ジーグの居た世界で:2
「…駄目か。他はどうすればいい?」
「…高火力で消し去るまで…だぜ!」
「あっ…ちょっ止め…!」
「私も魔理沙に賛成ね。
ここは私と魔理沙に任せてみて?」
「…予測はした。最悪中の赤い人影が出てくるぞ」
「大丈夫よ。たぶん」
「…」
魔理沙とパチュリーは構え、光を集めた。
そして、2人は同時に球体へ眩い閃光を放った。
黒い球体は閃光に包まれた。
「…やったか?」
「駄目ね。全く効果がない…」
煙は引いた。しかし、
互いに消し去った感覚は無かったと言っていた通り
黒い球体は見事に変化がなかった。
その時、にとりは全員に放った。
「熱源体反応、何か…来る!」
「…ッ!全員、戦闘に備えて!」
「分かってる!」
赤い人影が近付いて来る。
そして、黒い球体から姿を現した。
その人物は、全身を赤と黒の装甲で包まれており、
顔や皮膚の色は確認出来なかった。
ただヘルメットから紅い髪が地面へ付くほど、
とても長かったが、
空中だったので問題はなさそうだった。
「…」
「…全てを無くす者…0(ゼロ)…!
なんで…そこに!?
封印でもされていたとでも言うの!?」
「そんなことはいい、問題は奴が敵なのか、だ。
何故か雰囲気が私と似ている」
「…。確かに、立ち方もなんか癖があるし…」
「えっ本当?そんな変な立ち方か?…って、
そんなことどうでもいい。接近する」
「待って、私が行く。あなたが行く必要がないわ」
「いいえ霊夢、私が行く。何かあれば私は、
自己修復がある。不意打ち程度なら問題ない」
「…」
二つの存在が向き合う。
その赤い人物の周りは妙に空気が凍っている。
「単刀直入に言う、質問する。君は誰だ」
「…あの国は面白かったんだがな…」
「あの国…か。
お前があの国の生物を一人残らず殺したのか?」
「殺してはない。あいつのエサにしたのさ」
「…あいつ…?」
「まあ別の案件で、灰を降らして殺すだけの
そんなつまらん仕事もやったが…
あれはあの世界を囲む結界の損傷と同時に
やらなければ駄目だとか、偽装工作だとか。
何気に面倒な仕事だったが」
「…『灰』を『降』らして…殺す…?」
「あいつは人とその憎悪しか食わん。
中でもあいつは色を嫌う。目障りらしい。
が、赤と黒だけは何故か許せるんだと。
だから私はこのざまだ。皮膚も出せない。
もう何億年と前かららしい。あいつが言ってたな」
「私はペットの話をしろなんて言ってない。
もう一度聞く、貴様は誰だ」
「『救世主』だ。二つ名は『一号』
私は彼にとっての2億1番目らしいが。
まあ出す皮膚も全て火に焼かれ消えた。
この格好の方がマシなくらいにな」
「メシア…?ファースト?不思議な奴だ…
で、貴様は敵か?」
「それは君たちによるね。まあ、基本は、
君たちにとって私は敵だろうな」
「敵なら叩き斬るまでだ。
それと、ここにはあんたの探す憎悪を持つ
人物は…居ないと思うが」
「居ないなら、作ればいい」
「…!」
颯花は、時を止め、
刺剣でメシアの首を斬り払った。
が、静止状態の時間でも、メシアは動いた。
そして、軽く刺剣を防いだ。
「…何故動ける…何故…!?」
「さあな、能力を無効化…いや、
自らへの攻撃を無効化出来るという事だ」
「そんな能力が…存在していいのか…!?」
「私が生きるからこそ、人の感情は成立している。
この私が憎悪という存在自体だからだ…!」
「どういう…ことだ…!?」
「話疲れた。死ね、お前の顔は見飽きた」
「見飽…きた…!?」
メシアは颯花へ手の平を向けた。
その時、颯花の腹部に手形の穴が空いた。
そして静止時間は終了、
そのまま颯花は落ちていった。
「心臓を狙った筈なんだがな…まあいい」
「…(私で良かった…自己修復がなければ…
即死だったな…だが…相当の威力だ…!)」
「颯花っ!くそっ…!」
「やはりまだあの国の方が楽しめたぞ…!
おい、こいつらを吸い込め。
こんな程度の奴ら、あんたは余裕で吸い込める」
「…」
辺りの空気の流れが変わった。
「まずい、みんな高度を下げて…吸い込まれ…!」
その瞬間、周囲の数人は突然と消えた。
霊夢は戸惑っていた。
「あれはバレてると吸い込めない。
逆に何も分からず吸い込まれてエサになる、
そういう訳さ。気付いただけ褒めてやるよ」
「そんな…あっけなさ過ぎる…なによこれ…!!」
「そうだ、もっと憎め、それが私の原動力だ…!」
「霊夢ッ!そいつから離れろッ!
援護はする!まともに正面から戦うなッ!」