経緯
「ねぇ、何してるのかしら?」
「…」
2人は妹紅の目の前まで歩み話し掛けるが、
相手の反応がやけに薄かった。
「ほら、やっぱり一人で居たいんだろ」
「…。せめて何か言いなさいよ」
「…元気そうで何よりだ」
「元気そう…って、この前会ったばっかじゃん。
何言ってんだお前?」
「…待って、魔理沙…」
「察しが早いな、早いに越したことはない…」
「こっちこそ待ってくれ…どういう意味だ?」
霊夢はすぐにその妹紅から離れた。
しかし、妹紅は戦闘態勢をとることはなかった。
相変わらず魔理沙は動けない。
「そいつ…その妹紅は…さとりの方の世界の…
とりあえず…敵かもしれない」
「そんな曖昧な…決めつけるのは早いぜ…」
「…敵かどうかは…私が決めることじゃない…
どうだ?私の話をひとつ聞いてみないか?」
「…」
「…」
「…。よし、話すぞ」
「…あっ話すのね」
妹紅はそのままベンチに座っているまま、
長々と自分のその後を話していった。
長話は諏訪子の件で慣れていた為、
気絶するまでには至らなかった。
「まあ、お前達はもうご存知だと思うが…
君達の言う異世界から来た私達は、
まだ死んではないんだが…
なぜ私達が既に外に居て、なぜ行動を別れたか…
まずそれを話そうと思う…」
「あの丈夫な結界を破れるほど…
常識が通用しない事は承知してるわ」
まだC市の大虐殺の起こる数ヶ月前のとある日に、
八意永琳は結界を一時的に損壊する液体を発明、
彼女達はいわゆる隠れ家を探す為だけに外へ出た。
その外の世界の様々な場所を転々と移動、
更には海を越えそしてC市まで辿り着いた。
しかし、八雲紫はそれを良く思わず、
そのC市まで彼女達を探し、連れ帰そうとした。
その件は話し合いで終わる筈だった。
C市は一瞬の内に真紅に染まりあがっていた。
別行動をしていた因幡てゐ、八雲藍、橙、
彼女達の生命を奪い、生き残った永琳達の心に
深い傷を負わせるほどの惨劇だった。
永琳はただ犯人を探し求め、元々幻想郷のあった
日本へ戻り、徐々に地位を上げ上り詰めた。
それはC市のあるA国が巨大過ぎた国だった為に、
まだ小規模の日本を選んだという事だった。
そしてその国力を総動員して探し求めたが、
幻想郷の中にいた為に、迂闊に手を出さなかった。
結局世界に存在を知られてしまったが、
手を出さなかったのは存在を隠す為だったらしい。
しかし、その不審な動きにA国に目をつけられ、
弱みを掴まれ、駒のように扱われていた。
この頃から自身が壊れたと自覚していたらしい。
その扱いで自分が仕切る国の住人を傷つけてしまい、
少しずつ気が滅入っていった。
そしてある特殊な弾道ミサイルを作り上げた。
その仕組みは彼女と他の2人、
この世界の藤原妹紅、蓬莱山輝夜、
彼女達にしか伝えられなかった。
異世界からの妹紅は後に薄々気づいていった。
それに妹紅は反抗を示し、ただ1人で反旗を掲げた。
そこから盗み出した結界を壊す液体で、
幻想郷を出入りし徐々に戦力を高めていった。
各地の紛争に出向き、戦火で舞う火花を浴び、
様々な泥を舐める仕事をこなし資金を集めた。
なぜここまで永琳が知ってるのかは、
彼女が妹紅が裏切った理由が行動にあると思い、
常に身を案じ行動を見守っていたらしい。
そして幻想郷の結界そのものが全て壊され、
そこは炎の海に包まれていった。
それを予知し、霊夢達を助けに向かった。
「…紫…そんなこと…黙ってたのね…」
「弾道ミサイルのしくみ、知っているんだろ?
教えてくれ、一体どんな仕組みなんだよ!」
「…。ひとつの不死身の神々しい肉体に、
2体の燃え盛る不死鳥を生贄にし、
憎むべき者を滅ぼす兵器。
2つの不死鳥は命を燃やし空を飛び、
神々しい肉体は破滅の光を生み出す。
…後は察しろ」
「…。あんた…なんで…!」
「私はもう生きる目的はない。後悔もない。
この命燃え尽きたとしても、私はそれを成す」
「…それで、さとりと行動が決裂した…
そんなの当たり前じゃない…なんで!」
「私はさとり達の思っている事が分からない。
帰る世界もなく、何の為に生きる…?
私は…それなら…死んだ方がマシだね」