双璧:2
しかし風圧の力を押し退け、
一気に颯花を吹き飛ばし、更に追撃する。
その体勢を崩した颯花へと、
何度も拳で殴りつけ、蹴り飛ばした。
「ぐふっ……この程度…!」
「血を吐いてもこの程度だって?
ならばこの程度以上に痛めつけてやる…!」
飛んでいった颯花の下へ駆け走り、
続けざまに何度も蹴り飛ばす。
「フハハ…まるでボールの様に跳ねる…!」
「人を…道具の様に扱うか…!」
次に蹴った瞬間に、颯花はその場から消えた。
メシアの真後ろに瞬間移動した。
「それは確かあのメイドの…
自身が殺した相手の能力を平然と使うとは…」
「殺したからなんだ?そんなこと…
どうでもいいのさ…利用出来るものは利用する」
「変わったな…まるで別人じゃないか…
だがやはり殺す相手の変化など…
どうでもいいと…思わないか?」
その言葉に反応するかのように、
颯花はメシアへ右手の指を指し、宣言した。
「確かにそれは同感だ…だけどな、
じきにその余裕な態度…出来なくなるからな」
「…ふん…弱者の戯れ言を…」
メシアはその彼女の下にゆっくりと歩み寄る。
しかし、足下にある異変に気づいた。
「…なっ…腕だと…!? 」
颯花が隠している左腕から出血しているのを
メシアは確認出来た。しかし、
この行動の意味を分かってはいなかった。
「確かに無謀かもしれないが…手はある…
私の電気は身体から流す構造だが…
手足を切り離しても機能するらしいとな…!」
「ぬっ…なんと…!」
地面から伸びるその腕はメシアの脚を掴み、
そして先ほどとほぼ同じ電力を流し込み、
再びメシアへ痛みを与えた。
「クソがァ…生意気…なんだよッ! 」
「そうすることも…分かっている…!」
メシアは腕を引き離し、地面へ叩きつけ、
勢い良く踏みかかった。
しかし腕は機械を露出し、
その脚と風圧を衝突させ、勢いを利用して
颯花の下へ吹き飛ばした。
再びその腕を接合した。
「今回は…動かなくなったりとか不具合は無いな」
「…いつまでも余裕な態度を…!」
メシアは再び剣を構える。
颯花は依然として突っ立っているのみだった。
「私を馬鹿にしているのか…?」
「さあな…どうなんだろうな」
メシアは剣を持ち、颯花に投げ飛ばした。
しかし、その圧倒的な力を持つその剣は、
颯花を突き刺すことが出来なかった。
「な…なんだ…なんだと!?
一体気様…何をした…答えろ!」
「またか…たった一つの…単純な答えさ。
私が今まで気付かなかったのが…馬鹿みたいにな」
「私は答えを聞いている…!
何度も…言わせるな…紛い物…!」
颯花はその剣を拾った。
重いだけで他は何もなく、
ただの剣と変わりなかった。
「…読めたぞ…お前…この服の能力を…
模倣したという訳だろう!
もしそれ以外での理由では…
その剣は気安く扱える訳が通らない…!」
「ああ…そうさ…あんたには不相応な…
たった1人で何人もの相手に太刀打ち出来る…
攻撃の無効化という化物みたいな能力をな…!」
そのとても頑丈で破壊出来ないような剣を、
一撃殴っただけでいとも簡単に破壊した。
「人の能力は模倣出来るのは当たり前の事…
だが物…装備だとすると無理かもしれないと…
そう決めつけていたのさ…」
「だ…だが、同じ能力同士では戦いは決まらない!
それに貴様の能力には時間制限がある!
どうあがいても…私の勝ちだ…!」
脚下の剣の破片を踏みつけ更に粉々にし、
再びメシアへと指を指す。
「…そんなあなたの希望…余裕…傲慢…強欲…
全てこの私が打ち砕いて…握り潰すわ…!」
「やれる…というのなら…やってみろ…!」
颯花は駆け抜け、メシアへと蹴り掛かった。
その脚と拳が衝突し、周囲に響き渡る。
「これは…殺された仲間の為の復讐でも…
今までの悪夢を断ち切る為でもない…
私自身が…私であるお前を殺す…
私の中の因縁は…私が断ち切る…!」