全てを無くす者と氷妖精:1
「ほう、あんな餓鬼が殺傷対象なんてな」
彼女が見つめる先にはチルノと大妖精が居た。
たまたま近くの湖で遊んでいた。
しかし、彼女の殺気が強過ぎたのか、
すぐに気配を感じ取られた。
「チルノちゃん…!」
「なにか…居る…!」
「(凄いじゃないか。殺気を出してるとはいえ、
並の人間共では感じ取れないのだがな)」
「誰!姿を見せなさい!」
「まさかあたいにビビってるのかしら!?」
「ちっ…チルノちゃん!」」
「ほう、この私を煽ったか。
かなりの勇気だな。それとも単純な馬鹿か?」
「…!!大ちゃん…下がって…!」
「フフフ…遅いなぁ!」
「ちっ…アイシクルソード、はぁっ!」
「ただの氷の剣など地上のミミズと一緒だ!」
メシアは例の剣は取り出さず、
素手でチルノの剣を弾き、
武術で相手を捻じ倒した。
「フフッ、弱いな」
「勝利を掴んだ気なんて、ずいぶん余裕ね!」
「…?」
チルノとメシアを囲んだ、
氷の檻が生成され、2人を閉じ込めた。
「お前は馬鹿か?それでは自分も動けないぞ?」
「あたいにあたいの攻撃なんて効かないわ!」
突如と氷の檻の真上に、巨大な氷柱が生成。
それは氷の檻ごと2人を押しつぶした。
「チルノちゃん!」
「大ちゃん!あたいは平気だよ!」
「もちろん私もだ」
「なっ…!!」
空へと飛び上がり脱出したチルノの脚を掴み、
メシアは地面へと投げ、叩きつけた。
「体重何キロ?軽いねぇ…
このアーマー50kgもあるんだぜ?全く」
そして飛べない彼女は垂直にチルノへと落下。
両足で相手を踏みつけた。
その衝撃は大地に大きな亀裂を作った。
「痛いか?」
「…」
「…。
精密な人形なことだ。本物だと思ってたよ。
あいつはどこ行った…?」
「ここまで…来れば…大丈夫…かな…」
「うん…かなり離れたもんね…ハァ…」
「……やっぱ…駄目みたい…」
かなり大きな足音がこちらへ向かって来た。
案の定、それは先程のメシアであった。
「たかが800m前後移動して、
逃げ切ったと思うのはおかしいぞ?」
「くっ…」
「どうしようチルノちゃん…」
「2人でかかってこないのか?
どちらも結末は同じだけどな」
「…。
大ちゃん…。巫女を呼んで来て」
「…ひとりで戦うの…?」
「正直2人でもどうしようもないよ!
だからここはあたいが頑張るから!」
「…」
「人を呼んできてくれるのは楽でいいな。
ほら、早く行けよ」
「…チルノちゃん…」
「…大丈夫!なんてったってあたいは
『サイキョー』だもん!心配はいらないよ!」
「…。
頑張って…チルノちゃん…!」
全速力で真後ろの方向にある神社へと、
大妖精は向かった。
チルノもメシアは睨み合っている。
「もっと楽しませてくれるかな?」
「楽しむ余裕なんて与えないね!
あんたはあたいに倒されるだけよ!」
チルノはメシアへ無数の氷柱を飛ばした。
しかし、それらは当たる寸前で無へと消えた。
「圧倒的な力量差も悪くはない…が、
やはりドンパチ同じ実力でやりあった方が、
明らかに楽しいな…!」