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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
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上空の大地で

「このミサイルがちゃんと落ちれば…

あの国はほぼ…完全に崩壊する…。

世界屈指の軍事国家が消えれば平和は近い…」

「人の死で世界の平和を生み出すなんて…!

そんなの許されるわけないわ…絶対させない…!」

「個人の意思が世界に反映されるとでも?

世界を変えるには力だ…歯車は力が原理で動く」


本体は正面から突撃し、躊躇いなく殴りかかる。

仮に颯花の本体から飛び出た優しさを略して優花、

優花は防御もせずそれをまともに喰らった。

勢いで吹き飛び、ミサイルから落ちそうになる。


「力だけが全てじゃない…たとえ少しずつでも…

咲夜達に…平和な日々が暮らせるように…!」

「そんなゆっくりでは先に寿命で死ぬぞ?

物事は結果でしか…何も変えられない……!」

「人を殺してまで生き返らせたとしても…

彼女達はそれを知れば…悲しんでしまう…!」

「まるで生き返らせることが出来るかのように…

たとえどんなに残酷なやり方だろうと…

私は再び友人と会えるのなら…それでいい…!」


それを優花は完全に否定するかのように、

彼女は立ち向かう為の刺剣を手に取った。

両足を広げ、強く足場を踏み締める。

その姿は怯えることもなく前を見つめている。


「へぇ…優しさで出来たお前に私を斬れるか…?

優しさには…強さが無ければ何も出来ないのに…

その強さを自ら切り捨ててしまうのか…?」

「想いのない強さなんて要らない…!

本当の優しさは…強さと比例して強くなるから!」

「なら…その目指す信念とやらで…

自分自身という名の壁を…叩き斬ってみせろ…!」


そして本体も自らの意志の形を模した剣を手に、

目の前の自分の壁を叩き斬り捨てようとする。

その鍛えてもない人間の身体の優花は、

おぼつかない足取りで重そうに刺剣を振り回す。

遅く、そして威力もない攻撃を、

本体はものともせず腕を掴んで上から押さえつけ、

そして相手の持つ剣を上へ弾き飛ばした。

その剣は優花のすぐ隣りに落ちて突き刺さった。


「言っただろう…優しさだけでは何も出来ない」

「まだ……負けた訳じゃないっ!」


優花は本体を何故か優しく両腕で突き飛ばした。

力が弱く、あまり遠くへとも飛ばせなかった。

勝ち目がないとしても、彼女は阻む壁に抵抗する。


「意地を張るな…次こそ…お前は死ぬ」

「こんなやり方で…咲夜が喜ぶと思ってるの!?」

「今この世界に…正義はない…私もお前も。

それとも…この世界の全てを受け入れ…そして、

全てが終わるまで…お前は戦い続けるのか…!!」

「それが…私達が勝手に決めた…友との約束。

私が生まれた意味を持つ為の…生きる理由…!」

「…正義の味方にでもなったつもりか…?

私達は…存在しちゃあ……いけなかったんだよ!」


本体は再び優花の頬を殴り飛ばした。

しかし、優花は強く腕を掴んで力を弱め、

多少自分に喰らうも、その攻撃を受け止めた。

そして自分の元へ引き寄せ、至近距離で訴える。


「そうさ…存在しちゃいけないのなら…!

それ以上…他人を傷つけてはいけない…!

私は正義の味方にも…英雄になったつもりもない…

私は…私の信じる道へ進むために戦うッ!!」

「自分と話すのは…忘れた自分を思い出させる。

それが正しかった事も…間違ってた事もッ!!」


本体は優花の腹部をいつも通り躊躇いなく蹴るも、

何故か本気を出せず、力を緩めてしまった。

それでも痛がる優花を今度は強く突き放せた。


「クソッ…情が移ったか…私も甘いな。

こんな余計な存在にさえ躊躇ってしまうのか」

「…あなたにも理想はある…想いもある…!

ただひとつ私と違うのは…理想の為の課程…!

どうしても…その方法しか思いつかないのッ!?」

「それが…私の中の最善策だからだ。

お前も分かっている筈だ…これしかない事をな」

「…」


優花はそう言われると同時に黙り込んだ。

彼女は下を向き、何かを考えている。

それに本体は冷めた言葉を言い放つも、

大きなため息をついた後、優花は想いを伝える。


「ふん…何も言い返せないだろうな…

それが…お前が私である証拠さ…そうだろッ!!」

「これは言い返せないんじゃない…

まだ……答えは決まったわけじゃないから!!」

「…。答えは決まっていない…か。なるほどな…

私が……間違っていたのか…この方法では…」

「そう…それじゃあ駄目なの…だから…

私を……相手を想う自分を…受け入れるのよ…!」


優花はまたひとりの存在として戻れるように、

模倣能力を終了し、右手を前に差し出した。

そのぎこちない優花の笑顔を本体は見つめている。


「……お前は…これが私じゃなければ死んでいた」

「ッ……何を……!?」

「私は何も、間違ってはいないということだ」


本体は優花のその手を弾き、右脚で蹴り飛ばした。

彼女は体勢を崩し、そのまま転び落ちてしまった。

飛行能力のない彼女はただ重力に引かれ、

ミサイルから姿を消していった。


「どうして……どうして受け入れられないの…」


そのまま落ちていく彼女は何も出来ず、

ただ瞳から涙がこぼれ落ちていく。

その涙は自分が死ぬことへの恐怖ではなく、

分かり合えなかった事への悲しさからだった。

そのまま、孤独のまま彼女は瞳を閉じた。


「…大丈夫……?」

「ん…。…君は……チルノ…ちゃん……」


そのまま落ちていく彼女をチルノが受け止めた。

自分よりもボロボロな彼女に助けられていて、

どこか申し訳ない気持ちになっている。

隣りには魔理沙も居て、ミサイルを追っていた。


「お前が打ち上げたんじゃないのか……?」

「…確かに…引き金を引いたのは私…

だから……私を…彼女を止めてあげて下さい…

無責任なのは分かってる…けど…私には力がない…

それでも……悲劇は繰り返させちゃいけないの!」

「…。私はお前が嫌いだ。お前自体が、

どこも…全て嫌い、好きなところ何一つもない」


その言葉は彼女の顔を見れば分かるほど、

嘘をつかず自身の真実を優花に伝えていた。

魔理沙の冷たい目が優花を睨みつけている。


「…」

「けど…お前を殺せば霊夢が悲しむ。

だから…お前だけは罪を償うまで死なせない…」

「魔理沙…さん……ありがとうございます」

「チルノ…そいつを渡せ、箒を二人乗りで行く。

こいつを下には行かせない。ちゃんと償わせる」


チルノは彼女を箒へ乗せてあげるも、

戸惑いの表情を見せている。

再び人間のようになってしまった彼女には、

戦うことすらままならないからであった。


「でも…まともに戦えそうな状況じゃ…」

「こいつは口だけは達者だ。

念のためだが…相手との対話をさせてやる。

戦うだけでは…私達だけでは勝てないからな…

あの…紫って奴に…。霊夢は殺さないでと言った。

だから……私はあいつも絶対殺さない、絶対な」

「…じゃあ…このまま行こう、魔理沙…

打ち上がってしまったのは変えられないけど…

あれを海へ落とせればいいからね…」

「ああ……このまま何もなければな」

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