地に戦闘慣れしてないあなたを、

送り出すのは…無駄死にして来いって奴です」

「…」


その2人の言葉に返す言葉が早苗にはなかった。

さすがにこれ以上彼女は申し訳ないと思い、

彼女は頼むように身を引いた。


「…。…分かりました。こんな所で維持張っちゃ…

彼女になんか悪いですよね…」

「すまない、悪く思わないでくれ…

でも、絶対お前んとこに生きて返すからな…」

「…はい」


その早苗を置いてすぐに向かおうとした直前、

アリスはある事を早苗に頼み込んだ。


「だったら…もしも私達の今真下にある市街地で、

もしも戦火が広がる可能性があった時…

あなたには避難指示をしてもらいたいわ」

「…私に…ですか?…出来るでしょうか…」

「とりあえず護衛用の人形をお供させるわ。

何か起きた時、あなたが頼りになるわ」

「…はい、頑張ります」


アリスは一体人形を早苗に取り付かせ、

そして大通り中央の大きなテレビの生中継から、

その状況を確認して動いて欲しいと頼んだ。

もちろん断る早苗ではなく、了承してくれた。

そして早苗は彼女と別れ、別行動をしていた。


しかし、戦闘で中継カメラが壊れたせいで、

向こう側の状況を確認出来なくなった彼女は、

慌てて大声で避難を叫ぶも、民衆は動かない。

それどころかたまたまそこにいるマスコミに、

囲まれてしまったりと散々な目にあっている。

それでも彼女は避難を叫んでいると、

その中継カメラの映像は突然復活した。

画質が悪く、スマホか何かの映像を通している。

わかりずらい映像だが、戦闘が起きている事は、

誰から見てもわかるほどだった。

その状況に避難する民衆も3割ほど居たものの、

さすがにほとんどは動いてくれなかった。


「あそこには代表がいるから大丈夫だ」

「確かに近いけどここまで被害は来ないわよ」

「逃げるだけ労力の無駄だ」


いつも通り、人の流れが止まらず動いている。

まるでテレビの向こう側を外国のように、

他人事のように済ませていた。

さすがにこれ以上は早苗は何も出来ない。

ただ彼女の目の前に戦闘の映像が流れ続ける。


「いったい…どうすれば…」


そこへ血に染まる桐柄を抱えて急ぐにとりが、

全力で奮闘する中早苗が視界に入った。

とりあえず彼女の元へ生存確認をさせに行った。


「早苗……だっけか、とりあえず生きてるよ…

あえて言うなら…今は生きてる…だけど」

「…!?りえッ!」


早苗は桐柄に呼び掛けるも、反応はない。

しかし、心臓の鼓動も呼吸もあり、

あとは止血が間に合えば助けられる。

早苗は頼まれた事を忘れ、彼女の救命を急ぐ。

しかし、見張っていたマスコミには容赦などなく、

その死にかけの彼女を病院へ連れて行けないほど、

3人の周囲を囲み、カメラのフラッシュで照らす。


「あなたは早苗さんですね?」

「今どういう気持ちですか?」

「こんな所にいて大丈夫なんですか?」

「何やってんだよ!こいつ死にかけなんだぞ!」

「駄目…まるで人の心を感じられない…!

いまの状況を見てわからないのっ!?」


そう言い放つも、一言も聞きはしてくれず、

更に周りを囲む人間は増えていった。

世の中にはこんな人が大勢もいるのかと、

早苗の中に絶望感が生まれ始めていた。

さすがに民間人相手に、

人形は手に持つ刃物を使うのを躊躇っている。


「どうして……どうしてっ!?」

「駄目だよ早苗、これが世界の真実と思うな!

こんな奴らいるとしても少数だ、惑わされるな!」

「離して下さいっ!私の家族がっ!!」

「その人物は先ほど中継されてた人ですよね?

殺されて当然な人をどうして助けるんですか?」

「ふざけんな!死んでいい奴なんかいやしない!」

「それって偽善ですか?なぜそう思うんですか?」

「理由も何もあるか!通せそこ!死んじまう!」


カメラのレンズに血が付着する時は拭くものの、

服にかかろうとどうでもいいと思っているらしい。

ただひたすら3人に質問攻めが続く。

だんだん早苗の拳を握り締める力が強まり、

そろそろ精神的に限界を感じている。

しかし、その状況を打開してくれる人物が来た。

霊夢が上から最も威力の小さい霊符で、

彼らが持つカメラを全て壊していった。

威力が小さいのは後々騒がれない為である。

それに彼らが頭を抱え困惑している時に隙を見て、

2人は飛び上がり難を逃れた。


「にとり!何でまだここにいるのよ!」

「文句があるならあいつらに言え!」

「早く!早く!死んじゃいますって!!」

「喋る暇はない!急ぐぞ!」

「早苗!置いて行くわよ!」

「そんな!?私1人でもある程度飛べますよっ!」


その哀れな彼らを見下ろしながら、

彼女達は急いでその場から離れていった。

自分が頼まれたことだとしても、

助けてあげようとした人物達がこんな人であって、

半分程度ながら避難してくれなくて良かった、

そう心から早苗は思っていた。

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