表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方project 〜東方少女録〜  作者: mariari
~外界旅立編〜
146/245

軍と人と理想と

彼女は外へ出た。

身体の痒みが異常なまでに酷くなっていく。

しかし、そんなことを気にしている状況ではなかった。

外の風景は殺伐としていた。

武器を構えた兵士が大勢にこちらを睨み、

戦車と思われる乗り物がこちらへ銃口を向ける。

たかが1人に異常なまでの警戒態勢だった。

その中の中央に、あの男がいた。


「君は危険因子だ。危険過ぎたのだ。

だからここで殺す、躊躇いも何もない。

力を持った1人の兵士は、

ただの国の脅威にしかなりえん」

「…。街が近いこの基地でドンパチ戦争でも、

本当に躊躇いなくやる気なのか?」

「危険なものは圧力で無力化をするしかない。

人と人は分かり合えん。だから互いを恐れる。

そして、ただ思うままに強者が弱者を殺す」

「数の暴力が…強者ね…

お前の過去も…相当なものだったようだけど、

あいにく私も平和ボケ…してないんでね」


銃口が全て彼女に向けられた。

そして、男が一言言い放った。


「力がなければ誰も守れんよ」

「…。このまま撃てばこのうさ耳が死ぬぞ?」

「ふん、この軍隊は私の国の軍だ。

命令すれば誰であろうと殺す機械なんだ。

使わなければ錆びれて使えなくなる」

「…」

「撃て、殺せ」


銃声が同時に鳴り響く。

兵士の持つ銃の無数の鉛玉が、颯花へと向かい、

戦車から発射された榴弾も、

弾が望んでいるかのようにまっすぐこちらへ迫り来る。

圧倒的な物量で、全面の視界の全てを覆った。

しかし、彼女は避ける事もなく、守りに入った。


「血迷ったか…この基地の人間ごと殺すだと…

いいか?殺していいのはな、大多数の人間じゃない。

危険因子となった1人の生物だけだ…!」


彼女は腕の機械を露出し、大地を殴る。

そして周囲に異常なまでの風圧を作り出し、

それらの弾丸は空高く舞い上がっていった。


「私を嫌うのは構わない。だけど、

人間自体を憎むのは、それは人間じゃない…!

復讐に塗れて周りが見えない、ただの鬼だ!」

「小しゃくな真似を…弾を使い切るまで撃て。

いや、殺すまで殺せ…我が軍隊よ…!」


再び無数の弾丸が彼女へ飛来する。

彼女は使えなくなった機械をしまい、

両方の模倣能力を霊夢のものに変化させ、

前方に分厚い結界を生み出した。

しかし、それは同時に霊夢に場所を知らせていた。


「私の霊力反応…?あっちに…颯花が…?」


分厚い結界に無数の弾丸が当たる度に、

大きな音を鳴らし、徐々に結界を磨り減らす。

例え霊夢と同じ力を手に入れたとしても、

身体の親和性や慣れなどが無ければ、

全てを模倣したとしても、

その力はかなりオリジナルのものを下回る。

例え彼女に霊夢の死体の欠片が入っていたとしても、

本人がその力に親和性が無ければ、

結界を作ろうとも、ただの壁となってしまう。


「いつまで…撃ち続けるのよ…!」

「安心しろ、君が死ぬまでさ」

「…ッ…まずい、結界にヒビが…!」


そのヒビに無数の弾丸が流れ込み、

結界の一部を破損させた。

その破損した穴からひとつの榴弾が、

基地へ向かうように、颯花の横をすり抜けた。


「しまっ……!」

「…」


銃声は止み、颯花のいた周辺は爆煙が舞い上がる。

男はただ結果を待つようにそこを眺めていた。

爆煙は晴れ、その場所の状況が確認出来た。


「……霊夢…なんで来た…お前!」

「…」


基地も鈴仙も、颯花も傷ついてはいなかった。

全員、全て霊夢が守ったのだった。


「これは私の問題なんだ…邪魔をしないで」

「…。あんたの問題なら、私の問題でもある。

仲間が困っているなら、助けるのが筋よ」

「…。そうやって、また死んでいく。

庇いあって、傷ついて…死ぬ…!

何度も…繰り返させないで…!」


颯花は彼女に顔を見せず、ただ背を向け、

そう霊夢に言い放った。

しかし、背後から霊夢はお祓い棒で頭を殴った。


「あんたね…私よりも強いみたいな事言ってるけど、

一勝、私が勝ってるんだからね…!

いつまでも自分を偽って…自分だけ死に急いで…

あの時みたいに…本当の自分を見せてもいいのよ…

あなたは1人じゃないの…分かってる?

だからせめて…仲間くらい信じなさいよ」

「…」


そして、彼女は颯花の肩に手を置き、

どこかへ瞬間移動したように消えた。

その基地に、しばらく沈黙が続いた。



「ここは…?」

「私達の、隠れ家らしいわよ。さあ入ってほら」

「…」

「ほら、早く」

「…。いつか気付くさ。お前が…

どんな生物を…相手にしているのか…ね」

「少なくとも、私はあんたを信じてるから」

「…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ