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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
160/245

機械仕掛けのその脚で:2

大きな神社にて早苗は目覚める。

彼女の生活は桐柄が居ない以外、

いつも通りの普通の生活が始まる。


「(昨日買い物し忘れたとか言ってたし…

たぶんそれで外出、したんでしょうね)」


少し疑問になってはいたものの、

すぐに帰ってくるだろうと軽く考えていた。

しかし、早起きして毎日欠かさず行っていた、

神社の1人大掃除はされてなかった事や、

玄関に靴が残っていた事に対して少しずつ、

彼女は疑問が心配へ変わっていった。

そして諏訪子や神奈子達が起きて来て、

いつもの通りにテレビに電源が入った。


「っ…!?」

「っ…!?」


2人は思わず机を蹴飛ばしてしまうほど、

立ち上がってしまうほどそれに驚いていた。

神菜子がすぐ隣の台所にいる早苗を呼び掛ける。


「早苗…これ、見なよ」

「…これは……」


それを聞き料理をしている手を止め、

一目散にその部屋に向かった。

そして、そのテレビはとある光景を映していた。


「……桐…柄……!?」


そのテレビは例の基地の広間のような場所に、

そこには椅子に座らされている桐柄が映していた。

そして彼女の周りに武装した2つの軍隊と、

例の変装した紫と永琳と鈴仙、

そして妹紅が2人共揃っている妙な光景だった。

テレビの右上には、

『 あの悲惨な事件の犯人の仲間拘束から処刑に至る 』

そう書かれていた。

つまり彼女が颯花を救けた時に撮られた写真が、

ネットを通し拡散、家まで尾行されていた。

もともと颯花が世間に悪く知られていた為に、

彼女もあの事件の犯人の仲間であり同罪という声が、

世界中に拡散していった結果であった。

早苗は冷や汗と同時に神社を飛び出そうとしたが、

既に神社の周辺にはマスコミ等、

大勢の人間達が取り囲んでいて外に出られなかった。


「落ち着け早苗、今の私達じゃあ何も出来ない…」

「離してください神奈子様!

落ち着いていられる訳ないじゃないですか!

処刑なんて書かれているんですよ!

もうすぐ殺されてしまうんですよ!?」

「焦って動いてみな…私達まで犯罪者扱いされる」

「もうそんな状態じゃないですか!

それに…よく桐柄を見てくださいよ!

右腕が……右腕が切り落とされているんですよ!?」


2人は再びテレビを見直している。

桐柄の足元には彼女のものらしき腕が転がっていて、

彼女自身と椅子が紅く染まっている。

普通ならばこんなものはテレビに映されないだろう。

しかし、あの大量殺人の事件は普通ではない。

あの一件で大きな憎しみを生み出していた。

その憎しみはただ犯人の死を願っていた。


「じゃあ…どうするっていうのさ…」

「早苗…神奈子の言う通りだよ…

私達が助けにいったら…この国には居られない」

「…」


3人は口論になるほどどうしようもなく、

ただテレビからの光景を眺めることしか出来ない。


「……霊夢…さん達がいる」

「なっ…まさか…?」

「…あんた、他所の人間を巻き込むのかい?」

「…でも…絶対救けに行ってくれます…!

彼女に…もし、断られても…私1人でも行きます!」


早苗は再び裏口へ駆け走り、外へ出ようとする。

しかし、それを2人は押さえて離さない。


「なんでですか!?助ける為に拾った命を、

自分達の人生の身代わりにするんですか!?」

「そんな訳ない!助けられるなら助けるさ!」

「そう口だけしか…

2人は言えなくなってしまったんですか!?

所詮…神にとって人はただの道具なんでしょう!?」


それに神奈子は早苗の頬を叩きそうになるも、

取り押さえている諏訪子が後ろで首を振る。

それを見て仕方なく、言葉で返した。


「…道具だったら死にかけの命は捨てているさ!

道で凍えて死にそうな彼女を救ってあげたのはね、

自己満足の為じゃないんだ!

助けたいと思ったから助けたのさ!」

「だったら……また…救ってあげて下さいよ…!

もう…桐柄は他人じゃない…家族なんです…!」

「…」


それと同時に、諏訪子の押さえる力は弱まった。

早苗がゆっくりと外へ出ようとするが、

2人はそれを追って向かおうと出来なかった。

普通なら、それは間違ってはいない。

必死に止めようとするが、声が出なかった。

彼女を止めようと、2人は手を指し求めている。

そして、裏口の扉を開けた。


「あんた達…やっぱりまだここに居たのね」

「……霊夢…さん」


扉の向こう側には霊夢が立ち止まっていた。

彼女はやけに怒っているような表情で、

3人をただ見つめていた。


「あんた達は所詮人の命なんて、

どうでも良いと思ってるんじゃないの?

だからまだここにいるんでしょ?」

「違っ…それは……!」

「だったら…相手の命が懸かってるんだったら、

自分の命を懸けて助けるのが正しい人間よ」

「…」


説教じみた言葉に、更に3人は表情が暗くなる。

それを見て、霊夢は長いため息をついた。


「…遠回しで聞こうと思ってたけど、

時間の無駄ね…だから、はっきり言うわ」

「…」

「…あなた達は彼女を助けたい?」

「……。…………はい」


そう言いつつ、早苗は小さく頷いた。

それを聞き霊夢は目の前にいる早苗の頭を、

やたら強くお祓い棒で殴った。

早苗はその行動に困惑した表情を見せている。


「私達は最初から助ける気だったわ。

もちろん貸し借り付きでね…命を懸けるからね。

…………だから、今のこれでチャラよ」

「……霊夢……さん…!」

「行くわよみんな!隠れ家第1アパート組、

総動員してあの子をあそこから助け出すわよ!

異論なんか聞かないわ!みんな生きて帰るわよ!」


霊夢がお祓い棒を掲げ叫ぶと、

裏口の色々な場所に隠れていたみんなが飛び出す。

魔理沙、さとり、アリス、それに文。

人数は少ないものの、戦力は充分である。


「アパートって…ネーミングセンスないぜ、霊夢」

「うっさい魔理沙、殴るわよ!」

「チルノは橙の相手をしてくれています、

颯花もにとりと一緒に後で来るって言ってました」

「ありがとうさとり、とりあえずこれだけいれば、

戦力的には問題なさそうだし…

後は人の目につかないように飛べれば…」


裏口の近くにもマスコミやら人が集まっている。

このまま飛べば見つかってしまうだろう。


「それなら私達が玄関で時間を稼ぐ、

早苗、霊夢達と一緒に行ってあげて」

「諏訪子様…!」

「もしかしてそれってあたしもかい?」

「もちろん、神奈子も一緒に人々とお話するのさ」

「…仕方ない!2人でなるべく注目を集めるわ。

ほら行きな……怪我して帰ってくるんじゃないよ」

「…はい、悔いのないように頑張ります!」


諏訪子と神奈子が玄関に出て注目を浴びている最中、


霊夢達は一気に例の基地まで飛び立った。

時間は刻刻と過ぎていて、

もうすぐ時間が経過すれば桐柄は死んでしまう。


「……(待ってて…桐柄…!)」



「……あんな人…死んじゃえばいいんです…」

「…」


場所は隠れ家、藍の部屋に移った。

病んだように同じ言葉を繰り返す橙を、

チルノは側にいて励ますが、

目の前にあるそれを見続けている彼女を、

どう言って励ませばいいのか分からなかった。

同じ大切な人を失った同士、

藍が写っている写真を見つめたまま、

彼女達はみんなの帰りをただ待っていた。

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