圧倒的な実力差:2
「おういつまで寝てんだよ…?
もしかしてすぐ死んでくれるとか?」
「……な訳…無いだろ………クソ……」
その場で動けず寝そべっている颯花の頭を掴み、
メシアは勢いよく持ち上げた。
颯花はとても尋常ではない痛みを感じている。
「この状況で命乞いしないんだ〜…
その意志の強さだけは認めてあげるよ…なぁ!」
そして、勢いよく大地へと叩き込んだ。
颯花の顔が大地へめり込んでいる。
「どうして結果は見えているのに頑張る…?
お前では……勝ち目がないというのに…!」
「…」
その動きもしない彼女を上から何度も、
止めることなく踏みつけている。
その度に彼女から血が吹き出て、
メシアの紅い服を更に紅く染め上げている。
「さっさと死ねば…
痛い目に遭わずに済んだものを…」
「…」
「聞いてんのか?紛い物ッ!」
再び颯花を持ち上げ、頭部を何度も殴る。
「お前に力が無いからそうなったのさ…!
そして!お前に力が無いから!
お前の仲間も苦しみ悶え死ぬ事になる…!
お前が悪いのさ……お前が!」
「…」
「お前のせいで…あの雑魚共が死ぬんだ…!
あんな馬鹿みたいに守り合って、死んで!
悲しんで!哀れ過ぎんだよ!お前らは!
現実を避けるから…見ないから苦しむ…!
不要な感情を持ったゴミ共が…人間みたいにな!」
「…ッ……」
その時、何度も殴っていたその拳は、
再び動き出した颯花の腕に掴まれた。
「……確かによ…
…お前からすればゴミかもしれない…
だけど…そこがいいのさ…人間臭くて…
自分の身を顧みず、仲間を守ってよ…
それは…意味のない行動なのかもしれない…
…けど…お前や…私には絶対ない…
人が人であるための…必ずなきゃならないもの…
…仲間を…信じること…!託すこと…!
人として生きるための…原動力…!
私達には分からない…人間らしさというものを!」
「ベラベラベラベラと…やかましいんだよッ!」
その掴まれた腕を振り払い、
思い切り頭部に腕を叩きつけた。
しかし、彼女はそれを踏ん張った。
「私には…どうして仲間が必要なのか分からない…
けど…信じることに、理由なんて要らない…!」
彼女の全身を、鮮やかな紅い光が包み込む。
それに怯え、メシアは彼女から遠ざかる。
「貴様…なんだ…その力は…!」
「お前には分からないさ…
私の身体から…己を通して出る力を…!」
そして、あの颯花特有の形の翼が生え、
2つの模倣能力をレミリアとフランに変化。
そのボロボロな姿でなお、相手に立ち向かう。
「なっ……生意気な…!」
メシアは颯花の頭へ回し蹴りを入れた。
しかし、命中したものの颯花は微動だにしない。
「今まで貸した借り…返してもらうよ」
「…ッ…!」
颯花はメシアの腹部を殴った。
彼女は大きく吹き飛んだ。そして、
あの頑丈だった服に亀裂が入った。
メシアが颯花の足下に這い蹲る形になった。
「ぐっ……クソが…!」
「お前が再び立ち上がるのに何秒必要か?
それと同時に、私の全力をお前に叩き込む。
さあ…立ちな…!…まだやりたりないのなら…!」
「(いつまでも…調子に乗りやがって…!
自分が優位に立てたからって…調子に乗るな…!
だがな…やはりお前もゴミクズだ…!
すぐさまトドメをさせばいいものを…
そんな勿体ぶる貴様の…)……負けだッ!」
「…!」
メシアは背後から、フランに攻撃させた。
しかし、それを分かっていたかのように、
その首を切り落とすように動いた彼女の腕を、
優しく片手で掴み、抑えた。
「一体…どこまで外道なんだ…
私の前の前の身体とは思えないな…」
「……グッ…偉そうに…!」
「勿体ぶるのが悪かったな…じゃあな…
あの世で幼女ちゃんに成敗されてきやがれ…!」
「ッ……!」
メシアを空高く投げた。
そして地面へ落下する前に、
颯花は両足を大地に差し込み、踏ん張り、
左手に全神経を注いだ。
全身の紅いオーラは左手に集まっていく。
「全力パンチは1回まで…それだけだ」
颯花の下へ再び落下していく。
メシアは体が動かなかった。
そして、その紅い身体に強大な一撃が放たれた。
その一撃は、
かなりの距離の周囲の木々を薙ぎ倒し、
更地にしてしまう程の風圧を持ち、
辺りに轟音とも呼べる爆音を放ち、
そして、殴った相手を跡形なく粉々に粉砕した。