人形の吸血鬼:1
そのガラ空きな身体に陰陽玉が衝突する。
反動でアリスは大きく吹き飛んだが、
メシアとの距離が離れた。
その後に遠くの霊夢がふらふらと立ち上がる。
「その状態でまだ動けるか…貴様…」
「…いや…もうギリギリ限界よ…
だけどもう、目の前で人を死なせはしない…!!」
「ふん…だが力がなければ何も出来ん…
ボロボロなお前をいたぶっても
楽しくもなんともない。だからこいつを使う」
メシアは自身の長い髪の毛を一本抜き、
目の前に投げ捨てる。
そしてそれは人の形を成していく。
「霊夢…気を…つけて…!」
「一体…何が起こるっていうの…!?」
「さあ…悪魔の…吸血鬼の…復活だ…!」
「………っ!」
その人の形は、見覚えのある人物へと変わる。
その姿はレミリア・スカーレットだった。
「仲間に殺されるだけ…ありがたいと思え」
「あんたって…人は…ぁ!!」
そして、彼女は生きている時と同じ様に、
全く同じ姿のまま喋り出す。
「な…何…なんなの…!?」
「さあ、レミリア・スカーレット。
奴を…博麗の巫女を殺せぇッ!!」
「なっ…身体が勝手に…!」
動き出したレミリアは真っ直ぐ霊夢へ向かい、
そのまま霊夢の腹部を強打、大きく吹き飛ばす。
「霊夢っ!」
「なっ…なんで!どうして!?」
「やはり恐怖と絶望は与える事は…
最も最も…世の為だとは思わないかいッ!?」
「…最ッ低な奴…!(人形の残機がない…
私ではもう…どうにも出来ない…!)」
「もう手間はかけさせんッ!
すぐに殺せ!レミリア・スカーレットォ!!」
「っ!…駄目っ!」
レミリアは飛び上がり一気に落下。
彼女の手元に紅く輝く短剣が生成、
それを霊夢の喉に押し付けるも、
霊夢は両手で必死に抵抗をしている。
しかし、力量差は相当なものだった。
「ぐっ…力が入らない…!」
「駄目よ…絶対耐えて…! 」
なす術なく短剣と喉の距離は縮まる。
霊夢はもう限界だった。
力が抜け、スッと勢い良く短剣が進む。
霊夢の喉元に刺さりかけたその時だった。
「颯花!風圧結界を最大出力で!」
「わかってる!てあっ!吹き飛べ!」
二つの風圧結界がレミリアを容易く吹き飛ばす。
一つは颯花の左腕、もうひとつはにとりの、
杖のような物の先端に同じ機械が取り付けられた
見た目はダサくとも性能はほぼ一緒だった。
「相変わらず人のものを奪うとはな!」
「修理代の代わりだよ!」
「颯花…にとり…!」
「にとり!あの不死身野郎を抑えてくれ!
その間にレミィとの決着をつける!」
「ああ!任せろ!」
颯花はレミリアを抱え持ち、
例の翼を生やし遠くへ連れ去った。
「また余計な奴らが来るとはな…
私は相当運が悪い…貴様らのせいでな…!」
「はいはい、独り言してないでいいんだよ?」
「そこの人形使いにも巫女よりも弱い貴様に、
一体何が出来るとでも?ん?」
「我が河城にとりの科学力は世界一ィイイイ!
私の知能の最大を尽くしてあげるよ!」
「ふん!世界に出たこともない奴が!
世界はそんなに甘くはない!」