死神と不死鳥と
「ひとりでそんな事が出来れば苦労はない…
世界はそんな単純じゃない!」
そう言いつつ鍔迫り合う剣を押し離し、
ふたりの間の距離を広げた。
妹紅は剣を前に掲げ、殺気立っている。
完全に殺す気で来ている。
「お前を殺してもいい…その時はまた考える。
四又切り取って焼いて傷口塞いで…
文字通り人形にしてもいいんだぞ?
今なら間に合う、さあ私の駒になるんだ」
殺気立っているまま相手へ手を差し伸べる。
しかし、そんな殺す気満々な相手の手を、
普通ならば求めはしない。
「残念だけど私にも意志はあるの、
ましてはあんたみたいな自己中になんて、
絶対、一番殺されたくないね!」
「ならば…ここで…私の人形と化せ…!」
再び妹紅は前へ剣を掲げ威圧している。
しかし、颯花は戦う事を選択し、
それを変えようとも思わない。
逃げる事は出来るが、妹紅を敵にしている為に、
彼女の帰る場所は無くなってしまっている。
話せば霊夢達には分かってもらえるかもしれないが、
これ以上組織の組織の統制を崩してしまえば、
そこを八雲 紫らに狙われかねない。
これ以上仲間の血を流させないと、
彼女はそう考え、離別を選んだ。
しかし自分がまた本当に彼女達の為になるのか等、
さとりに言われた通りはっきり考えてない事を、
繰り返しているのに気付いていない。
まるで彼女自身が慣れてしまっているようだ。
「漆黒に燃える不死鳥と関わる奴を殺す死神…
どっちが強いか…やってやるわ…!」
「死神か…認めているんだな…!
お前のせいで大勢の人が死んでいると!」
「否定をした所で何も変わらない…!
私は…変わらないのなら受け入れる!」
妹紅は背中から燃え盛る炎の翼を生やした。
同時に颯花を1歩退ける程の熱風を放った。
冬の季節が有り得ないほどに気温が上昇している。
少なくとも周囲100m程度の範囲は、
最大で気温40℃は軽く超えている筈だった。
急激に気温が変化したせいで、人間の彼女は
意識が遠のくが、体勢を崩せば余裕が無いことを
妹紅にバレてしまう事を防ぐ為に、
彼女は再び自分を偽る事となった。
「私の炎は全てを焼き尽くす…!
例えどんな強い決意だろうが跪かせる…!」
「死神が…単なる大量殺人の英雄じゃないってこと…
お前の脳裏に…斬って斬って刻み付ける…!」
颯花は即座に動いた。
一歩踏み出したのと同時に、
彼女は行動を開始した。
「咲夜…!また…君の力を借りるよ…!」
「時止めの能力か…!」
両方の模倣能力を咲夜へ変化させ、
止めた8秒を最大限に活用する。
離れた距離の間は物凄い熱気があったが、
躊躇いなくそこへ前進を続け、
刺剣の攻撃範囲内へ入り込めた。
「『針串刺しの刑』だッ!」
そして手に持つ刺剣を時間がある限り、
妹紅のいる前方へ何度も差し込んでいく。
その度に止まった妹紅の身体に穴が空いていき、
少しずつ彼女を更に紅に染め上げる。
「お前を…私色に染め上げる…!
私の色は…真っ直ぐで純粋な真紅色だぁ!!」
最後に高く刺剣を掲げ上げ、
斜めに振り下ろし真っ二つに切り裂き、
トドメの一撃を放った。
「そして時は動き出した」
時は再び動き始めた。
全ての時が進み始め、止まっていた時に起きた事を
実行するかのように動き始めた。
そして血しぶきを上げながら妹紅は後ろへ倒れ込む。
「終わったか…?動かないな。
こっちの世界の妹紅は不死身じゃないのか?」
ずっと見続けていても、相手は動かない。
逆にこの瞬間に逃走するべきだと、
結局は彼女は相手から逃げる手を使った。
「私色は青だとか…結局逃げたりとか…
斬って斬っていいつつ刺してたり…
後味悪いけど気にしなければ問題ないか」
颯花は倒れた妹紅を背にする方向に、
足早にその場を立ち去ろうとした。
その時だった。
妹紅は再び身体を起こし、燃え盛る剣を作り出し、
一気に、真っ直ぐ颯花の背中へと差し込む。
「やはり生きている…文字通り不死身!
不意打ちしてまで勝ちたいのか、お前は!」
「戦いは命の駆け引き、負ければ何も残らない!
勝ってこそ戦った意味があるッ!」
「お前は命を懸けていないだろうに!」
「そうさ、だからお前が死ぬまで終わらない!」
しかし分かっていた颯花は即座に振り向き、
血に染まり付いている刺剣を、
妹紅の口元に差し向けた。
しかし、差し向けたのではなく、
単純に距離が開いていたせいで届かなかった。
しかし、彼女の刺剣は剣先を飛ばせる。
射程の限界はあるが距離は十分に近かった。
そして妹紅の舌を撃ち抜いた。
「ガバッ……!?」
「やったッ!命中だッ!しゃぶれッ!
私の剣をしゃぶれッ!このドグサレがッ!」
「チッ…!」
刺さった部分から大量に出血した。
しかし、その程度では彼女を止められない。
妹紅へ刺した刺剣を見て、
まるで彼女自身が炎ではなくマグマか何かと、
そう思わせるほどあっという間に溶けていく。
やがて刺剣は彼女の高温の熱で溶けてなくなり、
不死身である為に傷が塞がっていく。
ガラ空きとなった颯花の元へ剣は振りかざされる。
「だが…これで剣はひとつ消えた…!」
「剣がひとつになろうとも…
私の心の闘気の剣は折れることはない!」
「折れないのなら…溶かすだけだ!」
前回の時間設定が誤って奇数の時間に
投稿されるようになってしまっていました。
すみません…
これからは奇数偶数関係なしに、
出来上がり次第投稿しようと思います。
すみません…