操り人形の呪縛
「って事でまあ…後は時間稼ぎか…?」
「…」
「…いや、相手に敵意がないと攻撃しない、
さっきの攻撃態勢までなにもしなかったし…
この推理があっているなら戦って待つ事も無いな」
「…」
「…いいよ?もう話しても」
「…」
「話す気は、無いか」
颯花が攻撃態勢を解くと同時に、
咲夜もナイフをしまった。
互いに再び見つめ合っている。
「まさか今頃私の勘が外れるとでも?」
「…」
「それはあんたが一番理解している事さ。
まさか私の事が嫌いで話さないと? 」
「…」
「なにか言えよ…ったく…」
「…。物事はそんな簡単に動きはしない」
「いいや、動いたね。
私の望み通り君が喋ったことさ」
「…」
咲夜は目と口だけ動いている。
呼吸はしていなかった。
「私を無理にでも生かすつもりかしら?
それは私にとっても迷惑よ」
「そんなこと知らん、私はしたいようにする、
それが私の自己流さ」
「自己中の間違いじゃないかしら?
しかもそれ、初耳なんだけど」
「今考えた、後悔はない」
「…」
その会話の中、ある人物がやって来た。
いや、その人物が通った。
「……魔理沙…。お前のとこにも奴が来たのか」
「…。…ああ…」
「そうか…辛いのは分かるが、
どうかこれには手出しをしないでくれ」
「…。何をするのかは知らないが…
お前は悲しくないのか?友人を操り人形に
されているんだぞ?」
「悲しい事にはもうとっくに慣れっこでね、
純粋にまだ悲しめる君の優しさが、羨ましいよ」
「…。お前1人では弱い、
それでも一人の人間として強い。
人間として、感情を消すのは容易じゃない」
「私が人間ね…もう一度考え直せ。
君みたいな奴こそが、あるべき人間の姿さ。
それと、感情を消してる訳じゃないよ。
不器用なのさ、私は」
「……嘘つけ」
「…個人の意見を聞き入れる余裕は…ないよ。
けど私1人では弱いのは分かっているつもりさ。
たまに君の力も借りるかもしれない…
先に…謝っておくよ。すまない」
「お前が使うそれはお前の力だ。
模倣というちゃんとしたお前の力さ。
みんな使ってもいいと言ってくれる」
「…」
その後、森のように木々が連なる方向から、
にとりの姿を視認した。颯花は手を振る。
「こっちだ、それと眼帯」
「思考を盗聴するの楽しかったのに…」
「人で遊ぶな」
「人じゃないだろ?」
「…」
「だいたい何をしようとしてるのかは分かった。
でも人を電気で包み込むのは用意じゃないよ」
「包み込むのが難しいなら纏わせればいい。
運良く電撃でのダメージは無いらしいし」
「それなら簡単さ、丁度いいものがある」
にとりは服のボタン型の何かを取り出した。
「これ、乾電池」
「…か…乾電池…!?…それが?」
「しかも放電機能がある、投擲武器用だけど」
「使えるのなら何でもいい、だか咲夜が動くかもな」
「攻撃しようとしないのなら大丈夫でしょ」
「接近も含まれるかもしれない」
「細かい事は後々でいいよ、さあやるか」
「おいおい…下手したら死ぬぞ」
「私達は運と勘がいいから問題ない」
「さあ…どうなんだろうな…」
2人は少しずつ咲夜に歩み寄る。
咲夜は相変わらず動かない。
「人の気持ちを無視して楽しい?」
「…。レミィもお前と同じ目に遭う。
その時に、お前が止めるんだ。
あいつの…召使いとして」
「私にお嬢様を攻撃しろと?」
「あんたをこうさせた相手の実力に、
霊夢や魔理沙でも敵う相手じゃない。
それに…お前があの子の召使いなら、
召使いとしての主を止める責務を果たせ。
今の私にはこうとしか言えない。
責めていいさ、私と、本当の私を恨むんだな」
「…本当の…ゼィル…?」