魔法使いと生き返りし者:2
その地面から生えた複数の大きな氷柱が、
パチュリーと魔理沙の距離を離した。
「くそっ…何か他の手は…しかもこの脚じゃ…」
歩む度に脚に痛みを感じている。
あまり大きく激しい移動は出来ない。
そして魔理沙は箒に跨った。
「これなら移動は問題ないけど…
細かい移動や回避が出来ない…
無理矢理に突破するしか…!」
魔理沙は飛んでくる無数の弾幕を回避しつつ、
様々な手を考える。
しかし、避けるだけでは押されるだけで、
状況は常時移り変わり、
時間をかけるほど状況を悪くしていた。
「星符『メテオニックシャワー』ッ!」
魔理沙は星形の光の弾幕を、
パチュリーの足下に放った。
そして、辺り一帯を土煙で覆った。
「これならまた接近出来…うおっ…!」
魔理沙は間一髪でビームを回避した。
確かに視界を潰したが、正確に狙った様に、
真っ直ぐと放たれたものだった。
しかし、そのあとの2本目からは、
周囲に乱雑に撃ち乱れていた。
「…まぐれか直感の1発だったか…
操られてるだけじゃ動きは単純だが…
普通ならあの打撃で気絶は容易なんだが…
何故こうも気絶しないんだ…?」
確かに重い一撃が頭部へ当たり、
音や感触で相当な威力は与えたと
魔理沙は思っているが、
パチュリーは全く効いていないかの様に、
魔力切れの疲労感や食らった攻撃の痛みも、
何も無いような状態だった。
「(もし痛みが無いのなら…
消し飛ばすしか倒せないぞ…どうする…)」
土煙が引いて互いの姿が視認できるようになった。
相変わらずパチュリーは、
あの膨大な魔力を消費しているはずなのだが、
疲れている雰囲気は微塵もない。
「今の私は魂が人形に入っただけ!
痛みも疲れも感覚も痛覚もないの!
この身体は姿だけ私の全く別物よ!
戸惑ってないでさっさとやりなさいよ! 」
「お前は本当にそれでいいのか?
お前には死ぬ事が怖くないのか!」
「もうこんな身体じゃ死んでるも同然なのよ!
それともまた、自身の手を汚すのが怖くて
何も出来ないのかしら!」
視界に捉えられた魔理沙へ、
再び閃光の雨が降り注ぐ。
その中を魔理沙は軽やかに舞っている。
「私は…目の前にいる敵には容赦はない!
…だけど!お前はそれでも仲間なんだ!」
「仲間思いだというのなら…
この私を…殺してみなさい…!」
その閃光の雨は中断され、
パチュリーの周囲に魔法陣が展開、
その魔法陣から無数の火の玉が発射された。
それは魔理沙の周囲を焼き尽くしていく。
「救う為に殺すだと…?
そんな器用なことがまともな人間に出来るか!」
「じゃあ貴方はここで死にたいの!?
操られても私は私なのよ!」
「それでも…それでも…私はッ!」
その火の海の中に妙な色をした液体が、
空に発生された雲から降り注いだ。
そしてその液体は、
同じ妙な色をした気体となった。
「魔理沙!息を止めなさい!」
「なっなんだ!?…うっ…!」
魔理沙は呼吸と同時にその気体を吸い込んで、
首を押さえるように苦しみ出した。
高度を下げ、地面へ着地する。
「もうそれ以上呼吸をしては駄目!
内側から身体が溶けるわよ!」
「(くそっ…意識が…!)」
「魔理沙!早くその場から動いて!
私の身体は止まってくれないわよ!」
「…ちっ…」
フラフラと立ち上がり、
パチュリーの放つ閃光を無理矢理回避する。
「(まだまだ…私は戦える…!)」
そして魔理沙は再び箒に跨った。
魔理沙はただパチュリーだけを見ている。
「特攻でもする気!?気でも狂ったの!?」
そして魔理沙は一直線に突撃する。
目の前を覆うほどの弾幕を多少被弾しても、
彼女は速度を落とさなかった。
しかし、その後に展開された魔法陣から、
極大な閃光が魔理沙を包み込む。
パチュリーの視界から、
魔理沙の姿は完全に消えた。
「魔理沙…!?」
「…くっ…この程度でぇ!!」
閃光から魔理沙が飛び出した。
相変わらずの全速力だった。
そして黒焦げとなり役目を終えた箒から、
魔理沙はパチュリーへ飛びかかった。
「パチュリィイイイイイイイッ!!!!」
寒くなってきましたね。死にそう