人形の吸血鬼:4
「動けないからって安全じゃな…ぁ!」
「くっ…それも出来るのかよ…くそっ!」
レミリアの口から小さな紅い槍が放たれる。
動けない颯花は無理矢理下半身を吹き飛ばし、
少しながら上半身を移動させ回避した。
「痛いだろうが…終らせる為にはこうするしか!」
左手の刺剣を構え、一気に額へ向け貫く。
「ひゃぁっ…!」
「…くそっ…
意識があると躊躇ってしまう…なんで…!?
今まで相手に慈悲なんて思ったことなんか…!」
額に刺さる寸前に、颯花の刺剣は止まった。
その刺剣の刀身は震えている。
そして切れることのなかったワイヤーは、
とうとう切れることを知り、
レミリアの身体は再び動き出す。
上半身のみの颯花へと正拳突きを仕掛けた。
「くそっ風圧結界ッ!吹き飛べッ!」
正拳突きに風圧結界をぶつけるように、
そのまま風圧で吹き飛ばす。
そして下半身と再び連結、だがある異変が起こる。
「右足が動かない…なんで…!」
「あなたは良くやった…けどもう限界よ!」
「いいやまだやれるさ…きっと!
私のせいでまた誰かが無駄な血を流すのなら…
私はどこまでだってやれるさ…!
私は限界を越えて全力があるから!」
動かない右足を引き摺りつつ、
ふらふらとゆっくり立ち上がる。
「どうしてそこまで…!」
再び翼を生やし、片方をレミリアへ、
片方をフランへ変化させる。
紅いオーラを放ち、
2人の特徴部分が混ざったような姿になった。
「いくよ!私の全力で!
神槍『スピア・ザ・グングニル』ッ!」
両手を空へ掲げ、極大な紅い槍を生成する。
その強大な力に颯花の腕は悲鳴を上げている。
しかし、その槍は更に大きくなる。
「まだまだ…私の限界は越えてないッ!」
「なんて無理なことを…やめなさいよ!」
「全力でやらないと…一撃で倒せない…
お前が苦しんだら、咲夜が悲しむ!
お前の為にも咲夜の為にも…
そして自分の為にもベストを尽くす!」
「あなたはなんでそこまでやるのよ…!」
「こんな世界になったのは私のせいだから!
だから…1つ1つの悲劇は私がけじめをつける!」
「あなたの…せい……!?」
「そうさ…辛いのなら私を恨め、憎め!
いつか必ず来る平和を信じて…!」
「…!」
レミリアの身体も反応し、
同じく極大な紅い槍の生成を始めた。
「…全力…で!行っっけぇえええええッ!!!!」
レミリアの姿を覆い隠すほどの大きな紅い槍が、
彼女目掛けて高速で前進する。
直後、颯花の左手は爆発し砕け散った。
疲労と負担で動けなくなった。
「…………」
そのまま前進した。その残った大地の傷跡が、
その威力を物語っている。
依然として颯花は動けない。
「……本当に……つらいよ…」
「……どうしてこんなに私は無力なんだよ…!」
颯花が空を見上げる。
そこには下半身が消し飛び、
苦しい表情を浮かべるレミリアの姿があった。
「…ふっ…終わったな…私は」
「駄目よ…諦め…ないで…!」
手刀を前へ突き刺し、一気に突撃する。
満身創痍の颯花には敗北が決まった。
「…悪いな…だけどお前をこのままにはしない…
お前ごと…自爆する…!」
「駄目…まだあなたは…戦える!」
「最後まで戦ってるつもりさ…自分と!」