無人の神社にて
「馬鹿れいむも大ちゃんも居ない…!!」
神社に着いたチルノは、
ひとり冷や汗を流しつつ、
ただ立ち尽くすだけだった。
それは、神社に誰も居ないことと、
自身の体力が限界に達している事への、
頭が真っ白になるほどの絶望感が、
彼女の頭を埋め尽くしていた証拠だった。
「こ…こんなときに…!
私は…このまま死んじゃうの……!?」
「そうかもね、可哀想で哀れな妖精さん」
「…っ!」
「もう限界だろ?案内役としては働いた。
もう楽になれよ?絶望感で顔が歪んでるぞ」
「…まだ死ねない…
大ちゃんと約束…したから…!!」
「約束…ねぇ…そんな言葉だけの繋がりなんて、
簡単に千切れてしまうものなんだぞ?」
「そんなの…絶対…違う…!」
「ふん、なら証明してみろ、無駄だがな」
メシアの放った一蹴りが、
神社の賽銭箱と神社を突き抜けるほど、
かなりの距離を吹き飛ばした。
そして速度が落ちる前に、
逆側から拳を構え待機、そしてその拳と
チルノは激突、辺りに大きな鈍い音が響く。
「…かはぁッ…!」
「うおっ、アーマーに血をかけんじゃねえよ。
汚れは嫌いなんでな…!」
その場で膝をつくチルノを更に上から踏みつけ、
その度に同じような鈍い音が響く。
「オラッオラッ…そろそろ死ねるぞ?」
「………ッ!!!!」
「ヌッ…!?」
チルノからメシアを吹き飛ばすほど、
とても有り得ないような風圧が発生した。
そして、辺りが雪景色となるほどの、
とてつもない力だった。
「ほう…まだそんな力があったか…」
「ちょっと…無理矢理だけど…
これで…多少の戦闘は出来る…から…まだ…!」
「どうせ時間稼ぎだろうが、まあ退屈よりマシか」
チルノの後方からかなり強い吹雪が吹き、
メシアを近づかせる事を拒んだ。
そしてその風に乗るように、
氷柱がメシアへと向かって来る。
しかし、ダメージは相変わらず与える事は無い。
「質より…量で…もっと…もっと!!」
更に風圧が増し、メシアを後ずさりさせた。
氷柱の量も増えていたが、
命中後の結果は変わらない。
「まだ…まだ…絶対全力…全身全霊…!
はあああああああああああああっ!!」
「ぬっううう……!」
とうとうメシアに膝を付かせるまで、
自身の全力を出し切っていた。
「…うぜえ……!」
何も出来ない状態のメシアはいらつき、
例の剣を取り出した。そして、空高く掲げた。
その剣は、周囲の雪や氷柱、そして色を、
一瞬に周囲の雪景色を元に戻す力があった。
一瞬にして色を取り込んだ黒輝剣は、
倍以上に黒く輝きを放った。
そして同時に力を無くしたチルノは、
再び膝をついた。
彼女はまだ状況を把握出来ていなかった。
「なっ…何が起こった…の…!?」
「やっぱこの剣は頼りたくねーな…まあ…」
その動けないチルノの下へ、
少しずつメシアは歩み寄っていく。
そして、抵抗をされることもなく、
チルノの下へ辿りついた。
そして、首元を掴み、片手で持ち上げる。
メシアはチルノの苦しむ顔を見て、
不気味な笑みを浮かべた。
「いい顔だ…まったくいい顔…ふふ」
「ぐっ…う…ぁ…!」
「もがいた所で状況が変わるとでも?
案内役としては上出来だったよ…
そろそろ…休暇を取って…いいんだよ?」
そして、片手の剣を掲げ、
心臓を突き刺そうとした瞬間の事だった。
その黒輝剣は、右方向にいた人物による攻撃で、
メシアの手元から大きく弾き飛ばした。
しかし、依然としてメシアにはダメージはない。
「ん…?誰だ…?」
「…」
「ほう…もっと面白そうな奴が来たな…!」
「おまえ…やり過ぎだぜ…!」
「ふん、そう思って邪魔をしたなら、
貴様が私に殺される覚悟があるという事だな?」
「私がその前に…お前を倒す…!」
「ま…りさ……!」
「待ってろ…チルノ!!」