街と人と:2
「…君は、何の為に生きているの…?」
「何の為でもありませんよ。
私はただ生きたいだけです…この瞬間を、今を」
「…」
「行動全てに理由が必要なんて誰も言ってません。
この世界はただ時を流れ続けます。
それは戻ることはありませんよ」
「…。過去は書き換えられないなら…
未来を変えろ…ということなの…?」
街の大通りを出て、隠れ家への道に入る。
進むにつれ、颯花の脚が重くなる。
「あなたは急ぎ過ぎですよ。
もう少し、ゆっくり前に進めばいいんです」
「…」
「あなたのしようとしている事を、
私は止めようとも何も思いません。
でもそれが本当に彼女達が嬉しいと思えるのか、
自分の自己満足の為になってないか、
ちゃんと考えていれば、道に迷いません」
「…。故郷…いや、自分の居た世界が消えて、
何も生きる宛が無く泣き崩れていると思っていたが…
お前は強いよ…何度も悲しみに押し潰されるより、
一気に全てを…奪われた方が苦しいはずなのに…
それでも過去を見ず、
前へ進めるんだ…普通の事じゃない…」
そのまままっすぐ進んでいく。
そして見覚えのある建造物が視界に入る。
「過去は残るより、忘れた方が楽ですよ。
いつまでも悲しむより、今を楽しむほうが、
誰にとっても1番身が軽くなります。
死んでしまった仲間がいるのなら、
死んでしまった仲間の為にあなたが生きるんです。
もちろん、大切な仲間を忘れちゃいけませんよ 」
「…」
「なんでまた出掛けるのよ…。
あたし颯花助けに行って疲れてるんだけど」
「いいだろ?まだ行ってないとこあったし」
「また急いで人とぶつかったりしないでよね」
「大丈夫だって、へーきへーき」
「全く…」
霊夢と魔理沙が昨日に続き今日も2人は
大通りへと出掛けに行った。
しかし、相変わらず十字路の角で、
魔理沙は再び人とぶつかった。
「あんたほんと馬鹿じゃないの!?」
「…すまん」
「あっ大丈夫ですよ、魔理沙さん」
「えっ…と…誰」
「えっ…」
魔理沙が2回目にぶつかった相手は、
今まで生きていたかさえ忘れ去られた紅美鈴だった。
霊夢は顔だけ覚えていたが、
魔理沙は完全に忘れていた。
「しかしまぁ…なんでここに?」
「私は別の場所の隠れ家に住んでいたんですが、
たまには顔を見たいなぁ…って」
「へぇ…他の隠れ家にもいろんな奴がいるのか?」
「ええ、様々な人が居ますよ。
まあ居場所を無くした妖精の類が、
過半数を占めていますけどね」
「へぇ…みんな意外とまとまって生活してるのな 」
「魔理沙、早く行きましょ」
「あ…ああ、すまない、んじゃまたな」
「はい」
美鈴は隠れ家へ歩いていった。
魔理沙は地図を買い、どこへ行くか探している。
「そういうの、先に決めときなさいよ…」
「行く方向は決めてた…後は何があるかだけ」
「直接行ったほうが早い、ほら歩く! 」
「ちぇ…」
大通りを昨日進んだ方向の反対へ進んでいく。
「それにしても、霊夢は驚かなかったのか?」
「何が」
「颯花だよ、生き返ってた例の件」
「少しだけ聞いたわよ、片目だけ失って、
後はデメリットなく生き返ったとか」
「でも不自然過ぎないか?
なんであいつだけ生き返られるのさ。
普通それはありえないし、他の奴だって…
生き返せるのなら生き返らせてくれよってさ…」
「…私が思ってるのが合ってたら…
この世界も死後の世界も、相当黒いわよ」
「…どういう意味だ?」
「気安く話せないわ…これは。
少なくとも…この世の全てを監視されていて、
世界を思うがままに…動かしている」
「真の敵は…死後って事か…」
「颯花が生き返らされたのも、
そいつらの玩具として使われているだけかもね」
「酷い話だ…だけど私はあいつには同情しない。
自業自得だ、あいつは」
「どうしてそこまで颯花が嫌いなのよ」
「あいつから聞けばいい。そのほうが早い」
「…」
大通りを進んでいると、街の雰囲気が変わった。
現代風な町並みは消え、住宅や小さな店、
穏やかな風景が広がっている。
「で、ここに何があるの?」
「ここ、珍しい冬の花火をやるらしいのさ。
なんで冬にやるのか疑問だけど…」
「私達にとっては花火自体珍しいわよ。
それは楽しみだけど、それまで何するの?」
「まあ場所を探しつつ観光、それだけ」
「まぁ…悪くないかもね…
てか、飛べるし場所探ししなくてよくない?」
「でも飛ぶのはタブーだってあのゲス管理人が」
「夜にやるんでしょ?見つからないわよ」
「…まいっか」
少し歩くと、小さな公園があった。
別にそこに寄るのではなかったが、
そこにいた人物のせいで結果的に寄ってしまった。
「…妹紅…?あいつなにしてんの?」
「ベンチに座ってるだけじゃん」
「それが気になるのよ、行くわよ」
「一人で居たいんじゃないのか?」
「じゃあ邪魔しに行きましょう」
「うわ…」