科学の全てを賭けて:1
「勝てるとは思えない…
死のうとも思ってない…!)」
にとりは強大な敵のを前に後ずさりする事もなく、
ただ相手を見つめている。
「弱いくせに態度はいいな。
勝ち目もない相手に立ち向かうのか?」
「勝ってこそ戦いって訳じゃない。
生きてこそ勝ったことになる!さあ来いよ…!」
「…」
メシアは駆け走る。
しかし、数歩近づいたその時、足元の何かによって
メシアの動きは止められた。
「設置用箱型防御結界展開装置だ!
あんたはその箱の中に閉ざされた!」
水色の透明な膜が箱状に展開、
メシアを包み込んだ。
「(攻撃が効かないのなら防御を徹底か…
無謀だが…仲間の為に戦う…
しかし、私にも戦う理由があるんでな…)
私の為に死んでもらうぞ!愚か者よッ!」
メシアは膜状の壁に触れる。
ゼリー状のようなものが硬化した感じだった。
「無駄だ、あんたにはそれを破壊する
攻撃力は持ち合わせていない!」
「こんなの、攻撃力でゴリ押しせずとも!」
メシアはその壁を何度も拳で連打した。
そしてどんどん壁はこんにゃくのように
ぷるぷると震え、最後には液状化した。
「ずいぶんと大きな欠点じゃないか…
こんな穴空きな科学力では私は倒せん!」
「なかなか…だけどまだ手はいっぱいある!」
にとりはメシアに謎の黒い石を投げ付けた。
メシアはそれを腕で弾くも、
その弾いた彼女の腕に貼り付いた。
「お前は今!磁石になったッ!」
「なに…?」
にとりが鞄から様々な金属を取り出す。
そして手を放すと同時にメシアへと向かう。
メシアがいくら弾いても、
ただ身体にくっつき、離れることは無かった。
工具や何かの部品などが、メシアを覆う。
「そろそろ重さで動けないはずだ!
大人しくジッとしているんだ!」
「いくら物量で押そうとも…結果は変わらん!」
その貼り付いた石を無理矢理例の剣で引き剥がす。
そしてメシアの体から次々金属が落ちていく。
「ふん…身軽になった」
「くっ…こんなにあっさりと…
だけど…まだまだ!私は戦える…!
守りが駄目なら攻めて守るッ!」
にとりの鞄から無数の小型ミサイルが発射、
それらは追尾しメシアへと向かう。
「ミサイル如きで攻めてるつもりか!」
向かって来るミサイルを次々と斬っていく。
質量に押される事もなく正確に破壊していた。
そして全てを破壊し、辺りを爆風が包む。
「どこからでも来るがいい…!
貴様が次私に近寄った時…貴様は死ぬだろう!」
しかし、歩み寄る足音さえも無かった。
爆煙は晴れ、視界が元に戻った。
「…!貴様…仲間はどうした…!」
「私は一言行っただけさ、何かやれと言ってない」
「ならば自分は何故逃げなかった。
今なら全員で逃げ切れただろう?」
「私が逃げたら…あいつが…颯花が死ぬ!
私は約束は守る方だからな…!
どうせあんたは宛もなく私達を探すより、
移動した方向が分かっている颯花の方へ行く!
だから絶対行かせない!」
「だから自分の危険を顧みず私を阻むか…
しかしなんだ?何故か懐かしくも感じているが…
私には取り戻す事もないこの記憶は私の過去、
私に要らないものが他人にもいる必要は無い!」
「それが大事なものだとしたら…
それを私は思い出させてやる!
久々に使うが…空中ブラスター!」
にとりの鞄から大きな砲口が露出、そこから
一つの大きなミサイルが、メシアを追尾する。
「デカブツ撃って何になるのさ!こんなものッ!」
メシアはそれも真っ二つに斬り裂いた。
その周囲に爆煙が広がり、視界が塞がれた。
その爆煙の中からメシアは抜け出し、
にとりの元へ駆け走る。
「ぬっ…!」
にとりは両手に2門のガトリング砲を装備、
鞄から飛び出た箱状の物体は頭部の上に
覆い被さるように固定され、
脚部の靴にはゴツい機械が取り付き、
にとりの身体を浮かし、ホバー移動を可能とした。
「高機動高火力型形態…
これで…少しでも時間を稼がしてもらう!」
「そんなもので…
まともに私の相手を出来ると思うなッ!」