赤と紅:1
「じ…神社が…!?」
「チルノちゃん!」
ほぼ廃墟となっている神社の片隅に、
チルノが眠っていた。かなり怪我をしている。
「何が起きてるのよ…全然わかんないんだけど」
「赤い人がいきなり襲ってきて…」
「赤い人?誰よ」
「さ…さあ…?」
その廃墟を眺めつつ、
その神社へ霊夢と大妖精は戻ってきた。
チルノを出来るだけ手当をしたが、
この原因となる人物は居なかった。
「あっ…気がついた?」
「…霊夢…いや、魔理沙は!?」
「魔理沙?居ないけど」
「だっ大丈夫だよね…魔理沙だもんね」
「魔理沙もその赤い人と戦ったの?
としては魔理沙が居ない理由が知りたいし…
でもあんたをそこまでするその赤い人、
只者じゃあないわね」
「手加減されてるのに太刀打ち出来なかった…
みんなに早く知らせないと…!」
「無理しないの!私が周りに伝えるから」
「…」
「霊夢さん!チルノちゃん!あっち!」
「…。
…あれが…赤い人…ね」
深い森の中から赤い人影が歩み寄る。
「巫女が神社にご帰還してたか。
今回の巫女はやりがいがありそうだ」
「今回…?まあ、あんたが誰か知らないけど、
平和な時間と神社を壊したあんたを
そのままのほほんとなんかさせないわよ」
平和という言葉に反応し、メシアは嘲笑った。
「平和…?壁に囲まれた狭い世界なんかで?
一歩外を出てみればお前から見れば地獄なのに」
「あいにく外に出たいと思ったこともないわ」
「外じゃなくあの世なら行けるぞ?」
「…まだ死ねる歳じゃないし」
「人は何時でも死ねる、今だってお前は死ねる」
「そういう意味じゃないから…まったく…」
そのままメシアは霊夢へ歩み寄る。
「いい度胸ね、名前が聞きたいわ」
「メシアだ。現在はな」
「また救世主だのみたいな単語出して…
でもあんたのその雰囲気?オーラ?
やばそうなのが出てるから…手加減はしない」
「本気でやれ、すぐに死なれてはつまらん」
「じゃあこれはどうかしら?」
霊夢はメシアへ最速で霊符を飛ばした。
目で追うのがやっとの速度を飛ばしていたが、
霊夢自身もコントロールが効いていない。
「直撃で無傷なんて…
それは、その服のおかげかしら? 」
「お前の攻撃力が単にないだけだ。
それで、もう終わりか?」
「…。かかって来なさい」
「ふん…」
メシアはその場で空高く飛び上がった。
強く踏み込むこともなく、
単純に軽く飛んだだけでかなりの高度まで飛んだ。
そして何もない空間を踏みつけ、
一気に霊夢へと加速した。
左手を構え、霊夢へと殴りかかった。
「一直線に向かってくるのね!」
「さあこの攻撃、耐え切れるか?」
その左手を、霊夢はお払い棒を突き出し、
それらは互いに衝突した。
大きな音を出し、大地が揺れ動くほどの力だった。
霊夢の踏み込んでいる足下から、
複数の大きな亀裂が周囲へ伸びていた。
「…、凄い力ね…でもこの程度…」
「この程度でその状態なのか?
全くどの世界も…巫女は弱いな…!」
メシアはその左手でお払い棒を掴み、
霊夢の身体に蹴りの一撃を打ち込んだ。
掴んでいたお払い棒はへし折れ、
霊夢はかなり遠くへ吹き飛ばされる。
「ん…まだ本気ではないな?なぜ手を抜くのさ?」
「くっ…さあ…なんででしょうね…」
「…。そうだ、いいことを思いついた…!」
吹き飛んだ霊夢の方から、
廃墟の神社から見守るチルノ達の方を見た。
そして彼女はその方向へ歩み寄っていく。
「…なっ…なにを…!」
「フンフン…いいことさ…!」
「大ちゃんには…何もさせないから…!」
「チルノちゃん!無理をしないで!」
歩み寄るメシアへチルノは体の痛みを耐え、
勢いよく突撃し、氷の剣を振りかざした。
しかし、その剣は軽くへし折られ、
腹部へ重い一撃、更には首を絞められた。
苦しんでいるチルノを見て、
大妖精は躊躇いなく突撃した。
「チルノちゃんを離してッ!」