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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
161/245

機械仕掛けのその脚で:3

場所はテレビの向こう側に移る。

男に変装した紫と片腕を斬り離された桐柄が、

広間のような、滑走路のような場所で、

2つの軍隊に囲まれた状態で向かい合っている。


「…そんな状態にされても、

まだ黙秘を続けようというのか?」

「…」

「…。居場所を言えば、救けてやると言っている」

「…」

「…膝を潰せ」


紫の隣にいた兵士が持っている銃を膝に当て、

そのまま躊躇いなく引き金を引いた。

当然のように貫通し、更に彼女は出血した。

しかし、既に意識が朦朧としている為に、

大きな叫び声すらあげることが出来ない。


「…ぁ……」

「ん?言う気になったか?」

「…。…私は……勘良い方…だから分かる…

どうせ…私は殺され…これを報道してるのも…

皆さん達を…おびき寄せる為に…」

「ああ、そうだ。しかしひとつ違う。

報道しているのはそれだけの理由ではない。

世界中が、君達の死を願っているからだ…

あの悲惨な事件と犯人ともに関係ないとしても、

犯人と面識のある奴は同罪だ、死んで償えと。

この人の世界はそう願っている。もちろん私もだ」


貫通した銃弾は椅子の脚にも命中し、

多少動いただけでバランスが保てなくなり、

そして椅子ごと彼女は倒れ込んだ。

そんな状態でも、彼女は思っている事を告げる。


「…例え…見た目が中学生みたいな子だろうと…

ただ楽園(あそこ)に住んでいるだけで…

まるで当たり前のように…罪だなんて…!

責任逃れ…する訳ではないです…けど…!

私は皆さん達に…面識はあまりないんですよ…!」

「君は世間で既に顔が知られている桐初 颯花を、

あろうことか大通りのど真ん中で蘇生した。

死んで当然であろう人物を簡単に蘇生したのだ。

面識はないとは言いきれまい、そうだろう?」

「ッ…」


紫はしゃがみ込み、そして彼女の髪を掴み、

持ち上げた彼女の耳に口を近づけ、

朦朧としている彼女にそう聞こえるように言った。

しかし、彼女はそれを理解しようとしない。


「死にかけの人間を救って何が悪いんですか!?」

「だからといって…犯罪者を救うお前もお前だ。

世間が悪と認めたものは、悪として裁かれて当然、

例えどんな事情があろうと…どうでも良いんだ」

「…私だって…あの事件で…!

顔も知らない親2人を失ってるんです…!

妹だって居たらしいんです…顔すら知らないけど…

私だって…被害者なんですよ…!」


紫は手を離したのと同時に、

そのまま重力に引かれ桐柄は頭部を強打する。

しかし、紫はその状態の彼女を頭を、

じっくりと痛みつけるように踏み付ける。


「世間はお前が被害者と訴えても、

そんな犯罪者の言葉を聞くほど優しくはない。

恨むなら、関わった自分自身を恨みたまえ」

「自分自身を恨むなら…いくらでもやりますよ…

でも…憎しみだけで行動するのは間違ってます…!」

「憎しみだけで行動することに…

なんの、どんな間違いがあるというのだ?」

「そんな一生…悔いしか残らない……ッ!」


それを言った瞬間に、踏み付ける脚は力を弱め、

桐柄から足の裏を離した。

しかし、それだけでは終わらなかった。

紫はそのまま彼女の顔を蹴り飛ばす。


「憎しみで動く前から既に後悔している…

奴を…アレをされる前に殺せば良かったとな」

「ッ…」

「…言っても分からない奴だ…もういい。殺せ」


そう紫は兵士に告げたが、

その隣にいる兵士は動く気配がなかった。

振り向くと、立ったまま気絶していたのだった。

その大柄な兵士の真後ろに隠れるように、

そこには直った刺剣を手に持つ颯花が居た。

周囲を遠くから囲んでいる、テレビのカメラが、

全て桐柄から颯花へ移った。


「…」

「…来たか、哀れな人形君」

「…。私こそ本当の加害者。他は全て被害者。

だから、あなたも被害者だった」

「だった?」

「被害者だからといって誰かを傷つけてもいい、

そんな考え、人間として違うと思うわ」

「ほう?では指をくわえて犯人の寿命を待つと?」

「…違うそう言いたいんじゃない…

誰かを傷つけてしまっては、あなたも同罪」

「悪を傷つけて悪だと?生ぬるいな…」


颯花はさきほどから寄りかかる兵士を倒し、

一本ずつ紫へと歩み寄っていく。

まだ慣れない機械仕掛けのその脚でも、

ちゃんと大地を迷いなく踏み歩いている。

そして刺剣を紫へ真っ直ぐと向けた。


「悪を傷つける前に…他の人間を巻き込んでる!

それで…それで自分が1番正義だと思わないで!」

「顔も似れば性格も似るのか…。

光と影の光しか見ていない貴様らに、

本当の影の何が分かるというのだ!」

「だから…!人の心に光を見せてやるのよ!

復讐だけで世界を救えないと、例え綺麗事でも!」

「綺麗事だけでは…それでは世界は救えないぞ!」

「それでも世界と人の心が、閉ざされるよりも!

少しずつ人類全体が分かり合えるのなら!私は!」

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