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東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
159/245

機械仕掛けのその脚で:1

長々と暗い夜空を飛んで移動し、

自分達の隠れ家にやっとのこと2人は到着する。

その入口前まで2人は会話すらなく、

とても気まずい状況になっている。

颯花は何度も謝ろうと努力はしていたが、

言ったところで状況が変わるはずもなく、

喉のすぐそこでつっかえて言葉が出ない。


「…」

「…」


隠れ家の玄関を開けると同時に、

そこににとりが街から帰ってきた。

颯花の脚を見て驚いていたが、

彼女はその2人が気まずい状況なのを察し、

それを楽にしようとさとりと状況を入れ替える。


「…颯花、その脚の義足の為に、

私の部屋に来てくれ。すぐ終わるから、な?」

「…」


颯花は返事をしないまま頷いた。

そしてさとりが肩を貸しているのを入れ替わり、

そのままにとりの部屋へ2人は移動する。

別れる時も何も言わず、さとりは部屋へ入っていく。

そしてにとりの部屋に入り、

ベッドに颯花を降ろすと同時に、

にとりはその気まずさの原因を聞き出す。


「…何があったか教えてくれ」

「…。私が無理に妹紅と対立して…

あいつが…この組織から出ていったんだ…

私のせいで…さとりはまた仲間を失った」

「…」


にとりは背中の緑色の鞄を下ろし、

そこから部品と工具を取り出して、

義足と思われるなにかを造り始めた。


「…その妹紅はなんて言ってたんだ?」

「…私の身代わりになって…

ミサイルを飛ばす燃料として…その身を尽くせ。

そのミサイルを飛ばせば…やがて始まる、

世界規模の戦争を止められるんだと…。

確かにあいつは間違っていなかったかもしれない。

でも…まだ戦争は始まるなんて決まってない…

私みたいに…急ぎ過ぎたんだ…」


それを聞き、颯花のことも妹紅のことも、

にとりは責める事はなかった。

ちゃんと話せば丸く収まると思っている。


「…それをさとりは知っているんだろ?

なら…ちゃんと分かり合えると思えるんだけど」

「…別世界の妹紅を知ってるだろ?

あれと同じで…話で決められないなら…

ぶつかり合えば…分かってくれると」

「…」


でも、彼女は違かった、彼女は自分の意思を貫いた。

それが世界を見て回った彼女の答えだった。

今にも世界中で多くの人が死んでいる。

しかしその人が救えなくとも、

これからの全ての人の未来を救えるのなら、

どんなに人が死んでも構わないと思っている。

それがどんなに酷い事だろうと、

それで戦争が止められて、途絶える命を救える、

戦争を始める人を殺して、人を救う。

それが彼女の思っている最善策だった。


颯花は人を殺して人を救うのは間違ってはいない、

そこだけは思っていることは同じだった。

しかし、その殺す相手が、罪のない人間なら、

それはただの人殺しと変わらないと思っていた。

必ずしも人を殺して人を救う、

その方法しか人を救えない訳ではない、

もっと多くの人を救い、人を殺さない方法もあると、

そう自分の中で言い聞かせている。


「お互いに間違っているとは言えない…

この意思と意思のぶつかり合いのせいで…

分かり合うという簡単なことが、

人間同士には出来ないのは…悲しいと思うよ。

でも…それを無理に力で解決するのは良くない…

今の私が君に言えるのはそれだけしかない」

「…」

「別に力があるのは罪じゃない…

その力が、どれだけの人間を救えるのか、

どれだけの人間を殺すのかで変わってくる。

君にとってそれが、人を救う最善策なら、

それを曲げずに意思のまま貫けばいい、

そしてちゃんとみんなと分かりあって、

それが本当に正しいのなら、恐れないで進むんだ」

「…にとり…」


颯花は自分の中のそれを言い聞かせているものの、

それが出来ないから人を殺してまで救うのだと、

そう言われることを充分承知の上だった。

自身がついに人間となったと同時に、

人は死ぬ為に生きているのではないと、

そう実感することが出来てから、

自分が今まで殺してきた人間の辛さ、

もっと生きたかったであろうその人間達が、

どんな思いで死んでいったかを再度心に刻まれた。

その生きる為に生きている人間を殺して、

生きたいけど死にかけな人間を救うのは、

それは犠牲の山で出来た偽りの平和であると。

人間を救う為に殺せば、それを糧にし、

人を殺す人間も生まれてきてしまう。

分かり合えるのは、人にとって最大の課題であり、

知力の高い生物としての唯一の弱さである。

私達は全ての相手と分かり合える時が来るまで、

戦い続けなければいけないのかと、

彼女はそれを、いつまでも考えていた。



時刻は次の日の早朝である。

とある大きな神社にて、呼び鈴が鳴った。


「誰ですか……こんな朝早くから…もう」


扉を少女は開けた。

その扉の向こう側には、異常な光景が広がっていた。

まるで軍隊が攻め込んで来たというような、

武装した大勢の人間が彼女を見つめている。


「…お前には国家反逆罪で死刑確定だ。

大人しくこの世界の為に天に召されたし」

「……えっ何…!?」


複数の人間が彼女を取り押さえる。

抵抗しても、普通の少女である彼女が抵抗しても、

ほぼ無駄な悪あがきだった。

しかし、その暴れている最中、右手が一人に触れた。

その触れられた人間は、瞬間にカエルになった。

一瞬軍隊の人間達は硬直するも、

ほぼ意味のない、先ほどと同じ悪あがきだった。

その暴れている彼女を拘束する最中、

そのカエルは踏み潰されてしまった。

しかし、そんな事は今は関係なかった。


「なっ……何だコイツ…!右手に触れるな!

そのまま取り押さえろ!拘束しろ!」

「嫌っ…離して…!助けて早苗っ……!」


早朝である為、まだ早苗達は起きておらず、

そのまま跡形残されず連れ去られた。

彼女は桐柄であるが、なぜ拘束されるのか、

いまだこの現状では分かっていない。

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