宛のない復讐:1
「おいさとり!アリス!」
「魔理沙…?」
「霊夢さんもいますね…」
摩天楼よりも遥か上空で、4人は合流した。
さとりは今までの流れを2人に話す。
「そんな…呆気ないのね…」
「やっぱ団体で行動するほうが良かったのか…
多少目立つだろうけど…リスクはない…」
「今回は…運が悪かっただけですよ…
大通りを出なければ…問題ないと思います」
「次…もう誰も…死なないわよね…?」
「霊夢…違う…死なないんじゃない…
死なせない…だ。その為に私達は強くなる」
「…ええ…それしか…ないわね…。
…あと、颯花が隠れ家に居なかったけど…
さとり…知らない?」
「…行くんですか?」
霊夢はさとりへと近づく。
はっきり聞かせるように彼女へ言い放つ。
「…。魔理沙は言ったわよ。
もう誰も死なせない…そう…絶対にね…」
「…。私の真後ろの一番高いビルの屋上です」
「…さとり…あなた…!」
「私ひとりで行く…それで充分」
「けど…理由を聞かせてください…!
あなたの…その口から…はっきりと…!」
「…」
そんな…自分を殺すようなことを…
死なせない為に…自分を…なんでですか…!
その行動が逆に相手を…
死を招く事になるかも…しれないんですよ…!」
霊夢は思い切りさとりの服の襟を掴む。
その力強さに体勢が崩れるも、
霊夢が無理矢理立て直し、目を見て再び放つ。
「前にも誰かさんに言った覚えがあるけどね!
私達は死ぬ為に戦うんじゃないの!
生きる為に今を生きて戦うのよ!
誰も…死なせない…もちろん私も死ぬ気はない!」
「っ…!」
霊夢はさとりを後ろへ投げ飛ばし、
そびえ立つ摩天楼へ加速する。
そしてあっという間に見えない距離まで遠のいた。
「なんで…なんでですか…」
「…さとり、意味を深く考えなくていい。
霊夢の言った意味は…言葉通りだからな…」
「…」
落下していく颯花はそのままビルの屋上へ衝突、
純粋な吸血鬼化が進んでいる為に、
身体が丈夫な状態となり無傷であった。
土煙が舞い上がる中、ゆっくり身体を起こす。
「…。あなたなら来てくれる…信じていたわ」
「…来たのは…ひとつ質問をしたいだけだ」
「…。過去へ戻る方法かしら…?」
「…分かってるじゃないか…」
そして司会は正常に戻り、人気のない屋上、
ただ八雲紫と桐初颯花、2人だけが存在する。
「残念だけど、ないわよ?」
「仕組みは何だ、早く言え」
「…。八意永琳に技術を提供したの、
よく分かったわね。代わりにやってもらったのに」
「性格が悪いのは八意永琳よりもあんただ。
何よりも方法が回りくどい」
「…もう一回言うわよ…ないわ」
「…それでいい…少しずつヒントが欲しい」
「…時を振り返るのと別の世界へ移動する。
あなたの身体や時空を飛ぶ機械の構造を成す物体。
それは、死の灰…。
稼働には…相応の死の灰を消費する。
あと…未来へも行けるらしいわよ…
そんな何が起こるか分からないことは、
誰もしようとはしないけどね」
その機械には3つの力があった。
ひとつは、流れた時をさかのぼる力。
時は戻っても未来は変わらない。
どう未来で重要人物を殺そうが、
それは偽者や影武者だったり、
あるいは本人の夢の中だったりと、
必ず未来の変化に繋がることはない。
もうひとつの力は、時空を飛ぶ力。
自分達の世界ように過去を振り返る
という事は出来ないが、
同じ時間帯の異世界に移動することが出来る。
逆にこちらは未来ではない為、
過去に戻った時の未来を変えられないリスクはない。
そして最後に、未来へ飛ぶ力。
未来は誰にも分からず、不明点が他より多い。
更に前例がなく消費する死の灰を膨大であり、
基本的であればされる事はない。
「なかなか便利な力じゃないか…。
だけどな…それだとジーグの件が当てはまらない…」
「じゃあ…その過去に戻る力は不完全なのね…。
一体どうやったのかしら?」
「…知らん。知っていても言わない」